大人オリジナル小説

お願い ( No.2 )
日時: 2025/03/08 14:45
名前: 管理人

「お願いします!!」
ゆうきは、先生に必死でお願いをしていた。

「そうは言われてもなあ・・・」


「休日の1時間だけでいいんです!練習がしたいんです!」
どうやら、水泳の授業が足りないと嘆いているらしい。

「分かった。今度の日曜日には準備しておくから、その代わり、絶対に今年は優勝しろよ」

「はい!ありがとうございます!」
私は、ゆうきの嬉しそうに笑う姿をこっそりと見ていた。

職員室で、一体何をお願いしてるんだろう?気になる・・・。

トントントン・・・。
あ、やばい・・・!

ガラガラ・・・。

「・・・今、盗み聞きしてただろ」

「別に、してないけど・・・?それより、なによ、あの泳ぎ方!あんなんで大会に出るつもり?」

「み、見てたのかよ!・・・あれは、久々に泳いだから失敗しただけだよ!1mも泳げないさくらには言われたくないね!」

「なによ、その言い方!女子に向かってひどい!」

「だって、本当のことだろ?」

「・・・もういい!」
私は、その場に居るのが嫌になり、そのまま教室に戻っていった。

(はあ・・・俺は大変な妹をもってしまった・・・)

妹のくせに、年齢は同じだし、喧嘩にはなるし・・・。
でも一応、俺の方が1か月年上なんだから、年下は年上の言うことを聞いて欲しいよ、ほんと!

すると、職員室から主任の先生が出てきた。

「なんだ?職員室に用でもあるのか?」

「いえ、もう終わりました・・・」

「だったら、早く教室へ帰れ!そこがお前のおうちだろうが!」

「はい・・・」
変な事を言う主任だなと思いながらも、ゆうきは教室へと戻っていった。


教室で授業を受けている間、ゆうきはぼーっとしていた。

職員室で、先生が言ったことは本当なのだろうか。
でも、本当だとしたら、明日は楽しみだ。

「・・・ちなみにだが、明日の午前中にゆうきがコーチをしてくれるらしい」

「え・・・何言ってるんすか先生!コーチだなんて・・・!」

「プール借りるんだろ?」

「はい、俺がコーチやります・・・」

「よし、ということだから、水泳が上手くなりたい子はぜひ、プール場に行くように!」

はあ、勝手なこと言いやがって。俺は、一人でゆっくりと練習がしたかったのに・・・。

俺は、ちらっと、さくらの方を向く。

さくらも・・・来るのかな・・・?
来てほしくねえなあ。せっかくの休日だし、喧嘩したくないからなあ・・・。

私は、ゆうきの視線に気づいた。
しかし、ゆうきはすぐに前を向いた。

私は、何か隠していると察しながらも、私も前を向いた。
やはり、兄弟だからこそ、大体は相手の事が分かる。

(はあ・・・私は大変な兄をもってしまった・・・)

どうせなら、もっと優しい兄はよかった。

兄は、確かに顔はめちゃくちゃいいけれど、性格は、その真逆。しかも、一カ月しか変わんないのに、自分の方が上って感じで言ってくるし、普通、年下には優しくするべきなのよ。

前に居た男子2人がこそこそと話す。
「なんかさ、ゆうきとさくらって、仲いいよな」

「何言ってんだよ、兄弟なんだから、そりゃそうだろ」

「だよな・・・にしても、あんな可愛い妹が・・・ゆうき、羨ましいぜ」

その時、先生が喋っていることに気づく。
「ほら、そこ!こそこそしない!」

「ごめんなさーい・・・」
二人は同時に謝まる。

「では、これで6時間目の授業は終わりにする。明日、プール場に行く人は、水着を持って帰るのを忘れないように。校舎は開いてないからな」
先生は、そう忠告し、授業を終わりにした。

その日の帰り、私はゆうきにバレないよう、こっそりと水着を持って帰った。
バレてしまった瞬間、絶対に嫌な顔をされるだろう。

通学路の道中・・・。
「でも、別にゆうきと一緒に泳ぎたいからとかじゃなくって・・・練習して上手くなりたいってことだから!別に、好きとかそういうんじゃないから!!」

「誰と話してんの?」
ゆうきが、後ろから声を掛けてきた。
つい、声が出てしまっていたのだ。めちゃくちゃ恥ずかしい・・・。

「え、えっと・・・空・・・」

「は?・・・そういえばだけどさ、明日の水泳・・・」

「行かないから!」

「えっ?明日の水泳に行くから、親のことは任せたって言おうとしただけなんだが」

「あ、そうだったんだ!分かった!こっちは任せてよ・・・」

じー・・・。

「・・・ね」

「お前、なんか隠してるだろ」

「べ、別に!?」

「・・・鞄の中みせろ」

「やだよ!」

「別にいいだろ、兄弟なんだからよ!」

「やだって!別に何も無いよ!」

「今日のお前は特に怪しいんだよ!」

「・・・もう!大嫌い!」
私は、そのまま家へ向かって走り出した。なるべく、ゆうきに追いつかれないよう、頑張って・・・。

「待て!まだ話は・・・!」

しかし、その呼びかけに応答する様子はない。
2人の男子が、ゆうきに肩を並べる。

「・・・ドンマイ」

(なんで、こうなるんだよおおおおおおおおおお!!)