[> 01 "親友"
「 この間のテスト返すぞー 」
担任の悪魔の声が響く。
それに応えるように、教室からの喚き声。
「 おら、静かにしろおめーら! 安達ー! 」
でもあたしは喚かない。
今回のテストには…ちょっと自信がある。
「 …桑原ー」
「 うぃー 」
「 古谷ー 」
「 はーい 」
「 齊藤ー 」
「 はい! 」
一人、馬鹿みたいに大きい返事をする。
受け取ったテストは…
87点。
「 えっ、嘘! 莉菜馬路? 何その点数! ありえねー 」
前の席の優理が、でっかい声で言った。
「 しぃー! 優理、声でかいよぉー 」
「 ねぇちょっと 汐梨! 見てよこれ 」
「 優理ってば! 」
「 え、馬路? 莉菜カンニングじゃん? 」
「 違いますから 」
「 あたしなんて46点だよー、へへっ 」
「 なんでいきなり頭良くなったの?! 」
「 頑張ったもーん 」
ちょっとこんな会話が嬉しかったりする。
尊敬されるって、気分がいい。
その後、先生がテストの解説をし出した。
あたしはその説明をしっかりメモった。
「 齊藤! 」
隣から、囁くような声が聞こえた。
見れば、隣の席の翔太があたしに軽く睨みをきかせていた。
「 んでお前そんな真面目なんだよ! 」
「 あたしがどうしようと翔太には関係ないでしょー 」
「 勉強し過ぎると馬鹿になるんだぞ 」
「 うるさいよ、負け惜しみ? 」
「 うるせー! 」
そんな感じで地味に喧嘩してるから、
あたしはすっかり解説を聴き逃した。
翔太との口論が終わらないうちに、チャイムが鳴った。
「 んじゃこの時間は此処まで 」
先生がそう言い終わると同時に
クラス中がざわざわと騒がしくなった。