大人オリジナル小説
- 深海魚【いじめ、虐待】
- 日時: 2011/11/24 20:31
- 名前: 雅
「死ねばいいのに」
母親も父親も妹も祖母も叔父もクラスメイトも教師も人類全員
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- Re: 深海魚【いじめ、虐待】 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/24 21:03
- 名前: 雅
おかあさん、そう枯れた声で叫んだけれど母は鬼のような形相でこちらを一瞥して名も知らない男の車に乗り込んだ。きらきらと陽のひかりに輝く銀色の大きくて綺麗なそれはいつも母を連れて行ってしまう。殴られても蹴られても何されたって母が一番大事で母はわたしの世界で唯一無二の存在だった。
そして帰ってくるなり部屋でぽつんと座っているわたしを見て暴言を吐き掛けて飽きたら眠りに付く。わたしにはベッドなんて代物は与えられていなくて、凍える冬でも部屋の冷たいフローリングの床で母の目に入って不機嫌にさせないようにと縮こまって寝た。もし運悪く部屋の真ん中で寝ていたりなんかしたら、腹を蹴られて起こされて、ベランダに突き出されて放って置かれる。どんなに寒くてもずっと。でもそれよりわたしは母に嫌われることの方が怖かった。
今思うとそんな悪い環境の中で何故わたしがこの年になるまで生きていられたのかは疑問だ。むしろ死んだ方が良かったのではないかとすら思う。
妹は今年で13なる。わたしと違い愛する人と結ばれて産まれた綾は母から大層可愛がられた。暖かいベッドで眠り、きちんとした洋服を着て、寝る前には絵本なんて読んでもらっていた。わたしはそれがどんなに羨ましかったかわからない。
そしてどうなろうとわたしは愛されないのかと悟った時、初めて憎悪が生まれた。ただただ憎かった。何故わたしはこんな仕打ちをされているの?わたしは、何もしていない、なのに。父から産まれたというだけで何故こんな目に遭わなくてはいけないの?わたしって何?
「おねえちゃん。」
「何?どうかした?」
「家庭の宿題やってくれない?」
「・・・うん。」
妹に優しくしないと母は許さない。だからわたしは良いお姉ちゃんでなければいけない。妹は時折わたしを馬鹿にする。それもそうだ。姉妹の扱いの差は開いていった。
「ちょっとあんた、何してんの?」
「何って・・・・・・えと、妹の宿題・・・。」
「違うわよ!ったく・・・なんで綾をこんな時間まで起きさせてるの!ほら、早く寝なさい綾。あとはこの鈍くさいお姉ちゃんに任せとくからね。」
母は何かとわたしのすることが気に入らない。
「あんたって何なの?あたしを不幸にするためだけに産まれて来たの?あんたなんかお腹の中に居る時から大嫌いだっだのよ!あんたの父親はろくでもない男だったわ!あたしはあんたの母親じゃない!あんたを娘なんかとは認めないッ!!」
きっとこの日が最後だった。わたしが母を愛した最後の日。途切れかけた細く脆い糸が負荷を掛けられ、嫌な音を立てて、千切れた。
「・・・お母さんはわたしを娘だと認めないんなら、わたしって、何だと思う?」
高い音が鳴った。頬に強い痛みが奔る。それでももう慣れたその痛みを気にすることなく、ぷつりと途切れてしまった何かは容赦なく感情をぼやけさせて消されていく。
「お母さんはなんでわたしを産んだの?」
「お母さんなんて呼ぶな!」
「お母さんはなんでわたしが嫌いなの?わたしもう疲れちゃった、ねえ、もういいかな、ほんとのこと言っても。」
「黙れよ畜生がァ!お前なんか生きてても何の役にも立たないクズでしょう!?死ねば?今すぐ死ねば?!」
「お母さんなんて、大ッ嫌い。」
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