大人オリジナル小説

あ シリアス・ダークに移動します。
日時: 2012/10/21 13:25
名前: 朱雀
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/regist.cgi



                あ


                               あ あ


    あ


                                   あ
          あ


  あ     




                                あ



                    あ   



       あ      
 
                 あ




 
 あ       


     い


                                あ


          い



   あ              い



    あ      

       い


  
  あ      
        い

     し  

                                                 て


            る 


                                  わ

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Re: あ ( No.2 )
日時: 2012/10/13 17:23
名前: 朱雀

前兆は、あったのだ。
それに私はただ気づいていなかっただけで。いや、気づきたくなかったのだ、今思えば。


ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、
ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン、ピーィんポーン。


一定の間隔でインターフォンが鳴り響く。もう、何時間も、何日も。
聴こえないはずなのに、聴こえてくる。幻覚だと、思って、念じて、忘れようとしても。

耳先だって、アイツに見られているのではないかと心が凍るような思いで買い、すべての窓に段ボールをガムテープで張り付け、歪な形をしたアートのようにして。聴こえないはずだ、聴こえないはずなのに。

洗濯もできない。干せるところもない。何日も放置させた服は私の周りを囲むようにやまずみにされ、強い刺激臭のような異臭を放っていた。
ゴミも出せない。また掘り返されて、ベランダから投げつけられてしまう。もう、台所は生活の場としてかけ離れた風貌になり果ててしまった。


ピーィんポーン、ピーィんポーン。


止めろ、止めろ、止めろッ!

想像してしまう、玄関に立ってインターフォンから通すように私を見ているのではないか。何度も、何度もボタンを押す痩せこけた青紫色の指。
でろ、でろ、でろ。
ボタンを押すたび、呪いの言葉を吐き続けて。


ピーィんポーン、ピーィんポーン。


指が震える、固まって動かなくなってしまう。まるで自分の体ではないように。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁッッ!
息が吸えなくなる。空気の塊が喉に詰まって、ひゅうひゅうと枯れ果てた音さえ聞こえてきて。頭が金槌で執拗に何度も、殴られてしまったようにがんがんがん、内側から叩かれるような痛さが貫く。


「ぁ……ぁ…」

指で顔を覆い尽くす。そして、ふと視界に入った。


あれ、この指は……誰の指?



はっと気が付く。
これは、自分の指だと。

ふるふると小刻みに震える、しわしわの手。


ふいに、涙がこぼれそうになる。


どうして。



どうして。


ねえ、どうして。


言葉にならない衝動が、涙となって溢れていく。


「ぁ…うう…ぅうぅぅうぅうううッッ」


アイツにここにいることがばれてはいけない。
指が引きちぎれてしまくらい、噛みしめて声を押し殺す。

どうして、なんで。


誰も、助けてくれないの。



どうして、こんなことになったの。


何も、悪いことなんてしてない。
何も、何も……!!



ピーィんポーン、ピーィんポーン。



無情に無機質にその音は私を追い込む。



どうして、こうなったの。


言った言葉は、ひゅうひゅうと微かな息遣いにしかならなかった。



そうだ。


あのころから。


確かに、あの時。


前兆はあったのだ――







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