大人オリジナル小説
- 支配者のイス
- 日時: 2012/12/09 15:40
- 名前: 和綯衣 ◆69mWoIayLg
只今オリキャラ募集中>>4
*
それは、必ず存在する。
チェス盤を目前とし、駒を握り、ゲームを一人愉しむ奴が。
舞台には立たない。
されど傍観者ではない。
その空間を支配し、操る黒幕。
それが、「支配者」。
*
【挨拶】
こんにちは、和綯衣です。
舞台はとある学園、高校生の集う場所です。
人間的にゲスいのが登場人物に多いので、ご注意ください。
救いはないです。
【目次】
登場人物>>3
序章>>1-2
- Re: 支配者のイス ( No.1 )
- 日時: 2012/12/09 14:22
- 名前: 和綯衣 ◆69mWoIayLg
それは、私の親友が突然不登校になってしまったことから始まった。
序章――『疑惑と困惑』
その日も、いつもと変わらない月曜日の朝のはずだった。
異変に気付いたのは、登校して教室に入ってきた、たった今の事。
普段なら、もうとっくに登校しているはずの私の親友が、今日そこに居なかったのである。
「はよ、国枝。今日は不二咲来てないのか?」
国枝、そう呼ばれて振り返ったのは私――私の名前は、国枝 明日香と言う。
不二咲というのが、私の親友、不二咲 美佳の事。
「……うん、そうみたい」
呼ばれた声にとりあえずそう応えてみたものの、なぜ彼女がいないのか、私には見当もつかない。
いつもなら、この時間にはすでに登校してるのに。
それにもし、休みだったとしても、携帯電話にメールが入っているはず。
だけど、今日はそんなメールも無い。
(もしかして、寝坊?)
そう思って、私はとっさに美佳の携帯携帯にコールをかける。
――Puruu…
――Pururu…
そして5回目の呼び出しの後。コールの音が途切れ、思わず美佳の名前を呼びそうになったところで、留守番電話サービスに切り替わってしまった。私は思わず苦笑を浮かべ、携帯電話の画面を見つめた後に通話を切った。
「どうしたんだ?」
先程の男子が、様子を察してか私の顔を覗き込む。
私はメールだけでも送っておこうと、携帯電話の画面と向き合いながら口を開いた。
「ケータイ繋がんないの。留守電になってるし……何かあったのかな」
「はは、心配しすぎだって。そのうち来るんじゃねーの?」
彼は軽い口調でそう言って笑った。
そしてその後に、間もなく登校してきた彼の友人と軽く挨拶を交わし、早速雑談を始めていた。
(…………うーん)
そう言われて、私は腕組みをして考える。
まぁ、確かにそれもそうだ。
今日はたまたま、登校が遅れているだけで、私の考えすぎなのだと――そう考えるのが妥当の事だった。
(うーん……けど、だけど何か……)
何だろう、この違和感。
その事に、素直に納得できないのはなんでだろう。
「ねぇ、駒田。アンタさ――」
私は、気がつけばまた彼に話しかけていた。
駒田、というのは、つい先程私に声をかけてきた、彼の名前だ。
楽しそうに談笑していた彼はこちらを向いて、「何?」と一言言って私の顔をまた覗き込んできた。
「あ、ええと…」
しかし私は、言葉を詰まらせてしまった。
何を言うか考えていなかったのに、とっさに呼びとめてしまったからだ。
でも、だけど、彼に、聞かなきゃいけない事がある気がして、私は口を開き――その刹那。
「おーい、駒田ー」
彼を呼ぶ声が、それを制した。
(!)
私たちが視線を向けた先に居たのは、一人の男子。
「お前、さっき西崎先生が呼んでたって、柏木のやつが」
「ッ!? しまった、そういやあ今日、補習の日だった!」
突然現れた男子の言葉に、駒田はハッとした表情を浮かべ、飛び上がる。
補習、そういえばこの時期、早朝から何教科かが補習授業を行っているらしい。
希望者と成績不良者が参加するそうだが、補習の事を忘れるくらいだから、おそらく彼は後者の方だろう。
彼は私の方に向き直ると、頭を下げてその前で手を合わせた。
「悪い国枝、その話また後で!」
「え?ちょ、ちょっと待っ――」
「今は無理!」
彼は私の言葉をさえぎり、ピシャリとそう言い張ると、慌てた様子で教室を出ていった。
「……明日香、あいつになんか話あったのか?」
と、駒田にそう言われ、ポカンとしていた私に、たった今彼と入れ替わりでやってきた男子がそう声をかけてきた。
その声で我に返り、私はその男子を睨みつけた。
「ちょっと悠士! タイミング悪いんだけど……」
「あー、悪かったって」
詫びいれる様子の無い口調でそういう彼は、私の幼馴染の、氷室 悠士。
かれこれ小学校入学前からの付き合いで、たまたま同じ高校に入学したのだった。
何だかんだっても、悠士とは学校でもそこそこ話す仲である。
「ところで明日香、さっきアイツに何聞こうとしてたんだ?」
と、不意にその時、悠士が腕組みをしながらそう私に尋ねてきた。
私の方を見据える彼は、なぜかニヤニヤ笑っている。
私は「何ニヤニヤしてんのよ」と彼に言い、それから少し考えた。
そういえば、あの時何で呼びとめたのだろう。
何か、聞きたい事があったはずだけど……
「うーん、なんだっけなぁ」
私がそう呟くと、なんだそれと彼は呆れた様子で鼻で笑った。
それに少しイラッとしたが、あえて何も言わず、ついでだと彼にこう尋ねてみた。
「あのさ、今日美佳見なかった?」
「美佳? ……あぁ、不二咲さんの事か。いや、見てないな。どうかしたのかよ?」
「んー、見てないか。実はまだ学校来てなくてさ、いつもならいる時間なのに。心配で」
私がそう言ってため息をつくと、彼はなだめるように言う。
「心配しすぎだって、今日はたまたま遅いだけだろ」
「うーん……」
――あぁ、悠士も、そう言うのか。
私は裏切られた気がして、思わずため息をついた。
(って、あれ?)
なんで、裏切られたなんて思ったんだろ、そう考えるのがやっぱ普通なのに。
「…………、まぁ、考えててもしかたないか」
私はそう言って、妙な違和感を抱えたまま、とりあえず朝のショートホームルームまで待つことにした。
だけど、美佳はその日、姿を現さなかった。