大人オリジナル小説
- 夜霧
- 日時: 2013/11/03 23:48
- 名前: 美礼 ◆mXR.nLqpUY
夜霧。
■ 登場人物*>>001
■ プロローグ*>>002
■ 絶望色の雨*>>003
■ 凍った瞳*>>004
■ あきらめのため息*>>005
- Re: 夜霧 ( No.3 )
- 日時: 2013/11/07 12:10
- 名前: 美礼 ◆mXR.nLqpUY
【絶望色の雨】
雨が、私を濡らしていく。傘を差した通行人はちらほら傍を通り過ぎていった。
誰も私を気に留めない。留めてほしいわけじゃないけど。
なんか、もやもやする。
本降りに入るまえの雨は酷く冷たい。
全身ずぶ濡れの私はさぞかし化け物じみてる筈だ。まるで某ホラー映画の女性の長い前髪で顔を隠しているのだから。表情はもちろん、性別すら分からない。まぁ隠してるんだけど。
今何時? 灰色の雲は教えない。行き交う人々は私を避けてるし話すら難しい。被ったパーカーはずっしり重い。
いつまでもいられたら。どんなにいいことだろう。
帰るべき家はない。居場所なんて生まれ落ちてあったためしがない。お母さんなんて頭が狂って、今頃、帰らないお父さんを待ち続けてる筈。
……お父さんは、
あの人は、あの人は──お母さん。あのね……。
雨がやんだ。
私は相変わらずそこにいる。佇んだままがいけなかった。足が、もつれる。
柄の悪い破落戸が群がってきやがった。私を見てニヤニヤ笑い近づいた。……あぁ吐き気がする。
「なぁーにしてんの?」
気安く話しかける。さりげなく腰に手を回された。若者は性欲が有り余ってる。
──あぁ吐き気がする。胸がムカムカする。こいつらを殴って痛めつけて、私に近づいたことを後悔してやりたい。
あぁ、……殺していいかな?
「──さぁ」
「つれなさすぎ! ねぇ遊ぼーよ。楽しいってば」
「あっち行って。邪魔」
「おいなんだよ! 来いってば!」
無理やり連れて行かれた先は、……廃墟だった。
やっぱりか。予想してた。まぁいいや。殴ればいいだけだ。
next→002
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