大人オリジナル小説
- 暗き水の底
- 日時: 2015/03/19 15:52
- 名前: 福住
その日、私の胸の中には酷く黒いものが蠢いている気がした。
ーーー
「ない!ない…、お母さん…。私の受験番号…。」
人がごった返しになる中、私は自分の目を疑いながらそう叫んだ。
「嘘…嘘でしょ…」
母は夢でもみているかのように呟いた。
「これまで頑張ってきたのに…」
桜ノ宮高校…
私は塾や学校の先生にも受かると言われていた高校に、落ちてしまった。
まだその実感が湧いていない私の手を、母はただ握りしめ
「大丈夫、なんとかなるって」
と優しく声をかけてくれた。その言葉を私はただ夢の中の現実味のない言葉のように捉えていた。
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- 濁る水の中に ( No.1 )
- 日時: 2015/03/19 20:34
- 名前: 福住
それから私は家に帰り、父に慰められた。しかし現実はそれどころじゃなかったのだ。
高校を落ちた私にはあと二つしか手段がなかった。二次募集を受けるか私立に行くか。両親は自分の好きな方を選べと私に言った。
その言葉が、濁った水の中に居る思考のない魚のような私にグサリと突き刺さった。
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