大人オリジナル小説
- ラッキーカレー
- 日時: 2019/11/26 19:50
- 名前: 山本蒼紫
こちらはアルル・ナジャ。今日も仕事が終わってお腹はペッコペコ。
鍋には残り物のカレーが丁度一人分。という事で、晩ご飯はカレーライスだ。
「いっただっきまーすっと。おっと!らっきょを忘れてた!」
いけません、カレーライスにはらっきょが付き物ですからね。アルルさんは席を立ち……
らっきょを手に再び戻って来ると、おやおや、何やらおかしな事に気が付いた。
カレーライスのカレーだけが綺麗さっぱりなくなっているのだ。
「えっ?何で!?えっ?えっ!?」
アルルは訳が分からず大慌て。
「だっ…誰かに食べられたのかな?」
いえいえ、ここにいるのはアルルだけ。
「そっ…外から泥棒が入ってきたのかな?」
慌てて窓を見てみると……
「えっ!?」
何とカレーが逃げ出す所!咄嗟にアルルは叫んだ。
「ちょっと待って!ボクのカレー!!」
「嫌だよ!だって姉ちゃん、どうせ僕を食べるんでしょ?」
「たっ、食べないよ!食べないから待って!」
「本当に?」
「本当だよ!本当に本当だよ!」
ああ、アルル。思わず勢いで心にもない事を言ってしまった。
本当の心、さっきからずっとお腹はペッコペコ。今すぐにでも食べてしまいたいと言うのに!
そうとは知らずにカレーは
「良かったぁ。僕食べられないんだね〜!」
と、ホッとした顔でお皿に戻った。そして言ったのだ。
「改めまして、僕カレーだよ。いやあ、お姉さんがいい人で助かっちゃった!
僕はラッキーだなぁ、ラッキーカレーだね!」
「う…うん……そうだね……良かったね…うん……」
しかし、アルルのお腹はもう我慢の限界。とうとうグゥ〜と大きな音が!するとカレーが
「あっ、そっかそっか!お腹減ってるよね、お姉さん!そうだ!お礼と言っちゃなんだけど、
僕がカレーを作ってあげるよ!」
「えぇっ!?カレーがカレーを作るの……?」
混乱するアルルを他所に、カレーは残っていた材料でてきぱきとカレーを作り始める。
「ねぇ、やけに手際が良いんだね」
「うん。だって僕、カレーだもん。よーし、出来たよ!さあさあ、お姉ちゃん。一緒に食べようよ!」
「カレーが作ったカレーをカレーと一緒に食べるの……?」
ますます混乱するアルルだったが、カレーが作ったカレーはあまりにも良い匂いだったので思わずパクリ!
「何これ!」
アルルは驚いた。『今まで自分が食べて来たカレーは一体何だったんだろう?』と
思うくらいカレーが作ったカレーはとんでもなく美味しかったのだ!
アルルは一気にカレーを平らげ言った。
「頼む!明日からボクの店で働いてよ!お客さんにもこのうまいカレーを食べさせたいんだよ!」
そうそう、言い忘れていましたが、アルルはカレー屋さんなのです。
早速次の日、カレーはアルルのお店に立ち、大張り切りでカレーを作った。
しかし、お店に来たお客さん達は
「おい…何だあいつは?」
「怪しい!怪しすぎる!」
「カレーがカレーを作るだと?どうなってるんだ?一体……」
誰も彼もが怪訝な顔。まあ無理もない。
けれども美味しそうな匂いにつられてついついカレーを一口食べれば
「美味しい!」
「こんなカレー食べた事ない!」
「おかわり下さい!山盛り下さい!」
たちまち溢れるこの笑顔、こうしてカレーが作るカレーはたちまち評判となり、
それからカレーはカレー屋さんの看板カレーとして毎日せっせとカレーを作っている。
あまりの人気に、とうとうアルルはお店の名前も変えてしまった。
その名も『ラッキーカレー』だ。新しい看板を見たカレーは
「わあ〜!僕がいる〜!!」
と、照れくさそうに笑ったとさ。
END
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