大人オリジナル小説
- 宝の地図を読み解け 〜拡大図と縮図〜
- 日時: 2020/03/01 01:42
- 名前: 山本蒼紫
6年前のある夜・・・
怪しげな三人の男女が、林の中の木の根元を掘って革の袋を埋めていた。そして、女の中の一人がニヤリと笑うと、持っていた地図に×印と木のマークを書き入れた。
〜算数課〜
雷「これが宝の地図か」
電と雷が刑事課のマミが持ってきた地図を手にしている。
電「数字の臭いがしますね。マミさん、この印は?」
マミ「宝石の隠し場所よ。6年前、大量に宝石を盗んだ犯人が隠した場所よ。6年間ず〜っと追い続けたんだけど、さっぱり足取りがつかめないわ」
電「6年・・・という事はもうすぐ時効を迎えてしまうという訳ですね」
マミ「時効を迎えたら犯人は宝石を掘り出してそれを売り飛ばすでしょう。だからそれはさせないとその地図を手に入れたの」
雷「じゃあ、その宝石が埋められた場所で犯人が来るのを待ち伏せるわ!」
マミ「ところが、その印の付いた場所が分からないの。(現在の地図を見せる)これが現在のこの町の地図よ。開発が進んですっかり様子が変わってしまったわ。昔のままなのは、その神社ぐらいなものよ」
雷「なるほど・・・」
マミ「しかも、古い地図には縮尺が書かれてないの」
雷「縮尺?」
電「この数字の事なのです」
雷「5000分の1・・・」
電「この地図では、1cmの長さが50mを表す事になっているのです。縮尺が分かれば、実際の長さも分かるのです」
雷「じゃあ、縮尺が分からないって事は・・・」
マミ「この神社からこの印まで実際の距離のどれ位だか分からないのよ。電さん。あなたの力で解決できないかしら?」
電「う〜ん・・・(考え込む)」
雷「でも、2つの地図は全然間違っているのよ」
電「諦めない諦めない。よく見比べてみるのです」
まずは、二つの地図をよく見比べてみる事にした。
雷「あっ、どっちの地図にも正方形の果樹園があるわよ。しかも同じくらいの大きさだわ」
マミ「大きさが同じって事は、2つの地図の縮尺も同じって事ね」
電「待って下さい、マミさん。何年も経ってるのです。果樹園の大きさは変わってる可能性もあるのです」
マミ「確かに・・・そうね」
電「まずはこの果樹園に行って確かめてみるのです」
〜果樹園〜
耕田「何年か前に畑を小さくしてな。昔はこ〜んなに大きかったんだけど」
雷「電ちゃんの言った通りね」
電「どれ位大きかったのですか?」
耕田「うん」
移動中
耕田「あの辺りまで。そうだなぁ、今の4倍はあったかなぁ」
電「4倍ですか・・・」
そこで雷が地図の畑の一辺を4倍にした図を書く。
雷「4倍という事は・・・1、2、3、4・・・よいしょ。1、2、3、4・・・昔はこれだけ大きかったという事ね」
電「この畑と、この畑が同じ大きさだという事は・・・新しい地図は古い地図を4倍に拡大したものなのです!」
マミ「だとすると、どうすればいいの?」
電「神社からこの印までの長さを4倍すればいいのです。雷ちゃん、この印は神社から東に何cmなのです?」
雷「えっと・・・6cmね」
電「北には?」
雷「4cmよ」
電「それを新しい地図で4倍にすると?」
雷「東に、6×4で24cmね。北に、4×4で16cmね(青いペンで書く)」
マミ「ここに埋まってるのね!」
電「そのはずなのです」
雷「よしっ(駆け出す)」
ところが、宝石が埋められている筈の場所に来てみると・・・
そこには大きなマンションが建っていた。去年建てられたそうだ。
マミ「そんな・・・」
雷「このマンションは、去年建てられたそうだわ」
マミ「はぁ・・・犯人はもうきっと、宝石を別の場所に移し変えたんでしょうね。何年もず〜っと探し続けたのにね」
雷「でも、おかしいよね。近所の人が言うには、この辺りはずっと田んぼだったらしいのよ。(メモを取り出す)この印・・・どう見ても木だよね。でも、この辺りに木なんか生えてなかったって・・・」
電「う〜ん・・・」
〜電の回想〜
耕田「今の4倍はあったかなぁ」
〜終了〜
電「なるほど、4倍ですか!」
雷「電ちゃん?」
電「・・・(駆け出す)」
雷「あっ、マミさん!」
〜果樹園〜
電「ご主人さん、昔果樹園はこれ位の大きさだったんじゃないのですか?」
耕田「ああ、そうだそうだ」
電「やっぱり」
雷「どういう事なの?」
電「4倍と言うのは長さじゃなくて広さだったのです!」
マミ「広さが4倍という事は、長さは・・・」
電「さっき辺の長さを4倍にした時、果樹園の広さは元の広さのいくつ分になったのです?」
雷「4×4で・・・全部で16個分よ!」
電「そうなのです!では、辺の長さを3倍にすると?」
雷「3×3で・・・9個分よ!」
電「2倍ですと?」
雷「4個分よ!」
電「そうなのです!広さが4倍になる時、長さは2倍になるのです。新しい地図は古い地図を2倍に拡大したものなのです」
雷「という事は、東に6×2で・・・12cmね。北に、4×2で・・・8cmね。ここよ!」
マミ「(ほくそ笑む)ここに宝石が埋められてるのね?」
電「マミさん、犯人は何時ごろ宝石を掘り返しに来るのですかね?」
マミ「この辺りは近々マンションが建てられる様になっているわ。工事が始まる前に掘り出しに来るんでしょうね」
マミはほくそ笑み、3人は顔を見合わせた。
深夜・・・
ドロンボーが木の下から埋めてあった宝石を掘り出した。
トンズラー「ヘッヘヘ・・・」
ボヤッキー「ハハッ・・・待ち続けた甲斐がありましたね、ドロンジョ様!」
ドロンジョ「こいつを売り飛ばせば一生遊んで暮らせるわ」
ドロンボー達「あっはっはっはっは・・・!!」
その時・・・ライトがドロンボーを照らし出した。
マミ「は〜い、そこまでよ!大人しくしてればねぇ。あと少しで時効だったのに」
ドロンジョ「何でここに?」
トンズラー・ボヤッキー「ぎゃあああああああ!!(逃げ出す)」
トンズラー「うわっ、あぁっ!(雷に取り押さえられる)」
電「ふっ!えい!(ボヤッキーを取り押さえる)」
ボヤッキー「あぐっ・・・(取り押さえられる)」
ドロンジョ「うぅっ・・・あっ・・・あぁ・・・(マミに取り押さえられる)」
マミ「電さん!お陰でやっと捕まえられたわ。ありがとう!」
電「いえいえ、マミさんの粘り強さと算数の力なのです!」
電達、ドロンボーを連行。
雷「悪い事したら捕まるわ。はい」
END
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