大人オリジナル小説

その笑みを見届けたくて(3話)
日時: 2023/01/26 19:57
名前: 結花

1話、2話はダーク・ファンタジーの方に置いてあります。
今回の話は大人向け要素(グロ)は無いんですが、今のうちからここで書いておこうと思ってます。拙い文が多々あるかもですが、それでも良い方はお進み下さい。

登場人物の紹介は1話に軽くあるので、ここでは書きませんm(_ _)m


































エミ「嘘…。清掃時間が、一時間半…?」

アミリ「そうね。じゃあ予定より大分早く終わった事になるんじゃないかしら」

あれから私達は、この屋敷の部屋全てを掃除していた。
ぶっちゃけ素人であるアミリ様が足手纏いになって相当な時間がかかるだろうと思っていたのに。
まさかの一時間半という…予定より半分も早い時間で終わるなんて。

エミ(…。)

でもそれもこれも、この人が手際良く動いてくれたおかげか。
必要なものは指示する前に持って来てくれたし、本当に世間知らずなお嬢様か?と思うくらいテキパキ働いていたのだから。


エミ「驚きました。掃除がお得意なんですね!」

アミリ「ふふ、もっと褒めてくれても良いのよ」

エミ「アミリ様はつけあがるのもお上手ですね!」

アミリ「貴女は掃除より主に対する言葉遣いというものを学んだ方が良いわ」




…うん。
アミリ様がどういう人なのかはまだよく判らないけど、この一時間半ずっと嫌な顔せず真剣に掃除を頑張ってくれていた。
何を考えてるか読みにくい性格してるから勿論若干の警戒心は拭えない…とは言えど、別に悪い人じゃないのかも。
印象だけで決めつけて、勝手に苦手意識を持つのは良くないか。

直感的にそう考えを改めて、不意に時計へと視線を移す。
そして…。

エミ「…あれ、もう16時ですか。日が落ちるのは早いですね」

思ったより時間の進んでいるそれを前に、私はそう口を開いていた。

アミリ「ええ、一日の終わりは本当に束の間だわ。
…ねえ、エミ。これで掃除は一通り終わった事になるの?」

エミ「はい!もうする事は無いです」

アミリ「そう、ならこれから暇になるわね。
私は温泉にでも入ってくるから貴女は休んでいなさい。あ、くれぐれも覗き見はしないように」

エミ「しませんよ(汗)」



そうして浴場へと向かったアミリ様を見届け、私は一人図書室へと向かう。



エミ「………。」


一退屈だな。
再び静かになったその空間で、私は暇を持て余していた。
先程飲みかけにしていた紅茶を再び口にしながら、一人ボーッとする。
でも…何だか少しだけ変な感じがする様な…。
違和感と呼ぶ程のものでは無いけど、何か胸に引っ掛かる感じがする。

エミ(……んー。けどまあ、分かんないことは大して重要じゃないか。)

そう思って忘れようとした次の瞬間だった。






???「エミおねーちゃん!!!」


図書室の扉が盛大に開かれ、幼い子供の声が響く。
その正体は…。


エミ「!…ああ、何だ。シャーロットちゃんか。
どうしたの?お姉ちゃんは今お風呂だよ」

先程挨拶を済ませた、アミリ様の妹であった。
しかし私がそう言うと…何と彼女は笑いながら信じられない事を口にする。












シャーロット「何言ってんの、アイツに用なんかある訳ないじゃん笑
あんな気色悪い陰キャ」

エミ「ア、アイツ…?」

シャーロット「ねーねー!それよりシャーロットと遊んでよ!今だったら暇でしょー?」

エミ「え?あ、えっと…うん。それは良いけど…何して遊ぶ?」




一あからさまに嫌っている様な暴言。

もしかしたら反抗期…ってやつなのかな。
奥様が言ってたけど、シャーロットちゃんはまだ9歳の子供みたいだし。
それに同じ家に住む姉妹である以上、いがみ合うことは何処の家庭でもあるのかもしれない。
流石にアイツ呼ばわりはどうかと思うが…まあ部外者の自分が口を挟む事でもないか。









シャーロット「ありがとう!楽しかったー!
あんなゴミよりエミおねーちゃんが、シャーロットのお姉ちゃんなら良かったのにな」

エミ「…楽しんでもらえたなら嬉しいよ。またおいで」

シャーロット「うん!」



シャーロットちゃんと軽いままごとを済ませ、私は再び一人になる。

エミ(…にしてもアミリ様、ものすごい嫌われようだったな)

自分の知る限り、彼女は決して悪い人じゃない。
確かに少し掴みにくいところはあるけど、だからといってあれ程までに嫌われる理由があるのだろうか。
…初日から判らない事だらけだ。


アミリ「あがったわよ。貴女も入って来なさい」

エミ「あ、はい」

しかしそんな事を考えているうちに、アミリ様が戻って来る。

エミ(…。)

先程の妙な直感やシャーロットちゃんの態度に疑問を抱えながら、私も一人浴場に向かうのであった。








「んー、久々に疲れたな」

身体や、下ろすと踵(かかと)にまで届く長い髪を洗ってから湯船へと浸かる。

エミ(それにしたって本当に広い大浴場だな…)

天界の寮にあった風呂と違い、浴槽が広いから此処では足を伸ばす事が出来た。
こんな快適なら寮生活より百倍は良いのではないか。
天界ももう少し天使の事を気遣ってくれたら嬉しいんだけど。

エミ(だって神様達の自宅にある浴槽は広いらしいしね。
ほんと身分差別だよこんなの)

これは帰った時に辛くなるだろうな…と苦笑いしながら、それから身体が温まるまで湯に浸かり続けたのだった。







エミ「アミリ様、出ましたよ。凄く気持ち良かったです。」

そしてあがってからは寝間着に着替え、肩にバスタオルをかけた状態で私は図書室へと顔を出す。
すると、

アミリ「そう、それなら良かったわ。
これからも入りたい時は勝手に入っちゃって良いから。」

中には本を読んでいるアミリ様の姿があった。
私が来たので栞を挟み、その本を机に置いている。

エミ「判りました。……って、あれ?もう18時ですよ。
そろそろ夕食の時間じゃないですか?」

アミリ「あら、もうそんなに経ってるの。それじゃあ外食にでも行きましょう」

エミ「良いですね!では私は旦那様達に連絡をして来ます」

アミリ「いえ、その必要は無いわ。私達だけで行くんだから」

エミ「え、二人で…ですか?」

少し驚いてしまった。
てっきり皆で行くものだと思っていたのに。

アミリ「ええ。だってこの夏休みで、料理人が休暇をとってしまったんだもの。
此処に居ても食べる物がないし、皆それぞれ好きな所に行って食事をするのよ」

エミ「そ、そうですか。承知しました」

アミリ「だから一流レストラン二名で、もう予約は済ませてあるわ。早く行きましょう」

エミ「い、一流…?!今なんt」

アミリ「急いで着替えて。
あの制服しか無いなら、私の服を貸してあげるから」

エミ「え?!」


私が状況を理解するや否や、アミリ様は半ば強引に自分の洋服を着させてきた。

白いレースのあしらわれたブラウス、プリーツのついたロングスカート。
その上、服に似合うからと髪型をハーフアップにさせられ、恥ずかしい事この上ない。

身分の関係で天界では寝間着か制服しか持っていなかったのだが、もし私服を買うにしてもこんなガーリーな物は絶対着ないだろう。
勿論こんな髪型にだってしない。
これは今天界の仲間に会ったら、確実にネタ話にされる。

エミ「アミリ様、流石にこの格好はちょっと…」

アミリ「大丈夫よ、エミは可愛いもの。自信持って」

エミ「うう…。」

しかし私の意見は通らず、結局この格好で外出する事になってしまった。












子供「見て、お母さん!彼処の髪長いお姉さん、めっちゃ可愛い!!」

女性「本当ね。隣の方はお友達かしら?どちらも美人さんだこと」



エミ(……。)


歩く度に誰かしらの視線を感じる。
馬鹿にされてる感じはしないからまだ良いけど、やっぱり恥ずかしい。


アミリ「ほら言ったじゃない、エミは可愛いって」

エミ「…恨みます」

からかう様に笑うアミリ様を前に、私は頬を膨らませながらそう言い放った。
だけど今、不思議と嫌な気はしてない。
可愛いなんて言葉普段なら絶対に言われないし、ちょっとだけまんざらでもないのかも。
…まあ一番の器量よしはこの人に違いないが。

しかし彼女は私の反抗にも笑顔を崩さず、更に子供を見るかの様な目でこんな事を言ってきた。

アミリ「ふふ、何とでも言いなさい。それより今度一緒にお洋服でも買いに行きましょう。
私センスには自信あるから、貴女に似合う物を探してあげるわ。勿論その日は是非私の着せ替え人形として宜しくね」

エミ「もう!からかわないで下さい!」

全くもって酷い話だ。私の方が種族的には高貴な存在の筈なのに。
着せ替え人形とか…もはや遊ばれてやしないだろうか。

エミ(天使としてのプライドが泣いてるよ…)


そんな事を思いつつ私達はそれからも暫く談笑(?)していたが、やがて歩いているうちに目的地へと到着する。





アミリ「此処よ。着いたわ」

エミ「…成程。いかにもThe・高級店って感じですね」

それはもう外からでもよく見えた。
自動ドアの先に続く廊下には赤いカーペットが敷いてあるし、中に施されている装飾も華やかで綺麗だ。
【豪華】で固められたその筆舌に尽くし難い程の建造物に、私は圧倒されるしか無い。

照明もれっきとしたシャンデリアとか…。
こんな所に今から入るというのか。

アミリ「さあ、行くわよ。」

エミ「は、はい」


しかし見惚れる間も無く主に手を引かれ、私はそのレストランの中へと足を踏み入れたのであった。

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Re: その笑みを見届けたくて(3話) ( No.2 )
日時: 2023/01/27 08:58
名前: 結花

段々警戒心も薄れてきてるし、少しずつだけど気持ちの変化があったみたいだよね!
私も絶対に可愛いと思う()
描かないと思うけど、いつか機会があればエミのその服もちゃんと描きたいなーって思います笑
シャーロットはまたいつか描くね!
今回も読んでくれてありがとうm(_ _)m

多分今日中に4話も出しますー

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