「篠崎さんはどのキャラが好きですか?というよりも登場人物全員愛してそうですね」
「・・・・・・はい!そうです!!なんでわかったんですか?」
「なんとなく。今まで話してて雰囲気で」
「京谷さんは?」
「実は・・・俺も、そうです」
「そうなんですか!?いいですよねーこの作家さんの書く人物像が好きで!」
「悪役もなんでだか嫌いになれなくて」
「そうそう!」
これは決して嘘はついてない。なんだろう、趣味があって嬉しいのになんだか素直に喜べない。俺が意識しすぎなんだな。むしろ俺の方がヤバいヤツだろ・・・
「あー早く続き読みたい・・・」
「あははは、早いですよ」
「でもそう思いません?」
「思います思います。あ、京谷さん、これから用事とかは?」
「急ぎの用はないですけど、どうしましたか?」
「いえ、何も聞かずに引き留めて無理につきあわせてしまって・・・」
「用事があったら問答無用で断ってますよ。ここでゆっくりして、あとはどっかで晩飯買って今日は終わりの予定です。」
「晩飯・・・何の予定ですか?」
「今日は肉じゃがを」
「作るんですか!?」
「・・・ええ・・・そんな驚かなくても・・・」
「すごいなあ・・・ってああ、奥さんが」
「ははっいませんよ奥さんなんて、彼女すらいないのに。だから勝手に料理のスキルが上がってくんです」
「へえ、俺はいくら作っても全然上がんないなーだからいっつも外です」
「篠崎さんていくつですか?」
「20ですよ、酒飲めます」
「はは、同い年とか。あ、俺も酒飲めますよ。同い年で敬語は変な感じですね。というかもともと変な敬語ですいません」
「いえいえ、そっか、同い年ですか」
「ですね・・・敬語止めません?」
「はい。あっ・・・」
「はは、さすがにさっきそこであったばっかでそれは無理だわ」
「ははは、こんなの俺初めてですよ」
「俺だって初めて。こんな偶然。今時いませんよ?財布届けてくれるなんて、助かりました」
「いえいえ、もういいですよーこの本好きな人に出会えてうれしいですし!京谷さんが財布落としてくれてラッキーでした」
「たしかに、男でこれが好きな人・・・俺も出会ったことないな、面白いのにもったいない」
「でしょう!?」
「はっは、熱いですね」
「笑わないでくださいよ〜」
「いや、おもしろいです。篠崎さんみたいなタイプの友達いないんで。いろいろ反応が面白い」
「俺どんなタイプなんですか?」
「ピュアっ子」
「んな!?俺と正反対の言葉っすよ?」
「この本好きだし」
「その理屈だと京谷さんもピュアっ子ですよ?」
「俺は財布届けないと思うし」
「そうですか?」
「そうそう」
「・・・実はですね・・・見ちゃったんです」
「・・・ん?」
すごい言いにくそうに口ごもりだす篠崎さん。言っちゃいますよ、と言ってから話し出す。
「正面歩いてくる京谷さんがちょうど道端の空き缶を、」
「それ以上言うな!」
「あの人いい人だ!って思ってたら財布を落として」
見られていたのか、それは別にいい。見られるのはいいけど、それをネタに話されるのはたまらん。別にごみ箱が近かったからってだけでいつもはみてみるふりをするんだと言ったら笑われた。
「あははは、何必死になってんですか?」
「いい人とか言われるの嫌なんだよ」
「えー?まあとにかく、俺なんかより京谷さんのほうがピュアっ子です!」
「うわーピュアとか言われんの嫌だー!」
「っあはははおもしろい」
「篠崎さん笑いすぎ!」
「健でいいですよ?えっと・・・」
「涼だよ、えっと健くん・・・うー健さん?」
「彼女みたい」
「ぶはっ!」
盛大に吹き出してしまった・・・あ、でも彼女か・・・彼氏じゃなくて・・・ああ!もう!!俺のほうがホントにヤバいだろ・・・さっきからこんなことばっか・・・ なんかほんとごめんなさい篠崎さん・・・ピュアじゃなくて・・・