がしかしその後の彼の一言で俺は背景にバラが見えた。
「おれ、ゲイなんです」
「そんな笑顔でさわやかに!?」
「もうだいぶふっきれてるので。だから男友達も少なくて、女の子なんかも元から苦手で・・・」
「あれさっき元カノって」
「好きにさせてみせるって子がいたんです。俺もなんとかしたくてお試しで。気持ち悪くなったりはしないんですけどやっぱり長続きしなくて、です」
ちょっとまて、そしてなんで突然あの流れで告白したんだ?
「どうして急に・・・」
「それはもちろん・・・」
なぜか切なげな表情を浮かべて、この間・・・え、なにもしかして、本当にそういう・・・運命を感じたとか、そういう・・・
「・・・も、もちろん?」
「はははっ冗談ですよ!身構えないでください。友達になる人に隠したくなくて、それだけです」
「ああ、そう」
「きもちわるいでしょ?親父にばれたら俺殺されるんじゃないかな」
「そんな・・・ことは」
「いいんですよ、正直に話してくれれば。さっきからずっと思ってたんでしょ?」
「気持ち悪いって?別にそうは思ってない。ただあまりにも小説に似てるから、BLにありそうだなってぐらい」
「結構正直に話してくれますね・・・BLっぽいって思ってたんですか?」
「俺の妹が好きなんだよ、腐女子なんだ」
「そうだったんですね・・・じゃ俺も正直に話します・・・正直に言ってドキドキしてました。ごめんなさい。・・・ほんと、なんで男女だといいのに、男同士だとこうも変なんですかね・・・って当たり前ですけど」
そう自嘲する健に俺は思わず言っていた。
「その人それぞれだろ?好きって気持ちに変わりはないんだから」
「涼さん・・・」
俺を見て驚いたような顔を見せて彼は笑った。
「ホントに優しい人ですね涼さんは」
「そうか?ま、友達だしな」
「友達・・・」
「そうなんだろ?さっき言ってた」
「・・・気持ち悪くないんですか?ゲイの友達って」
「うん」
そんな毛嫌いするほど苦手でもない。笑顔がすごいだけに苦笑いは嫌いだ。見ていて苦しくなる。
「ありがと・・・ございます」
「泣いてる?」
「泣いてないですよ!」
「ははっ、泣いてもいいよ、慰めるし」
「・・・いい人すぎですよ!そのうち騙されますよ?」
「大丈夫だって。あそういや、ラインやってる?」
「うわあ・・・や、やります!」
驚きとと喜びの表現、そんな顔と声で・・・
「え、なにどうした?」
「や、なんか友達っぽいなと・・・!」
「・・・おう、飯食う?」
「手作りの肉じゃがを!?」
「お・・・おう、俺ん家来てさ、狭いけど」
「行きま・・・いや、やめときます」
「?なん
はっ・・・!もしかしたら、お誘いととられる言葉だったか!?そんなつもりは全くなかった、って断られたのか、俺。
「この次にとっておきます。友達プラン」
「ぶはっ、なんだそれ。ホント健って予想の斜め上を行くな」
「予想?何を予想してたんですか?さっきもBL展開を予想してましたけど・・・?」
腹黒そうな笑顔。
「いや?狭いのが嫌・・・とか、だったのかな、とか?ま、そんなことを・・・決してそういうこと考えてたわけじゃない!」
「涼さん嘘つくの苦手ですね?」
「そんなことない」
「はは、とりあえず今日帰ったらやりましょう、ライン」
「ああ、じゃ、せっかくだし作った肉じゃがを送るよ。意味ないけど」
「あ、はい・・・!」
と思ったら今度は犬みたいに喜ぶし・・・ホント今まで会ったことないタイプの人だ。
「じゃ、また、あ明日講義ある?」
「あ、えっと2時限からです」
「俺、休みなんだ」
「じゃーまた今度ですね」
「うん、また今度」
「気を付けてーあ、今度は財布落とさないように」
「そう何度も落としてたまるかって。じゃー」
「では」
こんなかんじで俺にゲイの友達ができた。
まるで何かの小説のようで、突然に、運命的に、俺はその時、世の中こんなことが起こるもんなんだとぐらいにいしか考えていなかった。