川口先輩を待っていると丸先輩が俺を見に来た。
「あーゆーた君?」
「丸先輩・・・」
「川口見なかった?」
「・・・俺も待ってます」
「そっか。俺先帰るわー、川口に言っといてー」
「あ、はい」
丸先輩はいつもの通りに花でも咲きそうな笑顔で言った。
「ま、精々楽しめ青春だ!」
「・・・」
俺の反応も見ずに、言うだけ言って帰っていった。丸先輩は留年してる。川口先輩の一個上。川口先輩は俺の一個上。
「丸先輩来たってことは店閉めたんだ・・・」
何となく呟く。ホントに早いし・・・あの人はいったい何のつもりなんだ・・・?てかこういう時っていったいどうしたらいいんだろう。妹たちのBL本にのってなかったし。ドキドキして待つ側って・・・まあイコール受け側ってもっと涼みたいに、丸先輩みたいにかわいい系がするもんじゃないのかな
・・・やべ、俺ドキドキしてるんだ、なんだろうちょっとウケる。女の子ってこんな感じなんかな、あの人私に気があるのかしら・・・みたいな?・・・ってか男女でいきなりあんなことするってそんな図ないか。どんな奴だそれ、怖いぞビッチか・・・あれ、わぐっち先輩・・・ひょっとして怖い人だったり・・・てか俺先輩のことなんも知らないじゃん。
「・・・わぐっち先輩」
「なんだ?」
後ろから突然声を掛けられ俺は座ってた手すりから落ちそうになった。
「びびったー」
「悪い悪い」
「・・・えっと」
「とりあえず俺ん家来るか?」
お・・・お誘い!?やべ、妹たちのびーえる本しか思い出せない。何て言ったらいいんだ?
「あ・・・っとその」
「近いから、」
歩き出してしまう先輩のあとをついていくしかありませんでした。にしてもわぐっち先輩どうしてあんなになれていたのか・・・やっぱりビッチ・・・とか?
「ここ、俺一人暮らしだから」
「お・・・おじゃましまーす・・・」
「そこ座っててーコーヒーでいい?」
「あ、なんでもいいです」
「・・・ブラックでいい?」
「・・・なんすか、飲めますよ?」
「はは、俺飲めない」
「まじすかっ!?」
「・・・そんな驚かなくても、ちょっと傷ついた」
「・・・いや意外だなって」
「はは、お砂糖とミルクがないとだめ」
「そうなんだ、かわいい」
「かわいいとかいうな!」
先輩の部屋はきれいで、物が全然ない。イメージピッタリの部屋で飲むコーヒーは苦くて、でも先輩のコーヒーは甘くてまろやかなのかと思うと面白かった。
それから近くのラーメン屋行って、先輩がそこの常連さんだと知っておすすめの辛いラーメンを奢ってもらった。俺は好きだけど先輩は苦手らしい。先輩は塩味。少し遠いコンビニにわざわざ酔って酒を買って宅のみ、今ここ。
「・・・お前あのとき俺に何言おうとしてたんだ?」
「・・・本題来ましたね」
俺はまず勇気を振り絞って質問をする。
「先輩って男も」
「あーうん」
「あーって、彼女とかいないんすか?」
「女の子も好きだけど付き合えないかな」
「そーなんすか・・・」
「ゆうたんとおんなじ」
え、
「ゆうたん、丸藤が好きなんだろ?」
違う!
「・・・なんでみんなそんな」
「いつも店でのあの寸劇見てらんない・・・とか」
「今日女の子にも言われたんすよ、違いますから!丸藤先輩のこと、確かに嫌いじゃないですけどそういう好きは全くないですよ?」
「そうなのか?切なげな顔するから・・・」
「やっぱ俺そんな犬臭い?」
「はは、うんそうだな」
「ひでー・・・」
「で?言いたかったことは?」
「・・・俺好きな子がいるんです、までは先輩の読み通りです」
「で、そいつが男で・・・ノンケってことか?」
「そうです」
「・・・わかった、手でも出しちゃったのか?」
「・・・そうです」
なんで先輩分かるんだよ・・・!
「どこまで?」
「な!キスまでですよ!!」
「あー深い方か」
「・・・うぅ」
「でも嫌われたわけじゃないんだろ?だったら店とか来れないもんなお前の性格じゃ・・・」
「まあ、そうですね。からかわれただけだとしか思ってないみたいだった」
「なるほど、それもまた虚しいってやつだな」
なんか悲しくなってきた・・・
「悠太、元気出せとは言わないが、なにも関係壊れたわけじゃない、そんなに落ち込むな」
「だってわぐっち先輩・・・小っちゃい時からずっと好きでなんで今手出しちゃうかな・・・」
「・・・幼馴染って言ってたかわいい子か?」
「・・・目つけてたんですか?」
「ははは、違うよ。悠太に目つけてたから目に入っただけ、涼くんだっけ?」
「そうっす、小学からの腐れ縁ですよ・・・って」
あれ今、俺に目つけてたって言ってなかったか?
「なんだ?」
「いえ、なんでもないっす・・・先輩に相談しようと思って、うまくしゃべれなくなった感じです」
「なるほど」
先輩はそう言うとキッチンに戻って俺にアイスをくれた。バニラ味。ちなみに先輩はイチゴ味。
「丸先輩・・・とわぐっち先輩って」
「あーそれ聞いちゃう?」
「聞かない方がいいなら」
「ううん、丸藤はねいいやつなんだ。ホントに純粋で。芯がしっかりしてるやつ。俺はいい友達をやってる」
「そっすか、」
「変に勘ぐるなよ?俺のタイプはあんな抜け目ない奴じゃない」
「抜け目ないって・・・丸先輩すか?」
「あいつの本性知ったら女の子たち手出せないよ、ホントにバカで。そのくせ隙がない、弱みを見せない奴なのよ?扱いずらいと思う」
「いっつも泣いてるのに?」
「そう、いっつも泣いてるのに。俺じゃないよ、ああいうやつのそばにいるのは」
「・・・正直よくわかんないです」
「丸藤はとくにな」
「先輩は丸藤先輩のこと好きだったんですか?・・・恋愛対象というか・・・」
「ううん。きれいな奴だとは思うけど、セックスしたいとは思わない。なんだろう・・・手のかかる兄貴みたいな。それこそ腐れ縁」
俺とは違うタイプの腐れ縁・・・・・・てか先輩ちょうど直球。流石。そういう遊びとかしてるのかな・・・とか聞きたいけど聞けない・・・俺も女の子は泣かせてきてるけど・・・
「そうなんすね、」
「そう。俺悠太とかすごいタイプ」
「・・・せ、」
い・・・いきなりチューされた。よく考えたら俺逃げ場なくね?
「先輩、ちょっと、待って?」
「何?」
「わぐっち先輩ってこういうの慣れてんの?」
「・・・どうおもう?」
「・・・ん、ちょっと、」
「言ってみてよゆうたん」
「・・・慣れてると思う。遊んでんのかな、とかそんなことをいろいろ考えちゃって・・・ます」
「慣れてるよ、お金もらってやったりしてた。今はお店があるからそんなにやってないけど」
「・・・ちょっとはしてんの?」
ちゅ
「してるよ?欲求不満のとき」
先輩の綺麗な顔が、俺のほっぺたにくっつく。なんかゲスイおっさんがこの顔にキスをしてる図を想像して寒気がしてしまった。さっきの唇の感触を知ってるやつが他にもいて、べろがからまったりして・・・うわーなんでこんなに気持ち悪いんだろう
「川口先輩、キス」
「ん・・・なに、乗ってきたの?」
「いや・・・」
「嫉妬?」
「うーん・・・消毒?」
「ふははっ、ほんっとゆーたん面白いわ、いい人」
先輩の笑顔に、俺よりちょっと小さい体を寄せる。