大人二次小説(BLGL・二次15禁)

菅→大←黒 ( No.108 )
日時: 2014/08/03 20:15
名前: 鑑識

菅→大←黒です。いやはやまだ完結してないのでどんだけ長くなるかはわかりませんが、終どころも見つからないのでとりあえず投下。菅さん編というべきかそんなとこです。




















きっと今が、モテ期、というやつなのだろう。






これまでに告白されたことがないわけでもないけれども、それだって片手で足りるほどしかないわけで、今回のような件からすれば大したことではないのだろうと思う。


一般的なモテ期と呼ばれる時期を経験したことのある人でさえ、なかなかないのではないだろうかと思う現状に、俺は立たされていた。














なんたって、一日のうちに、二人に告白されてしまったのだ。
















なんて贅沢な悩みなのだろう。

二人から取り合いをされて、俺がそれを選ばなければならないだなんて。




あぁそして、なんて困った状況だろう。

ただでさえたまったものではない事情だってのに、なんということだ。













二人とも、男だなんて!













ぼんやりと星空を見上げる。きらきらと光る大きな星は三角系を作っているけれど、どれがアルタイルなんだかなんなんだか、全くもってわからない。
ただただぼんやりと、夏にしては涼しい風にさらされながら、きれいだという感想すら浮かばないまま眺めていた。

絶えないため息をそのままに、ごろりと芝生に寝転がる。


あぁ、明日も辛い練習が待ち受けているのに、眠れないじゃないか。



短い髪をかき分けるようにがしがしと頭をかいた。





まったく、なんて面倒な。
















遡ることまずは今朝。




いつもどおり朝練に来る、はずだったのだけど、なぜだか妙に早起きしてしまって、二度寝する気にもなれなかったものだからつい早く来てしまった。


いつもより少し早いだけで、開店の準備をするおっちゃんもおばちゃんもいない道というのは、存外気持ちがいいものだ。
いっそほの暗いくらいの空の下、いつもより少し遅めにペダルを踏む。


お気に入りのギターがかっこいい曲なんか口ずさみながら。







きっと日向も影山も誰もまだ到着しちゃいないだろうという考えは、至って甘いものであったらしい。

自転車置き場には既に一代だけ、ぽつり寂しく銀色が落ちていた。


あれ、でもあそこは一年生が置く場所ではなかったはずだ。むしろ、今から俺が留めに行く、つまり三年生の、





「スガぁ!?」






屈んだ視線の先にある固有番号は、俺の同級生であり大切な友人であり同じ部活に所属する、我らがお母さんセッター、菅原孝支のものであった。


なんとなんと珍しい。彼は朝が弱いから、いつもはすこしみんなより遅れてくるのに。あくびをしながらのっそりと。




体育館へと続くドアを開けると、しゃがんでシューズに履き替える真っ最中の、見慣れた灰色が見えた。


声をかけると、余程驚いたのか尻餅をつく。
振り向いたアホヅラに大袈裟な笑いをくれてやると、向こうもおかしいやらなにやらで微妙な失笑を返してくれた。



「珍しいね大地、こんなに早く。あ、それともいつもこんなに早いの?」

「お前のが珍しいだろスガ。それと、俺はいつもより一時間近く早い」



対するあいつはいつもより一時間半は早い。



ちなみにいつも日向達が来ているらしい時間帯よりは、三十分くらい早い。
すごいな俺、よくこんな早起きしたわ。


同じく履き替えたシューズの紐を結んで、キュッキュと音を鳴らして滑りを確認する。

既にボールやらネットを運び出しているスガとすれ違うようにして、ポールを持ち込んだ。
慣れた手つきで手を貸してくれるスガに、あぁなんかいいなぁこういうのなんてぼんやり思ったりして。


なんというかこの、信頼関係のような、少し小っ恥ずかしいものがなんだかとても誇らしいものに感じられた。



「なんかいいなぁ、こういうの」


「え」


「ん?なに?」


「あぁ、いや、俺も同じこと考えてたから。声に出てたのかと思って」


「マジか、なんか運命的なものを感じんな」


驚く俺に今度はあいつが悪戯っぽく笑ってくるものだから、このやろ、と脇腹をくすぐってやった。
こしょばいこしょばいと悶える姿が面白い。


腕の中からするり逃げ出したあいつをしばらく追いかけ回ると、軽い息切れと共に、壁にもたれるように座り込んだ。疲労のため息とともに漏れるのは、かすれた笑い声。


深呼吸をして息を整えると、あいつはへにゃりと力をゆるめて、笑ったまんま遠くを見つめる。
俺も同じようにため息をついて右隣を盗み見ると、同じくちょうどこちらを見ていたらしいあいつと目が合って、またからからと笑った。



「あー」


「なんだよ」



「すきだ、だいち」


「ははは、おれもおれも」




笑った声のまま、かすれた声のまま、あっさりとさっぱりと告げられた言葉に、軽口をもって返す。

笑っていたはずのあいつの声が、段々ほの暗いものになっている気がして、右隣に首をかしげた。




「好きなんだよ、大地」




向けた視線の先には、彼の淀みのない強い視線があって、射留められたように目が離せない。

視線は強制力を伴った、それはそれは強いものであるのに、噤んだ口元とひしゃげられた眉が、あぁスガだなぁと思わせるような。





あぁ違う、現実から逃げている場合ではなくて。




あいつは今、俺になんと言った?






えぇとそう、好きだと、言ったか?





それはその、つまり。







「わかってると思うけど、友情的な意味じゃないから」






「スガ、まて、スガ、」








待って、それ以上は。






それ以上言ったら、その時点で、この居心地のいい俺らの関係は、別のものになってしまうのに。











「俺は、お前の彼氏になりたい」













それでもお前は、それを口にするのか。









染めた頬。



そらされた視線。







あぁきっと、俺はこうなることをわかっていたんじゃないか、なんて。


















スガさん編、一旦終了になります。