大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: ハイキューBL ( No.131 )
日時: 2014/08/21 01:09
名前: 鑑識











いわゆる俺たちの三年間、というやつは、それはもうあっけなく終わった。
安っぽく甲高い笛の音ひとつで、これまで積み上げてきた全てがばらばらになって、その音が、俺たちは二度とここに立てないのだという合図だった。

それがあまりにも簡潔な所作であったから、全く実感なんてのはわかないものだ。
またいつもの公式戦の後のように、帰って練習がしたいと、木兎さんにトスを上げたいと、そう思った。そうできると、確信していた。





周りの人が涙を流しているのを見て、ようやくこれで終わりなのだということを思い出した。まだやり残したことが沢山あるのに、と軽い絶望を覚えた。


袖で拭った汗は、いや、汗だと思っていたものは涙だったらしい。後から聞いた話だが、滅多に見せない俺の涙を見て感極まってしまった、なんて話も聞いた。俺としては、全く自覚がなかったのだけど。




まだ日が沈んでいないくらいの時間。学校に帰ってから体育館へ寄らないことに、とてつもない違和感があった。なんせ部活が休みの日でさえ、少しくらいはと木兎さんにトスを上げていたものだから、体育館に来ない日など本当に両手に足りるくらいしかなかったのだ。ついこの間までのことなのに、やけに懐かしい。



先輩方は皆、俺に一言ずつ残してくれた。頑張ってくれとか、時々顔を出すからなとか、なんだかいちいち優しかった。

流石にもう、と思っていたのだが、俺の涙腺は自分が思っていたより随分緩くなっていたらしい。気づけば頬が濡れていた。





最後に、みんなの気遣いなのか、木兎さんと2人きりの場が設けられた。場所は部室。

ごちゃごちゃとたくさんの荷物が入っていた三年生のロッカーには、もう何も入っていない。とても、寂しく思えた。



「また、来るからな」

「いつでも、待ってます」

「あーやだやだ。終わっちまうんだなぁ」

「ちゃんと勉強もしてくださいよ」

「へーへー、頑張りますよー」

「でも、また、バレーしましょうね」

「たりめーだ。大学行っても続けてやる」

「そのときは、もしかしたら敵同士、かもしれないですけど」

「うへぇ、それは嫌だなー」

「俺のが嫌だと思いますよ。木兎さん以外にトス上げるのすら嫌ですもん」

「お前なぁ、そんなこと言ってらんねーだろぉ」

「事実を述べたまでです。ちゃんとやりますから」

「頼むぜ、赤葦」

「木兎さんも、ちゃんと大学合格してくださいね」

「嫌な話すんなよ!」


軽口を叩きながらも、本当は、全く続ける価値なんて見いだせていなかった。彼のいない、彼らのいないチームに、どうしようもなく絶望していた。勝てるわけが無いと、思ってしまった。


あぁでも、彼に託されてしまったのだ。無念を晴らすことを。バレーを続けることを。

彼らにはもう、それができないから。


卑怯だと思った。俺に全部託して行ってしまうなんて、ずるい。

行かないで、もう少しだけ一緒に。
口に出てしまったらしいその言葉に、彼は微笑むだけだった。





部室のドアを開けて、先に出るように言われた。きっと彼は、これからまた、彼らの三年間が詰まったこの場所で、自分の力不足に、不甲斐なさに涙を流すのだろう。
素直に従うことにした。






「じゃあな、赤葦」







振り向いたドアの向こう。夕焼けに照らされた彼の表情は、ぼやけて見えなかった。























終わりました。終わらせました。ぐだぐだ長々とすみません。