大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: ハイキューBL ( No.157 )
日時: 2014/09/15 20:52
名前: 鑑識

ちょっとよくわかんなくなったんですが、とりあえず投稿してみることに。適当すぎるし恥ずかしいんで後で消すかもです。

前編です。







バレーボールしかなかった。

俺の頭の中は常にそれで占められていて、食事も、睡眠も、なにもかもがそれだけのために構成されていた。
バランスのよい食事は体作りのため、適度な睡眠は体の動きをより良いものにするため。

これまで何もかもを捧げてきたバレーボールのためだけにつくられたこの身体が、心が、俺の全てだった。




いつからだったか、俺を俺たらしめるその心に、欠陥ができてしまったのは。
きっとそう、彼に出会ってしまった時から、それは始まっていたのだと思う。悩みも怒りも興奮も、バレーボールだけに向けられていたそれらの感情が、いつしか違った方向へと進み始めようとしていた。


俺はきっと、それに戸惑っていたのだ。彼に他人との関わり方を学び、それがあまりにも都合よく働いてしまったものだから。自分が良く知らなかったたくさんの感情が、一度に襲ってきたものだから。
決してそれは悪いものではないのだろう。戸惑いこそすれど、自分が受け入れられることに素直に歓喜したし、どこか爽やかな心地よさも覚えた。


なにかとあれば彼に一番に報告して、俺は何を言ってもらいたかったのか、その時はただ報告したいという気持ちでいっぱいだったように思うのだけど、今考えてみればきっと褒めてもらいたかったのだと思う。彼は素直で、臆病で、強くて、俺が持ち合わせていないものをいくつも手にしていたから、彼ならば、期待の言葉に身を染められ過ぎた俺を、まっすぐに評価してくれるような気がしていたのだ。



結論から言えば、彼は自分の想像通りに。いや、想像以上に俺の心を満たしてくれた。バレーボールだけで充分過ぎるほどにいっぱいだと思っていた俺の心は、どこか穴があったらしい。彼の言葉はいくらでも俺の心に注がれて、ようやく一杯になった。

それと同時に、なにかが心の周りに漂い始めた。ぽつりぽつりと、彼の言葉を聞く度に、笑顔を見る度に、触れる度に、数を増していく。それがどういうものなのか自分にはわからなくて、けれど増えていく度に俺は彼を見るのが辛くなった。


不思議でたまらなかった。俺は少なからず彼の努力する姿勢を買っていたし、ひとりの人間としても気に入っているつもりだったのだけど、しかし彼が見ていられないのだ。俺ははじめ、彼に嫉妬しているのではないかと考えた。己にとって最も柄にもない感情であることはわかっていたが、それ以外にしっくりとくる名称を思いつくことができなかった。

きっと、それとは別のなにかなのだろうこともわかっていたのだけど。




あぁ、誰かこの感情に、名前でもつけて解説してはくれやしないだろうか。




もどかしい気持ちのまま、俺はまた彼と出会い、そしてこの感情を悪化させていくのだ。








(名前をつけて)








ーーーーーー













俺としては、リハビリのようなもののつもりだったのだ。


人付き合いが苦手で不器用すぎる彼のために、部外者と知りつつもつい声をかけてしまっていた。
きっと、母性本能とか父性本能とかそういうものが働きすぎたのだと思う。ただ彼のあまりに素直で実直で誠実な態度に、彼のことを知れば知るほど好感を持たずにはいられなかったから、俺は結局彼にかまけてしまったのだった。


付き合っていくに連れてわかったことなのだけど、思ったとおり、やはり彼はただの不器用な人間でしかなかった。その不器用が、人並みとはかけ離れたレベルであっただけで。

そしてそれを表すかのように、俺が教えれば彼はそれを素直すぎるまでにまっすぐに実行し、成長していった。彼の優しさは、誠実さはそのままに、無愛想で高圧的な態度は徐々に緩和されていく。それを見ているのが嬉しくて、楽しかった。





はずだったのだけど。







ただ彼の手助けをしたいという純粋な気持ちは、徐々に薄汚くてどろどろした妙なものへとすり替わっていった。
それに気づいた時には俺はもう彼に踏み込みすぎていて、惹かれすぎていて、どうしようもなく離れることができなくなっていた。

俺が彼を正したとき、そして彼がより素敵な人間になったとき、その矛先が向けられるのは俺ではなく、彼のチームメイトであることに気づいてしまった。

たまらなかった。

俺は彼のためを思って協力しているのに、彼からの見返りといえば時折送られる謝罪の言葉くらいだった。見返りを求めている時点で既に笑ってしまうくらい自分が嫌いになるのだけど、それでも俺は彼に少しでも、自分を見ていて欲しかった。心の端っこにでも留めていて欲しかった。

きっと彼が満足できるくらいに欠点を克服した頃には、いわば俺が必要でなくなった時には、あっさりと俺とのつながりは減っていくのだろう。俺がいくら彼を求めても、彼は至って変わらずああいうひとなものだから、きっぱりと切り捨てるに違いないのだ。


だからこそ、自分の醜い気持ちが、純朴な彼にバレてしまうのだけは、どうしても避けたかった。正義感の強い彼はきっと、この感情を嫌うであろうことなんて簡単にわかってしまった。女々しいことに、彼に切り捨てられるまでの今この時だけでも、彼にとって少しでも誠実な人間でありたいと思ってしまったのだ。





恋だなんて呼ぶにはあまりに、あぁ、なんて醜い。はずかしい、消えてしまいたい、彼に合わせる顔もない。



それなのに。俺を貫くその漆黒に染まった瞳が、俺のために言葉を紡ぐその唇が、俺の声に傾ける耳が、手が、足が、髪が、胸が、心が、


自分の物だったらどれだけいいかなんて、お前は一体何様なんだ。








(恋なんて崇高なものではない何か)








続きますん