大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: ハイキューBL ( No.167 )
日時: 2014/09/21 12:19
名前: 鑑識

付き合ってない牛大です。書きたいところを前半で描き終えてしまったので後半ぐっちゃぐちゃです。大地さんがヘタレ。

これまでの牛大とは関係ないです。別の時間軸。







雪がちらついている。
暗い冬に蛍の光をもとに勉強する、なんて話を聞いたことがあるけれど、俺はといえば現代人なりに蛍光灯とストーブと半纏を頼りに越冬しようとしていた。この冬をすぎれば、そこに待つのは大学受験である。

寒さにかじかむ両手を擦り合わせて、息を吐きかけた。ペンを持ち直して何度かノックすると、最早見慣れた数式に目を移した。何気なくに視界に入った時計は、一時を指している。道理で寒いわけだ。半纏をしっかりかけ直した。



2問3問解いたところで、テーブルの端に置いた、最近買い換えたばかりのスマートフォンが着信を告げた。震えるそれを手にとって、画面を確認する。
こんな時間に、誰だろう。菅はもう寝ている時間であろうし、旭なんかはあまりケータイを触らないし、黒尾は受験が終わるまでスマホを封印するとか言っていたし。画面を確認する。


『夜遅くにすまない』
『起きてるか』


あぁ、若利か。この謙虚で丁寧で真面目な切り出し、俺の友人にはあいつくらいしかいない。
いつも彼は10時頃には床につくものだから、こんな時間に連絡があるのは珍しいことだった。


『起きてる。どうした?』


即既読がついたかと思えば、しかし慣れないせいか返信は遅い。基本的に彼は返事を待たせないのだけど、こればっかりは仕方が無い。


『今から会えないか』


彼は唐突に俺に衝撃を与えて、しかもそれがなんとも嬉しいお誘いだったものだから、思わず口元が緩んだ。
時折、若利と付き合うってどうなんだ、と聞かれることがあるけれど、彼は素直にこうして愛情表現をしてくれるから、全く愛されているのか不安になるとかそういうのはないのだ。本当に大きなお世話もいいところである。
頭に浮かんだミミズクヘッドに脳内で蹴りを一発入れて、画面に意識を戻した。


『バカ、お前んちから何分かかると思ってんだ』
『三十分かかった』
『かかった?』
『あぁ、途中から雪が降り始めてな、思ったよりも時間がかかってしまった』
『待て、お前今どこだ』
『大地の家の前』


待て待て待て待て、嘘だろう。

カーテンを退けて窓を開けば、冷たい空気に眉をひそめた。少し身を乗り出してみると、ジャージ姿で白い息を吐く見慣れた顔がいた。こちらに気がつくと、ひらひらと手を振って見せる。


「あんのバカ....!」


慌てて自室のドアを開ければ、意外と大きな音が鳴ったことで少し冷静さを取り戻してきた。とりあえず両親は起こさないように、身長かつ迅速に。
半纏を脱ぎながら居間に寄って、壁に掛けておいたコートを羽織る。勢いのまま靴を引っ掛けた。チェーンを外して、あぁ、もう、焦ると指が思うように動いてくれない。何とか外れたそれを目で追うこともなく、常設の鍵も回した。
ドアを押し開ける。


「大地」
「バッカお前、風邪でもひいたらどうすんだ!受験生が!」
「俺は推薦だ」
「あぁ、クソ、そうだった。とにかく入れ、ここ寒い」


家に招き入れると、彼は律儀にお邪魔しますと呟いて、それからしっかり靴を直すという育ちの良さも見せつけてから、中に入った。
こんな常識的なことをする男の非常識すぎる行動に、内心ではかなり驚いていた。確かに彼は世の中から少しどころではないくらいズレていたし、常識にも欠けるところはあったけれど、しかしまさかこんなことを。

溜め息をついて、ドアを開けた。彼を先に入らせて俺も後から続くと、所在なさげに立ち尽くす彼に「適当に座って」と声をかける。控えめに、ちょこんとベットの横に腰掛けた。


「すまない、夜遅くに」
「それはまぁ、もういいけどさ。どうしたんだよ」


問いかければ彼は、少しだけ顔を俯けて、しかしすぐに俺と目を合わせた。申し訳なさそうに八の字にひしゃげられた眉が、彼のいとしさを助長させていた。


「会いたくなったんだ」
「、っそれは、」
「大地が勉強で忙しいことも、外に雪が降っていることも、わかっていたんだが、我慢が効かなくなった。本当にすまない」
「わ、若利、わかったから。やめてくれ。照れるから」


彼はもう一度すまないと謝って、考え事をするように視線をさ迷わせる。俺はといえば彼のあまりに実直すぎる発言に、浅ましく逸る心臓を抑えるのに手一杯だった。


「勉強は、どうなんだ」
「まぁぼちぼちってとこかな。志望校にはどうにかこうにか間に合いそうだ 」
「そう、か」


彼にしては珍しく、らしくないいやに歯切れの悪い口調だった。首を傾げる。


「俺が、東京の大学へ行くのは知っているだろう」
「推薦受けたんだってな。合格もほぼ確実なんだろ」
「あぁ、その通りだ。それで、なんだが」
「ん?」


彼は一度言葉を切った。
正面で向き合うと、彼の全てを見通すような、奥の深くの底まで真っ黒なその眼光に、飲み込まれるような感覚がある。彼の強制力を伴ったこの視線が、俺は結構好きだったりするのだけど。

瞬きを一つ、口を開いた。






「一緒に、東京へ来てくれないか」








ギリ4千字オーバーで泣く泣く前後半に分けました。