大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: ハイキューBL ( No.168 )
- 日時: 2014/09/21 21:07
- 名前: 鑑識
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正直、彼とはもう縁が切れるものだと思っていた。彼はきっと東京で、バレーボールプレーヤーとして活躍するのだろうから、そこらへんの一般市民たる俺なんかとは生きる世界が違っていくのだろうと、想像していたのだ。
きっとこれまでよりも格段に連絡の頻度は減って、彼の頭はまたバレーで一杯になって、俺の教えたいろいろなことを糧にしながら、一流の道を歩む。それも悪くないと思った。
彼には少なからず執着心というか愛着というかそういうものがあって、確かにとてつもなく寂しくてしょうがないのだけど、仕方のないことだと割り切るつもりでいた。彼の道には、彼が必要とするものしか踏み込んではいけないように思えたのだ。
それでも大学を東京のものに選んでしまったのは、割り切れない自分がいたからなのだろう。条件のいい大学だった。近場にいい物件もあるようだった。学力も、必死に頑張ればなんとかなりそうだった。目指す進路に適していた。
どれも確実に俺を突き動かす判断材料ではあったが、しかし何より決定的なのはやはり彼の存在であったのだ。
彼とのつながりを求めるほど、欲を張っているつもりはなかった。ただ、俺も東京に行くのだと、いつでも会えるのだと口実と言い訳を作って、少しでも彼の心の隅に残っていたいというなんとも卑しい考えのもと、俺は動いていた。
あぁもうだから、そんな甘い誘いをされてしまえば、蜜を垂らされてしまえば、俺は飛びつくことしかできないに決まっているじゃないか。
まさかこんな、自分に都合の良すぎる条件で、彼が嘘をつくわけがないのだけどしかし信じられない気持ちで胸が締め付けられた。
「一緒に、って」
「一緒に暮らして欲しい。東京までついてきて欲しい」
「なんで、」
「なんで、か。なんでだろうな。俺にはお前が必要だから、としか言えないが」
理屈では説明し難いような、つまり本能的なものが彼の中で渦巻いているのだろう。ただ一緒にいてくれればいいのだと、彼は言う。
そうか、必要とされているのか俺は。彼とともにいる権利を、ほかの誰でもない彼から与えられたのか。
そう思えば、それだけで安上がりな俺の心は満たされた。
「こんな時期にする提案ではないのは重々承知だ。俺も、先程までずっと悩んでいたんだが」
知っている。お前は素直だから、そういうのがすぐ顔に出てるんだ。いいとこでもあるから、治そうとも思わないけれど。
本当に唐突で非常識でどこぞのリアリストにでも聞かせてみれば鼻で笑われそうな話だけれど、そんな話に心を動かされた俺は、それよりもよっぽど頭がどうかしているのかもしれない。
「いいよ」
「いい、のか?」
「あぁ。俺もついてく」
「本当にいいのか?俺が言ってるのは、今目指してるところを諦めてでも、俺のわがままのためだけに共に来て欲しい、ということだぞ」
「そんなことわかってる。てか、最初から東京の大学行くつもりだったからな」
「そうなのか」
「だから、お前は余計なこと考えてないで、俺についてこいって言ってればいいんだよ」
「....ありがとう、大地」
そう言うなり、彼は目を細めて微笑んだ。彼の中ではなかなかに珍しい表情で、しかし一番綺麗な表情なのだった。
俺はそれを見る度いつも胸が高鳴って、どうして俺は彼に抱き締められる存在にいられないのだと頭を抱えていた。
自惚れかもしれないけれど、自意識過剰かもしれないけれど、きっと彼は、俺のことを悪くは思っていないのだろう。それどころか、良い感情さえ抱いている(と思いたい)。ただ彼はその感情に自覚がなくて、だから俺がそれを教えてやれば、彼はすぐさま俺に愛の言葉を囁くのだ。もしそうなれば、それを俺は受け入れて、抱き締めあって、キスなんか交わしたりして、これからの将来について語り合って。
あぁ、それも悪くないのだけど。
「やっぱ自分で気づいて欲しいなぁ」
「何がだ?」
「同棲生活が楽しみだなって」
「あぁ、そうだな」
(心に灯るは淡い蛍雪)
「ところで大地」
「なんだ?」
「恋、というものを知っているか」
「あ、あぁ。まぁ、知ってるけど」
「俺はどうやら、恋をしているらしい」
「え」
「チームメイトからの情報と、ネットの情報を重ね合わせた結果、やはりそうなのだろうという結論に至った」
「そう、なのか。その、あー、相手、は?」
「秘密だ」
「へ?」
「養えるようになったら、告げようと思う。結婚を前提に、と」
「いつの時代だよ」
「待っていてくれ」
「待っ、お、おお」
いやそれ言っちゃってんじゃんな若様。