最初はリア充月山です。R18要素はありません。
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「山口くん、これ」
七時限目が終わり、荷物をまとめている時、クラスの女の子に手紙を渡された。白地に桜の模様がついた便箋。
一瞬、自分に?とも錯覚しそうになるが、そんなことは勿論ありえない。9割方ツッキーへの手紙だ。
ツッキーは小学生の時から背が高くて、かっこよくて、モテる。いつのまにか俺は、女子と話さないツッキーとクラスメートの通信役になっていた。
「あー、うん。渡しておくね」
軽く微笑み、手紙を受けとる。その手紙をポケットにしまうと、女の子はありがとうと言って、帰っていった。
名前は分からないけど、可愛い女の子だった。
健全な男子高校生なら、彼女の一人や二人、いてもおかしくないと思う。いや、二人は駄目だけど。
ツッキーはなんで彼女を作らないんだろう。
…多分それは、俺が原因。俺が、ツッキーと付き合ってるから。
「ツッキー!かえろ!!」
「いちいち言わなくても、いつも一緒に帰ってるデショ」
「ごめんツッキー!!」
玉砕覚悟の告白だったけど、ツッキーはokしてくれた。
もしかしたら、顔には出さなくても、ツッキーも彼女が作りたいんじゃないかなぁ。それなら、ちゃんと協力してあげないと、ね。
「ツッキー、はい、これ」
「…どうせ見ないから、」
帰り道、ツッキーは俺の持っていた手紙をちらりと見やると、そっぽを向いて口を尖らす。
「で、でも…結構この子、かわいかったよ?…それに、そろそろツッキーも彼女、とか」
「…僕と山口って付き合ってるんじゃなかったの」
「ツッキー、迷惑じゃないかなって…。…!?」
突然声のトーンが低くなるツッキーの威勢に押され、後ずさりながらもごもごと言い訳を口にすると、ひんやりとした壁の感触が背中に感じられた。やばい、後ずされない。
「僕に浮気しろって?」
「ち、ちが」
ツッキーはどんどん俺に近づいてくる。
そして、手を俺の頭の斜め前くらいに置く。少女漫画的に言うと、壁ドンである。
「僕が好きなのは山口だけだよ」
そうぼそりと呟いたかと思えば、唇の柔らかい感触と、眼鏡が鼻に触れる感覚。
「ん、…!?…こ、ここ外だからね…!?」
「だから何、山口が悪いデショ。どうせ山口のことだから、釣り合わないーとか考えたんだろうけど、」
うっ、すべて見透かされている…。
「次そんなこと言ったらどうなるかわかるよね?」
ツッキーが怪しく笑うと、俺はなんだか肩の力が抜けて、ほっとため息をつく。手紙をポケットの中にしまうころには、もう歩き始めていたツッキーの背中を追う。
「大好きだよ、ツッキー」