大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 【二次・オリ】好きを綴る。【R18】 ( No.13 )
- 日時: 2016/02/15 07:28
- 名前: Re:rate
『番の相手、一生の幸』
遥side
「検査…そろそろ七瀬君も受けておいた方が良いわよ」
全ては保険医のこの言葉から始まった。
これまで検査を一度も受けていなかった俺は、自分の第二の性別を知らない。
仲間と泳いでいられるだけで満足で、そのような事は気にしていなかったからだ。
だが深刻そうな保険医の表情と曇った声色がやけに胸に突き刺さり、事の重大さにやっと気が付いた。
α…それは将来が約束されたと言っても過言ではない、選ばれた存在。生まれた時からエリートのようなものだ。それはすごく希少で、とても誇らしい事。羨む人間だって少なくない。
β…人口の大半を占める性。何もない、至って普通の人。世間ではβ同士の男女の結婚が一般的。
そして最後に、Ω…αよりもさらに希少な性。十代の後半から平均にして三ヶ月毎に必ず発情期が訪れる。この期間に行為をすると男女関係なく妊娠が出来る事から、世間の中では差別対象にもなっている。
俺は一体、この中のどれに該当するのだろうか。
- Re: 【二次・オリ】好きを綴る。【R18】 ( No.14 )
- 日時: 2016/02/15 07:30
- 名前: Re:rate
続き
「真琴は、その…性別は何だった」
昼休みになり屋上に来た俺と真琴。昼食を摂る所だ。
もう真琴も流石に鯖に見慣れたのか、何も言わずに自分の弁当を食べている。
結局あの後病院へ行き検査を受けて帰って来た。
それでもやはり、胸のもやもやとした感覚が消える事はなかった。
検査結果は今日の夕方辺りに出るそうだが、不安だけは自分の中にいつまでも留まり続ける。
「俺?αだけど…それがどうかした?」
俺の質問に対し怪訝そうな顔を浮かべて答える真琴。俺はその場で黙り込んでしまった。
「あ!まこちゃんにはるちゃんだ!!何の話してるの?」
急に聴こえた高めの声。その主を探して振り向くと、其処には渚がいた。
多少驚いたが、重い空気がすっと軽くなった気がして少し安心してしまう。
「ちょ、渚君!!…遥先輩も真琴先輩もすみません、毎回…」
怜が困ったように渚を止めようとするが、元気の有り余る本人は満面の笑みを浮かべて真琴に擦り寄る。真琴もまた、それを笑顔で受け入れる。
「性別の話をしてたんだ…あ、渚と怜は?」
「僕達?βだよ!やっぱ普通が一番だよね!!」
「何勝手に僕のまでバラしてるんですか!?」
少し恐怖を感じてしまった。自分が悪いという事は分かっているのに、自分だけが置いていかれているようななんとも言い難い気持ちになる。
「…そういえばまこちゃん、なんか体調悪そうだけど大丈夫?」
「え…?いや、何でもない!!大丈夫だよ!」
渚の言葉を聴いて少し真琴の事も気になったが、それよりも早く学校が終わって欲しい。そんな焦りで頭が埋め尽くされる。そんな中、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あッ…はる!次移動教室だよ、急ごう!!」
不安の積もった騒がしい昼休みが終わり、俺は目前に出された真琴の手を取って屋上を後にした。
- Re: 【二次・オリ】好きを綴る。【R18】 ( No.15 )
- 日時: 2016/02/15 07:34
- 名前: Re:rate
続き
学校が終わり、部活の時間になる。
今日は休むと伝え、学校を後に病院へ向かった。
最後に見た皆はとても心配そうに此方を見ていたが、俺はそれを気に出来るような余裕は、今何処にもなかった。
病院に着き、受付を済ませて待合室へと行く。
名前が呼ばれるまでの時間は、長かったような気も短かったような気もする。
自分を診た医師は、精通が済んでいればより確実な結果が出ると言っていた。勿論自分だって高校生だ。それくらいはもう済ませている。
それでも、それをする事に関しての抵抗は、どうしても拭えなかった。
ふと、自分の名前が呼ばれる。診察室へと入り、この間と同じ少し若めの男医師が診断結果の表記された紙を渡す。
それを受け取り目を通すと、俺はその場で固まった。書かれていた内容…思わずそれに目を疑ってしまう。
『先日実施した検査の結果、該当者[七瀬 遥]は[Ω]であると判定されました。』
「なん、で…」
頭が真っ白になり、思考が出来事に着いていかない。今此処に何が書いてあるのかを把握する事でやっとだ。
「Ω性特有の発情期がある事は貴方もご存知ですね?
その発情期には、強いフェロモンが発せられます。それは番の居ないαやβを惹き付ける。そしてそのフェロモンは非常に強力で、理性で抑えが効くものではないんです」
子馴れたように説明を始める医師。
「どんなに仲の良い家族や友人でも、貴方の事を襲いにかかってきます。
ただαの相手を見つけて項を噛まれる事で番になれば、その相手以外にフェロモンが効く事はなくなります。つまり、世間体としてはβと同等になるんです」
もう聴きたくなかった。それでも、医師は口を止めずに声を発し続ける。
αはないとしてもきっとβにはなっているだろう。そんな風に甘く見ていた自分に腹が立って堪らない。
「発情期が何時訪れるか分かりませんので、すぐに抑制剤を処方しますから。その時になったらきちんと飲んで下さい。
でも、完全に匂いが消える訳ではないのでくれぐれも注意はして下さいね」
何故俺がΩなんだ。社会的にも不利。日常的に襲われるような…此方の意思や都合など無視して、勝手にフェロモン振り撒いて好き嫌い関係なしに欲情されるような身体。
「早めに番が見つかると良いですね」
絶望した。
明日から玲に、渚に、…真琴に。どんな顔を合わせろというんだ。
どうやって接すれば良い?どうやって話せば良い?
どうやって触れれば良い?
家に着いても、考える事はそれだった。
学校に行かないと、真琴は絶対に家に来る。だが皆と会うのも嫌だ。
声を殺して涙を溢す。こんなにも辛くて仕方がないのは何故なのだろう。
それでも、どんなに足掻いたって変わらないものは変わらないのだ。
真琴はαで、俺はΩ。
何時か真琴は俺なんかじゃないもっと別の誰かと結婚して、子供も出来て…
そうなった時に俺は、
その景色には絶対に居ないのだろう。
- Re: 【二次・オリ】愛の舐め合い。【R18】 ( No.16 )
- 日時: 2016/02/17 20:01
- 名前: Re:rate
続き
はっとして目を開けると、辺りはもう明るくなっていた。泣き疲れた末に眠ってしまったのだ。
考えに考えを重ねた結果、俺は学校へ行って、暫く部活を休む事にした。真琴は来ても家に入れなければ良い。
ドアや窓を全部閉め、鍵をかける。裏からも入って来ないように、押さえを置いておく。
学校の時間…もうすぐ真琴が来る時間だ。
朝食は摂らずに、家を出た。
「あ、お早うはる!珍しいね…自分から来るなんて」
何時ものように優しい笑顔を見せる真琴。ちくりと胸が痛んだ。
罪悪感と、劣等感、相手への羨望と自分への絶望。全てが混ざり、苦しくて辛い。
「別に…たまにそういう日があっても良いだろ?」
それでも、気丈に振る舞わなければ。心配をかける訳にはいかない。
どうしても真琴にだけは気付かれたくない。
友達で居続ける為にも、俺が我慢するしかないのだ。
そう思ってたのに。
- Re: 【二次・オリ】愛の舐め合い。【R18】 ( No.17 )
- 日時: 2016/02/17 20:03
- 名前: Re:rate
続き。
授業終わりの放課後。妙に足元がおぼつかない。
身体が熱く、脈動が速い。息すらも上手く出来ない。
「…んだ…これ…ッ…」
これが、あの医師の言っていた発情期か。
背筋がぞくぞくとして、息が苦しい。
訪れたのが昨日病院へ行った後だった事が、不幸中の幸いとなった。
そしてこの場所に人は誰も居ない。
俺は安心して廊下の壁に凭れ座り、薬を手に取る。
だが意識が朦朧としてとてもじゃないが飲める状態ではない。
「……るッ…はる!……はる!?」
突如自分の名を呼ぶ声が聴こえ瞼を開けると、其処には真琴が居た。
背中と足にしか何かが触れている感覚がない。俺は、真琴に抱き抱えられていた。
「…は……ッ…まこ、と…」
その相手を呼ぶ声ですらも裏返り、卑猥な声となって俺の口から出てくる。
最悪だ。昨日から何なんだ、本当に。
一番気付かれたくなかった相手に一番最初に気付かれるなんて、俺が今まで必死に考えていた事が全て台無しじゃないか。
「…ッ………」
真琴は辛そうに顔を歪め唇をギリギリと噛み血が滲んで、唇の間から少しだけみえる八重歯を赤く染めていた。
真琴がそのまま俺を抱いて走り、保健室のドアを開ける。
此処にも人は誰も居ないようだ。
「し…暫くしたら戻るからはるは薬飲んで待ってて」
焦りを隠せない様子で俺に告げる相手。
沢山迷惑をかけてしまったのに、何故か嫌そうな様子には見えない。
そのままベッドへと運ばれ、そっと下ろされる。
「ッ…で、も……」
「良いから!!俺ももうもたないッ…はるを傷付けたくないんだよ…!!」
その言葉を残し、一方的に踵を返してドアを開けて乱暴に閉める。
俺は薬を飲み、横になった。
本当に合わせる顔がなくなってしまった。
どうしよう、こんな時にどう対処すれば良いのだろう。
そんな疑問だけが頭を埋め尽くす。
それなのに、先程のようにまた意識が遠のく。
考えなくてはならない事が沢山あるのに、身体が着いてこない。
考えられないのなら、とそのまま身を任せ、枕に顔を埋めて眠りについた。
そして
次に目を覚ました時には、見慣れた天井が眼中に広がっていた。
- Re: 【二次・オリ】愛の舐め合い。【R18】 ( No.18 )
- 日時: 2016/02/17 20:06
- 名前: Re:rate
最終話。
「…気が付いた?ごめん、鍵勝手に借りて」
身体を起こすと、真琴が横に座って微笑んでいた。
家まで運んでくれたらしく、先程まで横になっていた身体には毛布がかかっていた為、体温は奪われていない。
「はる…Ωだったんだよね…昨日休んだのも、結果聞きに行くんだったんでしょ…?」
「気付いてたのか…」
察しが良く、昔から色々な所に気付く真琴。何時も周りに優しくて、人気者でもあった。
そんな真琴が、俺が隠そうとしている事に気付かない筈はなかったのだ。
全て俺の落ち度でしかなかった。俺が必死になればなる程、真琴の目には不自然に映ってしまう。
そんな簡単な事に、何故今まで気付かなかったのだろうか。
「だって…はる、少し前からすごく甘い香りが…なんというか…ぃ、厭らしい香りがずっとしてた…渚とか玲は気付いてなくても、俺はずっとそれを感じてたから…」
αはβよりもずっと、Ωのフェロモンに敏感らしい。Ω自身が感じてしまう少し前から、αはそれに気付くのだとか。
「今は…匂うか……?」
「…まだ少し残ってるけど、これくらいなら大丈夫」
そう言ってまた笑う真琴の額にはあせが浮かび、顔も赤い。どう見ても大丈夫そうには見えない。なにより爪が食い込んでいるのか、血の滲む握りしめた手がそれを物語っている。
「………痩せ我慢するな…」
俺は起き上がり、真琴の首へと手を回す。
「俺は…気付いたら何時も、真琴の事ばかり考えてた。だから、気を遣わせたくなくて…Ωだって事も気付かれたくなかった…
真琴はその内、俺なんかの全く知らない世界を見て…どんどん俺から離れていく…それが怖かった…」
真琴が目を見開いている。
その表情は、やはり苦しそうだった。
「だから…俺…発情期だからとかじゃなくて…その、本当に真琴が好きみたいなんだ…」
そう言って、接吻をしようとする。
ずっと欲しかった。
発情期なんかよりずっと前から
真琴だけが欲しかった。
「ッ…だ、駄目だよ…止まらなく、なる…」
先程よりも更に顔を赤らめて拒絶の言葉を告げる真琴。
吐息が荒く、目を逸らして困惑したような表情を浮かべている。
「俺は大丈夫だ…何をするのも、真琴となら怖くない…ちゃんと覚悟はあるから…」
薬が切れかけている。真琴もやはりそれを感じている事が分かる。
それでも俺は、目を合わせてぎこちない笑顔を浮かべる。
俺はずっとこうしたかった。
真琴をずっと繋ぎ止めておきたかった。
もう一度真琴と、笑い合いたかった。
「…有難う、はる……ッじゃあ…
……………俺と、番になってくれますか…?」
「あぁ…此方こそ…」
そう言って俺は、項を差し出した。
今なら分かる。
この世界に、たった一人の運命の人。
それは、
今目の前に居る真琴だったのだ。
真琴が好きで
離したくなくて
ずっと傍に居て欲しくて
だから
それが叶うのなら
このΩという性別だって
案外悪くもないのだろう