その言葉と表情に中也は眉間の皺を深くした。
乱歩の言葉は二つの意味に受け取れるからだ。
ポートマフィアの幹部である中原中也に興味があるのか、単純に中原中也という人間に興味があるのか…。
其処まで考えて、中也はふっと息を吐き出した。
(後者は…ないか。)
そんな中也に、乱歩は言う。
「今、君が消した選択肢が僕の言ったことの意味だよ。」
「はァ…?」
中也は益々頭を悩ませる。
何故、探偵社の乱歩がポートマフィアの幹部という事以外に中原中也という人間に興味を持っているのか………。
中也は暫く考えるが、いくら頭を悩ませ考えても疑問の答えは頭に浮かんでこない。
乱歩は、いつか中也がその疑問を自分に問いかけてくるだろうと、頭を悩ませる中也を見つめていたが、やがて溜息混じりに言った。
「君は、人に好意を持つときにそんなに頭を悩ませてその理由を探すの?」
中也が顔を上げ乱歩を見る。
二人の視線が交じり合うと同時に、乱歩は中也の腕を掴み自分へ手繰り寄せた。
「っわ…」
いきなりのことで片手に掛けていた体重の行き所が無くなり、中也は咄嗟に反対の腕で前のめりになりながら体重を支える。
「素敵帽子君…………好きだよ…………」
中也が手をついた瞬間に耳に飛び込んできたその言葉は 中也の頭を掻き乱し正常な判断を妨げるのには十分過ぎるものだった。
気付くと、中也は乱歩を押し倒し 跨がっていた。
段々と近づく顔と顔。
(あれ、俺、何して…)
そして、重なる唇。
(温かい………)
中也は、その温かさを味わう様に、何度も角度を変え唇を合わせる。
「っは…待って…苦し…っ………」
乱歩が声を出す。
中也は、声が出たその口の隙間から舌を滑り込ませ乱歩の口内へ侵入した。
部屋に水音が響く。
中也が乱歩の舌に自身の舌を絡ませると、乱歩の目から生理的な涙が流れた。
中也は唇を離し頬に流れるその涙を舌で舐めとると、顔を離し乱歩を見た。
高揚する様に真っ赤に赤面した顔。
中也は息の荒い乱歩の首筋へ顔を埋めながら服をはだけさせた。
乱歩の肌が露わになると、中也は酸素を求めて上下に激しく動く胸板へ舌を這わせる。