大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 文ストBL! 織田作×乱歩!その他cp太宰多め R18 ( No.187 )
日時: 2017/11/11 01:27
名前: ぽぺぽぺ

あの日は、とても風が強かった。

外を歩くと髪が乱れ、襟衣(シャツ)が風に乗って暴れ靡いた。

そんな風の強い日、私は組織から一つの任務を仰せつかった。

仰せつかった任務は…簡潔に言うと、殺し屋の<フリ>をすることだった。

〜〜

予定通りに家を出たので遅刻をすることなく、規定の時間にそのビルに着くことができた。

私の任務はあくまで、殺し屋のフリ、実際に社長を殺すのはその会社の秘書で、私は、社長がたまたま今日 警護を頼んでいた用心棒の目を潜り抜ける為に、偽物の殺し屋を演じる。ただそれだけだと、打ち合わせをした者から聞いていた。

自ら人に手を下すことの無い任務だったことから、矢張り……気が抜けていたのかもしれない。

私は気が付いていなかったのだ。
自分が嵌められていた事に。



私は、予定通り、雇われ用心棒が来る前に秘書によって椅子に拘束された。
鉄線を含んだより紐で、キツくキツく。

殺し屋の<フリ>だと言うのに、此処までガチガチに拘束されるのか。と、少々の違和感を感じたが、口には出さなかった。

もしかしたら、予想だにしない手練れの用心棒が来るのか、と 少し不安に感じた事を良く覚えている。




…結果、私の予想は見事に的中した。

組織からも最低限の情報しか受け取らなかったので、聞いていなかった。

まさか、まさか[銀狼]の名で通る、横浜随一の用心棒 福沢諭吉が来ようとは、…一体誰が想像していただろうか。

私は、布袋を被り 用心棒が現れるのをじっと待っていた。
職業柄、じっとしている事には慣れている。

目を瞑り、今日は子供達に何を買っていこうか と、そんな事を考えていた時だろうか。

部屋の空気が一変した。





………酷く、冷たい

直ぐに分かった。

それは、




殺気だった。




布袋を被っていたので姿こそは見えぬものの、相手からの体全身に痛いくらいに伝わる殺気で、相手の存在感は苦しいほどに認識出来た。



……此処からは少し長いので省略しようか。




「この男の引き渡しにご同行頂きたいのです。」

暫くして、秘書から放たれたその言葉は、私の心を惑わすのには十分過ぎるものだった。

用心棒の目を潜り抜ける為だけの任務だと聞いていたというのに、
警察への引き渡し?
銀狼が警察への引き渡しに同行?


話が違う。

嵌められた事に気付いたのはその時だった。

そういえば、打ち合わせに持ってくからと、組織の構成員に指紋を採取された。

あれを証拠として警察の前に出されたら言い逃れようがない。

あぁ、どうしようか。
私にはこの場を切り抜ける方法が分からない。

動揺すると、直ぐに助けを求めたくなるのは人間の性だろうか。

もう、このまま諦めて…………


「たのもう!」

その、鶏が鳴くような元気な声は、混乱する私の思考を全て掻き分け押し退け、しかと私の耳へ届いた。

そして、颯爽と現れた少年は、大人達が頭を悩ませていた事件の真相をいとも簡単に…当たり前の様に解いてみせた。


私は、少年の推理…いや、少年が述べた真実を聞き届けた後、私は、依頼人である秘書を タイミングを見計らって撃ち殺した。

マフィアを嵌めたのだから、もうこの秘書の居場所は横浜の何処にも……いや、この世の何処にもない。
組織に捕まれば辛く長い拷問で死ぬ寸前まで苦しむ事になる。


そして、私が関わった人物となると、恐らく、拷問を担当するのは…………。



その銃弾は、私の僅かな慈悲だった。



…それから私は、結局、殺人の罪で市警の地下拘束所で暫くの間を過ごした。

空調が効いていたのでそこまで悪い環境ではなかったが、飯が不味かったのはよく覚えている。
いや、思い出したくはない。





…そうだ 、いつだったか 地下拘束所に銀狼が訪ねてきたことがあった。

ある犯罪組織がよく使っている監禁場所を教える代わりに 私は銀狼にカレーを食わせろと乞うたのだ。

今となっては懐かしい。




私が、昔の出来事に浸っていると、静かに…目の前にカレーが置かれた。