大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 文ストBL! 織田作×乱歩!その他cp太宰多め R18 ( No.193 )
日時: 2017/10/08 22:54
名前: ぽぺぽぺ

雨が降っている。

まるで、誰かが流す筈の涙の代わりをする様に。

雨は容赦なく冷えきった体に跳ね、尚も私の体温を奪っていった。

私は幽霊の様に、ただぼぅ…と前を見つめ足を進める。


ドン!

腹の辺りに軽い衝撃がはしった。

ゆっくりと下を向くと、そこには、私にぶつかった拍子にバランスを崩したのだろうか、小柄な青年が尻餅をついて、私へ向けて口を開いていた。

何を言っているのか、ぼやけた様な頭では理解するのに時間が掛かるが、少年が荷物を拾い始めたので、それを手伝う。

その時に拾ったものは何処か警察の鑑識が持っている物の様で、「あんたは警察か?」と尋ねると、青年は心底厭そうな顔をした。

と、そこで青年の顔を改めて見て気付く。


昔、会ったことがあっただろうか。

その青年の顔は、私の記憶の奥深くに残っている。
名前を何と言っただろうか。

少し考えてみる。
程なくして、青年が怒りと嫌味を織り交ぜた自己紹介を始めた。

「僕こそは世界最高の名探偵、江戸川…」
「すまなかった。」

私は青年の台詞を遮った。
自分でこの青年の名前を思い出したくなったのか、思い出したく無かったのか、自分でも何故 青年の台詞を遮ったのかは分からない。

「先を急ぐので失礼する」

今、私にはやらなければならない事がある。
一刻も早く、だ。
何故急ぐのかも、もはや自分では考える事ができないが。

しかし、青年は口を動かすのを止めなかった。

「疑うのなら見せてあげよう。
そうだな、君が急ぐ理由は………」

それは、私も知りたい事だ。
足が進みたい、進みたいと、少し痙攣するが、私は、青年の次なる言葉へ耳を傾けた。







「悪いことは云わない。
目的地には行ってはいけない。考え直すべきだ。」



「何故だ?」


「だって、行ったら君…………………









死ぬよ?」









鼓膜を震わせたその波は、私に少しの寒気と安心感を与えた。


今更、生き残ろうとも思っていない。

出来ることなら、闘いの後、私も最愛の子供たちの後を追いかけようと、心の何処かでそんなことを考えていた自分もいる。


私は、新たな煙草に火をつけ、それから青年に背を向けた。
西に向けて再び歩き出した。

歩きながら、背後の青年に向けて、私は云った。









「知っている。」




そう言った時、記憶の奥深くに沈んでいた短い単語が私の脳裏に浮かんできた。

















「またな、乱歩」






他人の名を口に出して言ってみたくなった。
ただ、其れだけの事だった。