大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: もっとアイして、コワして。【クロスオーバー/長編】 ( No.11 )
日時: 2016/11/15 18:58
名前: 玄蠢
参照: 修正

-第一話〜前編-【ノワール】
ーーーーーーー

「………此処何処だ」

       ***

とても暑く、まるで火で炙られているかの様。
チリチリチリンと、時折虫の声が混じって、ようやく涼みが取れる。
__そんな夏の夜。

「かぁー!あっちぃよぉ!!」

パタパタと団扇を勢いよく扇ぎ、天井を目を細め、仰ぐ少年の姿。
“元気良さ”を感じさせる声には、何処か冷めている様な、そんな不思議な
感覚を覚えさせた。

というか夜なのに暑い。
こんな事ってあるのか。いや、熱帯夜なのか?
とりあえず今は、早く夏が過ぎることを願うしかない。どうせなら冬が
良かった。寒い方が好きなんだけどなぁ、オレ。

「夜だってのになぁ!……ほんっと、熱帯夜は__」
「煩いよ、ノワール」

呆れと苛立ちを孕ませた呟きは、隣の少女によってピシャリ、と遮られる。
少女は“ノワール”と呼んだ少年の方をジッと見据えて言う。

「夏だよ?水……いや、インクが気持ちいい時期じゃない。冬は凍りそう
だし、何より風邪を引きやすいわ、で嫌だわ」
「そうか?いやでもよ、冬の方がアイスうめぇよ?」

ポリポリと少年__ノワールは焦げ茶色に染まった肌を掻きながら言う。
..何処となく指先の肌が腫れている様に見えるのは気のせいだろうか?

はぁ、と憎たらしく溜め息を少女は吐く。
そして、虫刺され用の塗り薬を手に取り出して、またもやピシャリと
冷たく言い放つ。

「ノワール..蚊に刺された?」
「あ?何で分かったんだよ、イカルゥの癖に」
「そう言うってことは刺されたんだね」

少女__イカルゥはノワールに目も合わせずに腫れぼったくなった患部に
遠慮せず薬を塗りたくっていく。
ピクリとノワールは反応して、これでもかと言うくらいに暴れ、体を捩らせた。

「あああああぁ!いってぇ!もっとソフトに塗れよぉ!!」
「そんなの自分が掻きすぎたからしみるだけでしょ。静かにしてよ、もう」

御機嫌斜めの様子でイカルゥは答える。
イカルゥの黄色の透き通った瞳からは今までに無いくらいの威圧感が
放たれていた。

「……すまなかった」

ビクゥッとノワールは身体を反らし、怖気づく。
すると、イカルゥの薬を塗りたくっていた手が不意に止まった。

「良いよ、もう終わったし。..に、しても本当暑いね」
「は、はぁ……」

本当にガールの心は分からねぇ。
まぁ、それでこそ会話が楽しいんだけど……。

呆れ混じりに返事をして、刺された所を指でゆっくりと触る。


__ヌメッ。
いや薬塗り過ぎだろ!?こんだけ塗らなきゃいけねぇのかよ!

Re: もっとアイして、コワして。【クロスオーバー/長編】 ( No.12 )
日時: 2016/11/15 19:19
名前: 玄蠢

ー第一話〜後半ー【ノワール】
ーーーーーーー

「…………と、言うわけなんだ」
「いやどういう事っすか!?」

目の前に居る緑色の青少年に、経緯をポツリポツリと飛ばし飛ばしに話す。

しょうがないじゃないか、此処に至るまでのオレの記憶はここまでなんだから。
……まぁ確かに、“蚊に刺された事で、見知らぬ場所に来るのか”が
どうやって結び付くのかがオレにも皆目見当が付かない。

「でも、そのイカルゥって子も居ない訳っすし..あ!!」
「……?ああ、オレはノワール。お前は?」

腕を組み、“やはり此処で誰かを待つべきか…”と周囲に考えを漂わす青少年。
しかし、突然何かを思い出した様に腹から出した様な声を漏らす。
突然の事でノワールは意図を掴めなかったが、直ぐに気付き、考えを汲み取る。

「いやぁ、すみませんっす。俺はセトっす!」

ニカッと花が咲くかの様な笑みを浮かべ、威勢良く答えた青少年__セト。
セト__ノワールは覚えるようにその単語を繰り返し呟き、セトに向かって
微笑を浮かべた。

いや、本当……元気のいいやつ。
話すことは飽きねぇだろうけど、ずっと一緒に居たら疲れてくるだろう。
なぁんか、オレとは相性悪そうだし。

「…………ん?何すか、コレ」

セトがピラッと音を発てて紙を拾う。
“何か知らないか?”とでも言うかの様にオレの目の前に突き出してきた。
地面に落ちていた為か、少し泥が付着していて汚いが、書かれている事は
難なく読めた。

「“冒険と欲望と幻想の世界へようこそ”……?」

意味が分からず、読み上げる最中にこてんと首を傾げる。
これは何かのキャッチコピーだろうか?
いやしかし、この紙は__この現状を示している、暗示しているのか?

「…………俺らはこの紙の言う世界とやらに飛ばされたんすかね?」
「どうやらそうみたいだな」

オレの視界には無駄に生い茂った木々と、ドロドロとした液体の様な者が居る。
……恐らくはセトの言う通り飛ばされたのだろう。