大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL・オリ・一部18禁) ( No.14 )
日時: 2017/12/04 22:29
名前: ぽぺぽぺ

***

30点中2点。
それが俺の今日の英単語テストの点数だった。

我ながらやばい点数だとは思った。
しかし、いつも通りの点数なので ショックを受けることもなく。
小テストの存在自体 頭の片隅から消えかかっていたのだが………。

「とりあえず…今日でこの単語全部覚えような?」








爽やか過ぎる笑顔の結城が放ったその一言のおかげで、俺は勉強会の時の記憶を無くす事となる。
でも、英単語は覚えている。

……俺すごい。

「いやー、佐伯ってやれば出来るんじゃん!
昨日の夜にこの位勉強しとけばかなり点数上がったろうに……」

昨日の、夜か…
一瞬だけ、昨日見た夢が頭に浮かんだ。

「…………それが出来ないから俺はバカなんだよ」
「開き直るなバカ。」

そんな軽口を言い合いながら、ふと時計を見る。と、ここで一つ思い出した。

「あ……っと、俺 今日バイト入ってるんだ……校門で別れる感じになるんだけど……」

俺が言うと、結城は「あー…」と言いながらスマホをいじり始めた。
暫く見ていると、結城はパッと顔を上げ 言った。

「うん。友達に送ってもらうことになった!
バイトかぁ…偉いな佐伯は」
「そんな事ないよ。」

………….それは、仕方の無いことだから。


***



時計の針が5時を示す。


俺達が荷物を持ち、図書室を出ると 遠くの方から運動部の掛け声が聞こえた。
廊下は窓からの夕日で赤く染まっている。

下駄箱から人気の無い図書室までは少し距離がある。
特に何も話さず歩いていると、ふいに結城が口を開いた。

「佐伯ってさ、なんか怖いものとか…ある?」

怖いもの……?
ぱっと出てくるようなものはないな……。

「いや、特にない。
…あ、強いていうなら勉強かもな。」
「なるほど…そっか。」

結構真面目に答えたつもりだったが、結城は吹き出して軽く笑った。

「結城は?怖いものとかあるのか?」

クラスのムードメーカーの弱点…
使い道はないだろうが、知りたいと思うのは俺だけではないと思う。


「んー……………」

結城が何かを考えるように唸った。
その声に反応してほとんど反射で結城の顔をみる。

(あ…睫毛、長い………)

何かを考えているのかは分からないが、少し伏せた目にはまばたきをすると音が鳴りそうなくらい長い睫毛がかかっている。

(キレイだな…)


思わずまじまじと見つめる。




「…俺さ、夕焼けが怖いんだ。」


結城は、長い沈黙の後、ゆっくりと目を開いてそう言った。
一瞬、ナゾナゾかなにかだと思い考え込む。
が、今の流れで何故結城がナゾナゾを言ったのかが分からず、結城を見た。



と、ここで俺は言葉に詰まる。






結城は笑っていた。


とても悲しそうに、今にも泣き出しそうな顔で 静かに笑っていた。





そこで俺は気づく、これは ナゾナゾではない。

だとすると、夕焼けが 怖いって……?





「トラウマなんだ。夕焼け…」

俺の心の疑問に答えるように、結城は優しく、何処か辛そうな声で言った。
俺は、どういう反応をすればいいのかが分からず、ただただ結城の顔を見つめていた。



結城の顔は、夕陽に照らされオレンジ色に光っている。
目が潤んでいる様に見えるのは光が目に入って眩しいせいだろうか。

逆光でよく顔は見えないが、ただただ笑っていること。そして、目が潤んでいることだけは確認できた。


とても、とてもキレイだ。





最近俺は、ふとした時に、本当に 自分があのクラスの中心にいる結城と話しているんだなぁ…と、不思議な気持ちになる。


全く接点なんてなかったのに、結城は俺に話しかけてきてくれた。
あの補習が無ければ、結城と勉強会をする事も、こうやって二人で歩くこともなかっただろう。

そう考えると、あの補習を俺に命じた岡崎先生には少し感謝をするべきなのかもしれない。


そんな事を考えながら歩いていると、あっという間に下駄箱に着いた。

俺たちは靴を履くと、校門へ歩く。
依然沈黙が流れていたが

「いやぁ、なんか変な空気になったね…。
ごめん。気にしないで!」

という結城の明るい言葉で沈黙は途切れた。

結城の顔を見ると、そこには爽やかな笑顔が浮かんでいた。
いつもの結城だ。

「うん。大丈夫。」

こちらからむやみに質問する事でもないだろう。
俺は、結城が話してくれるまで待つ事にした。






ブブブブ………


「ん?なんの音だ?」



校門に近づくにつれ、何かの音が大きくなっていっていることに気付く。


校門の外へ目をやると、黒くてゴツい固まりが…

なんだ?バイクか?



予想的中。
校門から出ると、すぐに大きめのバイクが見えた。

バイクに関しての知識には疎いのでよく分からないが、大きめの車体から結構な額だということはだけは見て取れた。

しかし、うちの高校はバイクでの通学は禁止されているはず…
そもそも、高校生がこんな高価そうなバイクを、持っているだろうか?


「おい。」

ボーッと考えを巡らせながら バイクを見ていると、背後から声を掛けられた。
振り返ると、そこにはヘルメットを持った男がいた。

暗めの茶髪をオシャレにセットしていて、手にはヘルメット。耳には幾つかピアスが付いている。
その見た目から(あ、やばい人だ。逃げよう)などという思考が一瞬 頭をよぎったが、結城の「百ちゃん!」という声に押し留まった。


「おー千秋。
ナイスタイミングだったな!」

見た目通りチャラい口調で結城に話しかける男。
固まっている俺を見てか、結城はクスッと笑い「あー、佐伯にも紹介しなくちゃね!」と言って、百ちゃん(?)へ近付く。

「この人は、俺の友達で百瀬 翼!
<つばさ>って書いて<たすく>って読むんだ!カッコいいだろ!
俺は百ちゃんって呼んでる!」

結城が早口で何故か自慢気に言うと、百瀬さん(?)は「おー、なになに?千秋の友達?よろしく!名前は?」と手を差し出してきた。

俺は「佐伯 由良です…。えっと、よろしくお願いします。」と差し出された手を握る。

俺のコミュニケーション能力では こういう時に気の利いた挨拶も出来ない。

百瀬さんは「由良、ね、女の子みたいな名前だなぁ!」と、俺が何気に気にしている事をサラリと言ってのけ、繋いだ手を激しく上下に振った。

肩が悲鳴をあげる。

長くて激しい握手を終え、互いの手が離れると、百瀬さんは持っていたヘルメットを結城に投げ渡し、バイクへ跨がった。



…こんなにバイクが似合う人、初めて見たかもしれない………。


結城が投げ渡されたヘルメットを被り、百瀬さんの後ろへ乗る。
百瀬さんはそれを確認すると、最後に「あ、俺の事は気軽に<翼さん>って呼んでねー!由良ちゃん!」と言い残し、バイクを走らせた。

ちゃん付け…………。
翼さん、俺が名前気にしてる事、実は気付いてたりするのか…?
というか今…翼さん、ヘルメットつけてなかったような……。

うん。もう考えるのはやめよう。

俺は、一つ溜息をつき、自分のバイト先へと歩き始めた。