大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL/オリ/学園/(日常) 一部 ( No.16 )
日時: 2017/09/10 01:06
名前: ぽぺぽぺ

***

俺のバイト先は高校の最寄り駅から少し外れた静かな場所にある。
少しアンティークな雰囲気の純喫茶店だ。
この店では、酒を販売しない6時までしか学生はバイト出来ないのだが、店長のご好意により、今日、俺は6ー9時にシフトを入れさせてもらっている。

カランカラン……

ドアを開けると、ドアに付けられたベルが音を立てた。

ドアが閉まると、カウンターからヒョコッと店長が顔を出した。

「こんばんは」
俺が言うと 店長は
「おぉ、学校お疲れ様〜。よろしくね〜」

とだけ言い、また顔を引っ込めた。

店には何人か、お酒を飲んでいる人の姿が見えた。
俺は少し早歩きでスタッフルームへ行く。

ガチャ

アンティーク風なドアを開けるとスタッフルームに置いてある椅子に腰掛け、雑誌を読んでいる人と目が合った。

「おー、来た来た。こんばんは〜。」

「あ…こんばんは……」

バイト先の先輩 綾人さん。
バイトを始めた時から他の先輩達に<綾人さん>と呼ばれていたので、俺も自然に綾人さんと呼ぶようになった。
この店には名札を付ける義務がないので、綾人さんの名字を知っている人は店長だけ…らしい。
全て噂話なので本当なのかは分からない。
ちなみに、店長の名字も分からない。

俺はスタッフルームに設置されている自分のロッカーを開けると、コートを脱ぎ、店指定のエプロンを付ける。
紐を結ぶ途中、チラリと後ろを見る。

すると、雑誌へ目を落とす綾人さんが見えた。

綾人さんのイメージは…一言で表すならミステリアス。
俺が綾人さんについて知っている事は、綾人さんが綾人さんである事と、大学生であること、そして、セットされた黒髪が綺麗だということだ。

俺と同じ黒髪でも雰囲気が全然違う。
なんというか、色気がある。

「……何か、顔に付いてたかな?」

ふと、綾人さんが顔を上げた。
当然、目が合う。


「あ…すみません…ちょっと…見惚れてました………」



って俺正直に何言ってんだ!?
ダメだ…絶対きもい奴だと思われた……。

次の綾人さんの言葉へ奥歯を噛み締めて 構える。

「プッ…」

が、綾人さんの口から出て来たのは声ではなかった。

「クッ……佐伯君って面白いね……フフッ…」

あ、綾人さんが笑ってる…!
あのクールで無表情な綾人さんが………!

「あ、し、失礼します!?!?!?」

俺は笑われた照れ隠しなのか、綾人さんが笑っていることに驚いたのか、自分でもよく分からないまま、自分でも引く様な情けない声を上げ 自分でも引く勢いでスタッフルームを後にした。

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL オリ 一部18禁) 投稿遅→文章多 ( No.17 )
日時: 2017/10/14 17:39
名前: ぽぺぽぺ

***

「あれ、どうしたのそんなに慌てて……」

スタッフルームを飛び出すと、店長が煙草を吸いながら驚いた様に声を出した。


引っ込めコミュ障。
出てこい言葉…。

「あ…え、えと……………。」

ニコニコしながらコミュ障 乙な俺の顔を見る店長。
その笑顔と対照に流れる沈黙………。


「すみませーん」

沈黙を破ったのはオーダーを求めているであろうお客だった。

「あ…俺、オーダーとってきます……」

俺は、オーダー用の紙を取ると 逃げる様にお客のオーダーをとりにいった。

***

「佐伯くーん、そろそろ上がって良いよー」

グラスを拭いていると、店長の元気な声が聞こえてきた。

時刻はそろそろ午後9時。
お客が多くなってくるこの時間帯に帰るのは 申し訳ない気もするが、このバイトの事が学校にバレたら店に迷惑を掛けてしまう。

何よりこのバイトは俺の収入の大半を占めているので、ここを辞めることになったら死活問題だ。

なので、俺は時間になったら素直に帰ることにしている。

拭いたグラスを丁寧に棚に並べ、キッチンを出る。
店は大分混んでいて、店長が忙しくオーダーをとっていた。
俺は、忙しそうな店長を横目に、少し心を痛めながらスタッフルームへ入る。
いつものことながら、やはり申し訳ないというか………

「あ、佐伯君 今上がり?お疲れ様ー」

スタッフルームへ入ると、そこにはスマホをいじっている綾人さんがいた。

声は掛けてくれたものの、ゲーム中なのか画面から綾人さんの顔は離れなかった。

休憩中かな?と少し疑問に思いつつ、綾人さんに「お疲れ様です……」と、か細い声で言い、謎に なるべく物音を立て無いようにして歩き、自分のロッカーを開け、エプロンを脱ぎ、スマホを取り出した。

バイト中はしっかりバイトに集中するために スマホはロッカーに入れてある。

ケータイを起動すると、まず 物凄い量の通知に驚いた。
その次に、その大半が結城からのメッセージの通知だということに驚いた。

その内容は<バイトファイト!>や <明日の宿題やれよーー>とか <暇>等、いかにも暇人が送ってきそうな……そんなものばかりだ。

思わず笑ってしまう。
今までケータイで友達とやり取りなんて業務連絡以外ではした事がなかったから。

しかし、最後のメッセージ<あ、明日 古文のテストだね〜、頑張ろー>という一文で、俺は[顔から表情が抜け落ちる感覚]を生まれて初めて体験したのであった。