大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL・オリ・一部18禁) ( No.2 )
日時: 2017/08/20 00:37
名前: ぽぺぽぺ

***


夕日が教室を照らす午後5時。



誰もいない教室でただ1人、窓際の席で ぼぅ…と外を見つめる。


窓から見える校庭では、サッカー部がボールを蹴り、野球部がキャッチボールをしているのが見えた。


いつからこんな状態が続いているだろうか。
そろそろ机についた右肘が鈍く痛み始める。



入学したばかりの頃は先生の目も甘く、あまり重要に感じていなかった日々出される課題は、進路の話が出始め、先生が忙しさでピリピリするこの二年生の春には、俺を悩ませるもの の、ダントツトップへと躍り出た。



実際、俺はあまり頭の良いほうでは無い。
だが、黒髪とメガネと静かな性格の所為で 入学当初にはすでに 優等生というレッテルが貼られ、当たり前の様に学級委員へ推薦された。
それを頑なに抗議し、丁重にお断りしたのはまた別の話。



二年生になってからもレッテルと云うのは早々破れないもので。

今日も課題を忘れたと担任へ伝えると、熱があるのか?昨日は用事があったのか?等、俺が優等生であったなら当てはまりそうな理由を次々に紹介された。


…しかし、俺が課題を忘れた本当の理由は担任の口から出ることはなかった。

俺が課題を忘れた理由。それはとても簡単で単純だ。


「課題の存在なんて知らねーよ………」

誰もいない教室に自分の声だけが通った。


……課題を忘れると居残りなんて、一体誰が考えたことなのか………。
あぁ……担任で数学教師の岡崎か……。


今朝のHRの時、岡崎先生が話していた<詐欺に騙されない為に>という様なふんわりとした薄っぺらい世間話を思い出してみる。

人は見た目で判断してはいけない…なんて話してたっけな…
説得力…ゼロ…いや、むしろマイナスだよな…


……やばい。本格的に肘が痛み始めた。
そんなに長い時間この体勢だったかな…?


俺は、体制を元に戻すと、見るだけで頭の痛くなる数学のプリントへ向き直る。




もうこれ……やったことにして帰ってもバレないんじゃ………………。


ガラッ


「!?」
「あ」

ズルを考えた所為だろうか、いきなり教室の扉が開け放たれた。


「結城…千秋?」

思わず…なぜか、フルネームを口に出す。

結城は、俺とは正反対の人気者ポジション…クラスの盛り上げ役的な奴だ。
二年生になって初めてクラスが一緒になったが、話したことも、なんなら目が合ったことも数えるくらいしかない。(数えていないけど。)


「佐伯が課題忘れたって…本当だったのか……?」
「うん。」

あぁ、結城も詐欺に合うタイプか………。

「…………………………」

沈黙が…ツライ。
そして、何故 結城は俺の顔をジロジロ見ている……?



「前々から思ってたんだけどさ……………」

結城は、長く続いた沈黙を破ると、俺の座っている机に近付いてきて、ほぼ空白の数学のプリントを見て 確信したように言った。


「佐伯って……あんま、真面目くないよね…?」



これが、俺が初めてクラスメイトに本当の性格を言い当てられた瞬間だった。



***



Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL・オリ・一部18禁) ( No.3 )
日時: 2017/09/10 00:35
名前: ぽぺぽぺ

***

「え…………と」

生まれて初めての状況。
自分の頭の中には返す言葉が見つからない。
ので、

「なんで…そう思う?」

とりあえず理由を聞いてみた。

「なんでって……うーん……………」

結城は明るめの髪を無造作に掻き、言った。

「………真面目な奴って課題忘れなさそうだから?」

……………ご名答。

真面目な奴はそもそも課題を忘れて放課後の教室で居残りなんてさせられることはないだろう。うん。

「その通りだよ。
俺は真面目じゃない。
…むしろ凡人よりバカだよ。」

……またしても沈黙。



カァカァ…

やめろカラス。
このタイミングで鳴かれると何処かのギャグ漫画の一コマみたいになるだろう。



「……空白のとこ、分かんないの?」


結城を見ると、その目はプリントへ向けられていた。

「あぁ…うん。
一応一通り解いてはみたんだけど…」


「え?一通り解いてそれ…なの?」


結城が驚くのも無理はない。 別に失礼な奴だとも思わない。
そのプリントは所々ちょこっと答えが書いてあるだけで、あとは驚きの白さなのだ。多分、書いてある答えも間違っている。

俺だって黒髪メガネの奴がここまで勉強出来なかったら驚くし、速攻で友達になるだろう。

「言っただろ、俺はただのバカなんだよ。」

「じゃあ、俺が教えてやろっか?」

「そうそう!ほんと誰かに教えてもらいたいくらい……って、、え?」

「いいじゃんいいじゃん!俺どうせこれから暇だし…
岡山センセって課題忘れ厳しいし…
目ぇ付けられたら面倒くさいよー多分!」

岡崎先生の説教が長いことは有名だが…

いや

それよりなにより

「結城って……勉強、出来るの…………?」

ん?今、口に出したか?俺。


……うん。出した。出してしまった。


「ごめ…忘れ……」
慌てて顔をあげる。
と、結城は「かかったな!」と言わんばかりの笑顔。

「問三からだな。」

「…………え?」

「人は見掛けによらないってね。今日岡崎センセも話してじゃん?お前がそうなようにね!!」

胡散臭い…。

「ん?信用してないな?…………安心したまえ。
俺は1年の時 学年トップを経験したことのある男だぞ。」


「………ウソっぽい」

あ、また口に出してしまった。
この癖は直した方がいいな。

〜〜〜

俺は、最後の数字を書くと、静かにシャーペンを机へ置き、目を見開いてプリントを見詰めた。

「埋まった……」

あれ程苦戦していた問題が、20分程ですべて埋まった。
なんだこれ。夢か。

「お疲れ様ー!
いやー、佐伯って飲み込み早いねー!
勉強の仕方さえ分かれば、それなりの点数は取れると思うけどなー

………て、佐伯?大丈夫か?おーい」

全ての解答欄が埋まったプリントから目が離せない。
本当に、これらを俺が書いたのか?
こんな暗号を俺が解いたのか……?

「………頭、良いんだな、結城…。その…疑ってごめん…」

「え?いやいや、それは良いよ!
実際俺めっちゃ頭悪そうだし!こんな明るい茶髪でさ。」

結城は、頭を片手で軽くぽんぽんっと叩いてそう言い、笑った。



「…………結城が初めてだよ。」
「何が?お前のプリントの解答欄を埋めさせられたのが?」
「いやまぁ それもそうだけど……俺のこと、ほぼ初対面で真面目じゃないって分かった奴。」

俺が言うと、佐伯は「あー……」と言って また、髪を掻いた。


「もしあれなら………明日から、教えようか?
勉強。」

「え…いや、それは流石に……」

結城はクラスの人気者ポジション。
スケジュールはそれなりに埋まっているだろうし…
俺のために時間を割いてもらうのも申し訳ない。

「それにほら!テストもすぐだしさ!」

………………………。

「そろそろ進路も見越した勉強もしなきゃじゃん?」

………………………。

「よろしく、お願いします。」

こうして、結城と俺の放課後の勉強会は始まった。

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL・オリ・一部18禁) ( No.4 )
日時: 2017/09/10 00:37
名前: ぽぺぽぺ

***

〜next morning〜



「おはよー」「おはよー」
「やっべ今日英語の小テストじゃん!勉強してねぇ…」
「はい オワターww」

いつも通りの騒がしい教室。
だが、今日は一味違った。


…………なんてことはなく。
どこまでもいつも通りの朝だ。

ここまで何も変わらないと、昨日の結城との出来事が嘘の様に思える。


…………いや、本当に嘘なんじゃないか?
自分の妄想なのでは………

「佐伯、おはよー」

うん。よく考えたらあり得ないことだ。
この俺がクラスのムードメーカーの結城と?勉強会?いやいや ないない。

「佐伯ーーー」

目を覚ませ。佐伯 由良。
俺はぼっちだ。諦めろ。

「佐伯!!」

「っえ!?はい!!」

突如耳に大音量で流れ込んできた自分の名前に驚き、顔を上げる。
結城だ。

「そこまで驚かれると俺もびっくりだわ。
めっちゃボーッとしてたけど、大丈夫?」


「あ…うん。大丈夫。」

「そっか、良かった。
あ、今日の勉強会の事なんだけど、教室だと邪魔入るかもだから、図書室とかどうかなって思うんだけど…どうかな?」

うちの学校の図書室か……
うちの学校の近くには、県立の大きな図書館があり、うちの図書室の存在は空気だ。
勉強するにはもってこいの場所だろう。

「良いと思うよ。」

それにしても…

「本当だったんだ………」
「ん?何が?」

あ、やばい。また心の声が……。

「なんでもない。気にしないで。」
「ふーん…そっか。
じゃー、放課後図書室ね!」
「うん。」


…やっぱり、今日の朝は一味違った。

Re: 茶髪君と黒髪君。 (BL・オリ・一部18禁) ( No.5 )
日時: 2017/09/10 00:47
名前: ぽぺぽぺ

***

〜after school〜


それからは、何事もなく授業を受け、あっという間に放課後になった。

帰りの支度をしていると、今日の部活がダルいだの、帰りに何処へ行こう等というクラスメイトの雑談が聞こえてくる。

さて、俺はこれから図書室か…
バイト以外で放課後に予定があるのは久しぶりだ。
それだけのことで少し心が踊ってしまう俺は、やはりもう少し友好関係を築いていった方が良いのだろう。

俺は、勉強道具を入れ、少し重くなった鞄を持ち、教室を出た。


そういえば、図書室ってどこだろう。


〜〜

「ここ…か………」

やっと辿り着いたのは普通の図書室。
…普通としか言い様のない、普通の図書室だ。

思ったより時間が掛かってしまった。
図書室の場所も知らない俺は、一年の頃、一体何をしていたのだろうか。


ガラッ

少し立て付けの悪い扉を開けると、図書室独特の、本の匂いが体を包み込んだ。


結城は…まだ来てないみたいだ。


俺は、少し奥の方の机を選び、腰掛けた。

ガラッ

それとほぼ同時に、図書室の扉が開く。

「…あ、いた」

結城だ。

「ごめん遅くなって…
俺が図書室指定したのに場所分かってなかった…。」

頭を掻きながら近づいて来る結城。

「俺もかなり迷った。
図書室なんて来たことも無かったし。」

結城が俺の正面へ座った。

「…さて、佐伯君。
今日の授業で分からない事はあったかい?」

わざとらしく口調を変えて喋り掛けてくる結城。

「数学の答えの出し方が分かりませんでした。先生。」

俺もノってみる。

すると、結城は一瞬 びっくりしたような顔をしてから すぐに表情を戻し

「見せてみたまえ。」

と言い二カっと笑った。

あぁ、これは女子にモテるなぁ…
俺はそんな事を思いながら、ほとんどが落書きで埋まったノートを結城へ差し出した。

〜〜

「まぁ…こんな所かな……」

遠いところで結城の声を捉える。
あれから鬼の様に問題を解かされ、俺はこの単元で分からない所がなくなった。
しかし、HPは底をついた。

「もうこんな時間か………」

顔だけを動かし、外を見ると、夕焼けと夜のグラデーション…オレンジ色と紫の空が見えた。

「そろそろ帰るか…
…あ、そういえば佐伯って家何処なの?」

結城が机に散らばった消しカスを集めながら俺に問う。

「あー…○○町ってとこ」

俺は顔をあげずに答えた。

「まじで!?俺もそこなんだけど!」

「え?」
俺は勢い良く顔をあげる。
結城は驚いた様に俺を見ている。
嘘を言っている感じではない。

「まじでか…今まで気付かなかった……。」
「てことは佐伯もバス通学?」
黙って頷く。
「じゃー一緒に帰ろ!」
「おう。そうだな!」

俺達は、勉強道具を片付けると、鞄を持って、図書室を後にした。