大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: BLカゲプロ館・R18多め 目次アリ ( No.959 )
日時: 2018/10/26 02:25
名前: ゆあら ◆IrmWJHGPjM

深夜テンションで短編・1P完結モノ、シンタロー視点です。





何かが足りない。そう思うようになったのは、いつからだったろうか。



朝は自分の寝言で目が覚める。
毎日じゃないが、3日に1度は寝言で叫んでいるようで、目覚ましが鳴るより先に飛び起きる羽目になる。
まあ、朝起きて「またか」と思う頃には、たった今叫んだ言葉も見ていたはずの夢も
きれいサッパリ忘れているのだが。

しかしまたその夢がとても懐かしく思える。中身を一切覚えていないというのに、だ。
何かを叫んで飛び起きた朝は、ぎゅっと心を締め付けられるような息苦しさがオレを襲う。
理由は自分でも本当に分からないのだけれど、後から後から涙が溢れて、静かに頬を伝っていく。

悲しくはない。ただ、何かが足りない、あるべきものがそこにない、と思うだけだ。

食事中、大学へ向かう電車の中、帰路、入浴中、寝る前。
一人の時間になると、考えずにはいられない。
あれは、あの夢はあの感覚は、一体何なのだろう。
自分でも、何故あんな錯覚をするのか、何故こんなに執着しているのか分からなかった。

足りない何か、大切な何かをずっと探しているが、それが何なのか分からない。
言いようのない不安を抱き、早く、早く見つけなければ、と焦っている。
それが「物」なのか「人」 なのかも分からないまま、
ただ涙と胸のこの痛みだけがその存在を覚えている。



「______!」



ふとした瞬間に、自分が酷く空っぽでつまらないものに思えた。


「こ____!」



中身のない、ぽっりとあいた空洞がオレの中に広がっていた。



「こ__は……!」



まるで無理矢理に引き裂かれた心をどこかに置いてきたようだった。



「コノハ……っ!」



そうしてまた、自分の寝言で目が覚めて。



たった今呼んだ愛しい名前も、幸せだった思い出も、その存在があったことも
涙と一緒にこぼれて、オレの中からほろりと消えていく。
そうしてまた今日一日を、辿り着くことのない答えを探して迷いながら生きるのだ。



昨日も、今日も、明日も、その次もそのまた次も。
ずっと何かを、誰かを、自分の中身を、探している。