大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.2 )
日時: 2017/05/03 16:37
名前: 無冬

第一話
『高校一年生の夏休み』
(side:洸流)


八月上旬。高校生になって初めての夏休み。
僕――白城 洸流(しらき ひかる)――は高校入ってすぐに始めたアルバイトのシフトを夏休みを潰すつもりで入れて、短期アルバイトも掛け持ちしている。
基本、昼間は書店で本の陳列やレジを担当し、夕方はファストフード店で笑顔を振り撒くというのをほぼ毎日繰り返している。
ファストフード店と書店とレンタルビデオ店、そしてコンビニエンスストアの四つ。
本当は二つほどで良かったのだが、同じ店で毎日シフトを入れると、労働基準法に引っかかってしまうので、シフトが重ならないように休みを入れながら四つを同時進行させている。
因みに、全ての店が週二日からの出勤でオーケーの所を選んでいるため、多少休みが多くても何も言われない。
でも、さすがに四つは肉体的にキツかったのか最初の一週間は表情筋を使い過ぎて筋肉痛になってしまった。
当然疲労は結構溜まる。でも、長期の休みの間にいつものような状態でいると色々な事を考え過ぎてしまいそれはそれで疲れてしまうから体を動かしていたかった。


今日は登校日で午前中のアルバイトは休み、通常入れている時間をずらしてもらい、夕方五時からのアルバイトのみを入れておいたが、午後二時で学校から解放された為、二時間ほど時間に余裕が出来た。

「いらっしゃいませ。三名様で御座いますね。お席へご案内いたします」
二週間振りにクラスメイトと会い、時間もあるのでカフェでお茶をする事になった。
「ピカリンさ、マジで休みなしなの?」
ボックス席に案内され、注文を済ませた後、最初に切り出したのは僕の向って右に座る柿ア 亜理紗(かきざき ありさ)だった。

僕は昔から周りの男子と比べて女子生徒との交流が多く、男子の友達には羨ましがれていた。そのおかげで一時ハーレム王≠ニ密かに呼ばれていたらしい。

因みに、亜理紗は高校のクラスメイトで入学式の日に一番最初に僕に話し掛けて来た二人の内の一人だ。そして僕にピカリンというあだ名までつけた。
「ん? ああ、バイト?」
突然の切り出しに僕がそう訊き返すと、亜里沙の隣に座る――――亜理紗の幼馴染みで入学式の日に亜理紗と共に僕に話し掛けて来た――――栗原 唯乃(くりはら ゆいの)が亜理紗と共に頷いた。
「ハードだよね。休み無しって」
唯乃が静かに、そしてしみじみと呟いた。
「あ〜…………うん……まあね」
そうとしか答えようがなく、短く答えると亜理紗が拗ねたような顔をする。
「え〜っ、何それ〜……仕方ないよね的なやつぅ〜……私、もっとピカリンと一緒にどっか行きたいのにぃ〜」
僕は二人のどちらとも付き合っていないし、正直ただのクラスメイトという感覚しか抱いていないが、二人は普通に僕を友達と呼び、学校がある時は休み時間に僕の所へやって来たりしていたし、時々昼食も一緒に食べたりもしていた。
その時から疑問に思っていたのだが、何故僕の周りには男子ではなく女子が集まるんだろうか。
モテている、という感覚とは何かが違う。マスコット的な扱いを受けているような気もする。そして、僕に対しては皆思春期の女子とは思えないほど無防備である。まあ、正直僕も興味は無いんだけど。
ちなみに、亜理紗と唯乃の二人は幼稚園からの腐れ縁≠ナ高校までも一緒になったと最初に話した時に言っていた。
二人は入学式の日に別々のグループの中に居て、偶然同じタイミングで僕に話し掛けて来た。それから二人とは仲良く話したりする事が多くなっていた。だが、夏休みに入ってから会うのは今日が初めてだ。
「まあまあ。一人暮らしだと何かと大変なんでしょ」
唯乃は亜理紗とは対照的に落ち着きながらアイスティーの注がれたティーカップを傾ける。
それででも少し拗ねた顔をする亜理紗に僕が困っていると、
「キャーッ!」
急に店の入り口付近が騒がしくなる。三人で首を傾げながら人が群がり始めた方へ視線を向ける。
目をキラキラと輝かせながら亜理紗が僕達の方を振り返り、
「何だろ。ねっ、気にならない?」
一緒に見に行こうよという顔で僕達を見る。唯乃は少し興味があるらしく行くか行くまいか悩んでいる様子だった。
「気になるなら二人で行って来たら? 僕は待ってるからさ」
二人にそう言うと亜理紗は嬉しそうに立ち上がり、唯乃は仕方なく亜理紗に付き合ってあげるんだという風を装って人が集まる方へ歩いて行った。去り際に、亜理紗が「モデルさんかな?」と言ったのが辛うじて僕の耳に届いた。
その言葉に、僕の心臓は跳ね上がった。嬉しいのか、怖いのか、期待か、不安か。急激に心拍数が上がるの自覚する。
「……もし、そうだったら」
微かに自分の耳に届いた声は――――僕以外の誰にも聞こえない呟きは、震えていた。
でもその続きは口から吐き出される事はなく、消えてしまった。

五分ほどして二人は嬉しそうに顔を緩ませ、戻って来た。
僕の心臓は、相変わらず早鐘を打っていた。もし、彼だったら、と考えを巡らせている間に二人は先ほどと同じ席に座った。
「すぐそこでね、テレビのロケやってたみたいで、ゲストが――――」
少しだけ、息が苦しい気がする。心臓の音が煩くて、平静を装いながらゆっくりと息を吸う。
「立花 広翔(たちばな ひろと)だったの!」
立花広翔――――最近、ドラマや映画に出ている本業がモデルの、高身長で顔面偏差値が高いと何かで意図せず見たような気がする。
想像していた人物とは異なっていた為、心臓が少しずつ何時もの調子を取り戻していくのが解った。心臓が少しずついつものテンポを取り戻していくと同時に、頭も冷静になって行く。もし彼だとしても、ここに居れば会う事は無い。
苦しかったのも気のせいだったみたいに無くなる。
「そっか」

それから暫く二人は立花広翔の話題で盛り上がっていた。僕は相槌を打ってはいたがあまり話は聞いていなくて。
確か、握手してもらったとか何とか、言っていたような気がするが、やはり話の内容は覚えてい。

そんなこんなでいつの間にか二時間も時が過ぎ、僕達は別れた。

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.3 )
日時: 2017/05/03 16:40
名前: 無冬

(side:洸流)続き-1


電車で二十分ほど揺られた後、駅から自転車を十分ほど漕げば僕が一人で暮らすアパートに着く。
帰宅早々シャワーで汗を流し、私服に着替え、忘れ物が無いかを確認して家を出る。そして最寄駅の少し先にあるアルバイト先のファストフード店へ自転車を漕ぐ。

十二、三分ほどで店に着き、従業員専用の出入口から入り、店の制服に着替える。
「おはよー」
「おはようございます」
僕より先についていたアルバイトの先輩と挨拶を交わし、午後五時ちょうどに先輩と一緒に持ち場に着いた。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
営業スマイルを保ち、お客様から注文を承り、注文を聞き終わったら先にお会計を済ませてもらう。そして番号札とレシートを渡すという事を繰り返し、出来上がった順に番号を読み上げ、お客様に料理を手渡したりと色々と忙しいものの、同じような事を繰り返しているため、慣れてしまえばもうあまり忙しいと思わなくなった。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
出勤してから二時間ほどすると、見慣れた男子高校生が来た。
「チーズバーガーを単品で十五個」
夏休みに入ってから始めたこの仕事で大体この時間帯になると彼は三回に一回ほどのペースでお客様として訪れる。
そして大体同じものを十五個ほど店内で食べていく。
「お飲み物は何になさいますか?」
流石に慣れたのでもう驚きはしないが、他のお客様の視線が彼に集まる。
だが、本人も慣れているのか気にする様子もなく、飲み物の注文も済ませて番号札を受け取り、窓際の席を選んで座る。
「――――いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

それから取り敢えず流れ作業のようにお客様を捌き、彼の注文した"チーズバーガー"十五個が出来上がり、番号を読み上げた。
トレーに乗せたハンバーガー十五個を受け取り、彼は先ほどの席へ戻って行った。
「次のお客様――――」
店内は騒がしいのに目の前にお客様が来ない事を疑問に思い、無意識に彼を目で追っていたのか、ただボーっとしていたのか、ずれていた視線を前に戻すと、驚きと動揺で一瞬声を失った。先ほどの男子高校生と同じジャージを着た、青年というには少し幼い顔立ちをしたお客様が立っていた。
「っ……いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
だが気を取り直し、平静を装いながらいつものように注文を取る。
「……バニラシェイクを一つ」

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.4 )
日時: 2017/09/20 12:39
名前: 無冬

(side:洸流)続き-2


目の前に立つ彼も少し驚いたようだったが、相変わらずのポーカーフェイスで静かに注文をする。
「以上で」
「店内でお召し上がりになりますか? それともお持ち帰りなさいますか?」
営業スマイルを意識しながら告げると「店内で」と返ってきたのでお会計を済ませた彼にレシートと番号札を手渡した。
一瞬、何か言いたげな視線をこちらに向けたが、何も言わず先ほどの男子高校生の隣の席に躊躇いなく座った。
動揺して商品を落としてしまうわけにはいかないので小さく深呼吸をして次のお客様の相手をする。
数分で彼の番号が呼ばれ取りに来た時もこちらへ視線を向けたが、再び何も言わず男子高校生の隣に座る。
その後親しげに話していたから二人は知り合いで、しかも同じジャージを着ていたので同じ高校の部活仲間だという事も判った。
少し仕事が落ち着いた頃を見計らい、先輩が「大丈夫?」と話し掛けて来た。
僕は笑顔で「大丈夫です」と、嘘を吐いた。

本当は、全然大丈夫じゃないのに。
でも、自分で何がしたいかなんて解らない。

彼の顔を見て、一年半前の事が嫌でも頭にチラつく。
あの時の事はもう、思い出したくないのに。


『――――――――!』
声が、
痛みが、
苦しさが、
蘇る。


「っ……」
少し、眩暈がしてフラついたが、幸いお客様が居なかったために誤魔化しが利いて今日はもう帰れと言われる事は無かった。
ただ、彼が帰り際に「話したい事があるので、目の前の公園で待ってます。アルバイトが終わったら来てください」と言い残して行った事により頭痛と僅かな吐き気に残りの時間悩まされる事になった。

  *  *  *

夜九時。二十四時間営業の店の為、僕の時間帯に後片付けは無く、夜勤の人と入れ違いにアルバイトを終えて事務所に戻った。
「白城君、ホントに大丈夫? 顔色、悪いけど……」
先輩の優しさという名の御節介にはもう慣れっこで「帰ってゆっくり休んだら治ります。ご心配おかけしました」と言って先輩より一足先に事務所を後にした。

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.5 )
日時: 2017/05/03 16:45
名前: 無冬

(side:洸流)続き-3


「…………はぁ……」
彼は公園で待っていると言っていた。
流石に、無視する訳にもいかず、自転車を押しながら店の道路を挟んで向こう側にあるフェンスで囲まれたバスケットコートが二面ある公園に行った。
「……黒子(くろこ)君…………久し振り」
本当に居るとは思わなくて少し驚いたが、声を掛けると彼も――黒子テツヤも驚いた様子だった。
「……お久し振りです。白城君」
昔と、変わらない口調で僕と挨拶を交わすと、もう一人。
「あれ? あの店の……」
部活仲間であろう、お得意様が一緒に居た。
「こんばんは」
僕と彼も挨拶を交わす。彼は、黒子君と一緒にここで待っていたのかと思ったが、彼はただ単にバスケをやっていただけみたいだった。

お得意様の名前は火神 大我(かがみ たいが)だという事、それと二人共バスケ部で誠凛(せいりん)高校の一年生だというのも、挨拶をして知った。
バスケットコートのすぐ側にあるベンチの隣に自転車を止め、黒子君と並んで座る。
「……話があるって、言ったよね」
僕から切り出すと、彼は静かに「はい」とだけ答えた。
彼とは、中学が二年間だけ一緒だった。同級生で、一年の時はクラスも一緒で、部活も同じ男子バスケットボール部に入っていた。
何故、二年間なのかというと、僕は三年に上がる少し前に学区外に引っ越したからだった。
「…………実は、夏休み前に黄瀬(きせ)君のいる高校と練習試合をしたんです」
そう言って彼は僕の方を窺う。
「……そう」
平静を装いながら短く答えたが、恐らく声は震えていた。

――――洸流、また明日っスね。
今でも、最後に聞いた"彼"の声が鮮明に蘇る。

「インターハイに彼の居る高校も出るみたいなので」
黒子君は一度そこで言葉を切り、僕を真っ直ぐな瞳で見つめながらその続きを告げる。
「なので、見に来ませんか?」
彼に躊躇いの色は無かった。まあ、彼のその言葉は何となく予想していたから驚きはしないけど。
僕は彼から視線を逸らし、小さく溜め息を吐く。
「…………――――」
仕方無く僕は立ち上がり、先程から一人でスリーポイントシュートの練習している火神の許へ歩み寄る。
「火神君。僕とゲームをしよう」
コート内に入って声を掛けると彼は振り返り、ボールを持ったままその手を止めた。
「……黒子君――――」
彼のも許へ行く途中、黒子君の方を振り向いて僕は静かに告げる。
「もし……火神君が僕から点を奪えたら、見に行くよ」