大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【色んなア.ニ.メ】駄作・雑多缶【R18 腐 NL有】 ( No.3 )
日時: 2017/05/22 20:40
名前: だらく ◆nI0A1IA1oU
参照: もともと生きるとは妥協することである 江戸川乱歩の名言より

福乱でケーキバース〜【ある日を境に】その1
 

 突然だけどケーキバースって知ってる?
嗚呼、そうだよね 実は僕もつい最近知ったんだ!
どうせなら食べる側になりたいね!甘くて美味しいなら尚更!だけど、どうやら僕は食べる側じゃないみたい......あ〜あ、つまんない、つまんないなあ......自分にとってすっごく美味しくて食べたいって匂いだけでなるぐらいなら食べてみたいのになあ、もう社長に頼もう!洋菓子が食べたいって!


ーーー

 此処は横浜にある探偵社、いつも通りの忙しい日々を過ごしている

 社長である福沢も一昔前まではほぼ毎日書類と格闘する未来なんて露ほど思ってはいなかったが、今では手馴れた手つきで捌き、選別し時おり他方への出張や面会等の通常業務を行っていた

 その日の福沢の仕事は各社の依頼や報告書等の書類を簡単に言ってしまうと纏めたり片付けたりすることだった

 所謂ディスクワークをしている際に(アニメ版では秘書)事務員の女性、春野がお茶と共におぼんで持ってきた和菓子を見て暫し沈黙する

「............」

「............」

 互いに無言だが事務員の春野の方を見れば微笑んだまま何も言わずに此方の発言を待っているようにも見え、春野から視線を外し社長室にある時計を見れば何時も休憩に入っている時間帯だった

「........頂こう」

一言だけ告げてから書類を机の端に纏めて和菓子とお茶が置けるスペースを空ける。その言葉に良しとしたのか「はい、どうぞ」とすぐさま空いたスペースに和菓子、お茶が置かれる

 和菓子は羊羹(ようかん)と落雁(らくがん)だ、羊羹は餡の甘さが強くこし餡のような舌触りがある。羊羮によってはつぶ餡状のものやよく潰されているこし餡状のものがあるがこれはつぶ餡状の羊羹で食感も楽しめるようになっている

.........この和菓子はどう見ても乱歩が好きそうな甘いものだ、幸いにもこの和菓子はあの善哉(ぜんざい)の意味をなさない事態(こと)にはならないはずだ

..............持って来られた和菓子は突っぱねても仕方ないが、菓子問わず食べ物に関しては勘が働く誰よりも頭を使う乱歩には必要とさえ感じる

 だからこそ、乱歩の食事に関しては黙秘している。菓子ばかり食うなと叱ることが出来ない、一昔に云ったことがあるが言ったら言ったで一週間以上も一切菓子類を食べることも見ることさえしなかった、それにあるのなら尚更だ

 福沢は和菓子を出されるとついついあの日、乱歩との出会いを思い出す、最近菓子好きが定着している乱歩。自らも好きだと公言するが無意識に甘いもの=糖分、ブドウ糖となっていると乱歩を見ていて感じる

 福沢は、まだ手をつけずに和菓子を見て数秒で考える、和菓子から目を放して春野の方を見てから

「.......春野、この和菓子を乱歩にも取って置いてやってくれ」


 そんな言葉に春野は何故か生暖かい眼差しを福沢に向けてから「分かりました」と告げて社長室を後にした

 仕事の合間の甘味は疲れた体には効くので乱歩でなくてもこの差し入れは嬉しいことで早速頂くことにする

 落雁か羊羹からか一瞬だけ迷ったが甘さが弱いと思う羊羹の方を最初に食べることにした、甘さが強い方を最初に頂くと他の甘さが消えるからだ、茶を飲めば良いことだったが乱歩と時たまに甘味処に行くのでその時の乱歩の気分にも寄るがたまに自分が注文した和菓子や洋菓子と同じものにすることがあり、そうなると乱歩は自分の食べる仕草を何から最初に食べるかも真似してくるのでつい、乱歩の味覚に合わせて自分も茶を飲むのを忘れ、なるべく他から見られても決して行儀悪くはない食べ方をするようにしていたため、乱歩が居ないのにも関わらず知らず知らずのうちに考えを巡らすようになっていた

 羊羹を黒文字で端から一口分だけ切り分けてから一口分の羊羹を黒文字を挿して流れるような動作で口の中に運び入れた

 福沢は、そこであることに気づき思わず口を閉ざしたまま、「ん?」と顔を顰めて黒文字を皿に置いて、じっと和菓子を見る

 見る限り普通の和菓子で食感もあったはあったが肝心な甘さが全くないことに福沢は気付くと同時にこれでは、乱歩に取っておいても意味がな......いや、私が甘さを感じなくなったのか?と思い、どちらにしても不味いことには変わりないと今度は落雁を懐紙に挟んで口の中に放る

 残りの落雁も食べてみたがやはり甘さがなかったが茶は渋く相変わらず入れ方が上手いなと思うも甘さだけが感じないようでどうやら味覚に異常があることが分かった

 とりあえず乱歩に取っておいても大丈夫なことは分かり、安堵するようなため息が零れるが昨日までは確かに甘さが感じられていたためにこの異常の原因を考えて思い付いたのはストレスだった......ストレスか、最近は仕事詰めで乱歩にも春野以外の社員に会っていないからかそれとも......猫を見ることも猫と触れることもなかったからだろうかと思い、味がしない残りの羊羹を食してから

「......少し詰めすぎたようだな.....気分転換をしに行き、それから社員たちや社の様子を見る、か」


〜〜続く

※黒文字(くろもんじ)........和菓子に使われている楊枝(ようじ)のことを指している

Re: 【色んな版.権.福乱執筆中】駄作・雑多缶【R18 腐】 ( No.4 )
日時: 2017/08/06 00:09
名前: だらく ◆nI0A1IA1oU
参照: 自由と我が儘の違いは他人を妨げるかどうかである。 福沢諭吉の名言より

福乱でケーキバース〜【ある日を境に】その2

 ケーキバースとは、とある外国発祥(とっくにはっしょう)、その多くが精神的なストレスによるものの後者と生まれながら甘さのみが感じられない人の前者がある......所で何故、私が説明をしなくてはいけない.....ん?乱歩が知りたがっている?誰が乱歩に言った......?教えないと言うのならば私が社の一人一人に問いただすとしよう
春野、今すぐ洋菓子を手配し乱歩にやってくれ、私は出る...一人一人軽く締めに行くだけだ、すぐに戻る

ーー

 同時刻、探偵社内では変わりない職務を皆が皆、業務に勤しんでいる
二人を除いては通常通りと云っても良いほど変わらない日常風景がそこにはあった

 通常通りじゃない二人のうち、一人は朝から疲れきったようにぐでーと机に突っ伏し気だるそうにふとしたら直ぐにでも眠りに落ちてしまうほど疲弊していた

 その者は自分で適当に切ったような不揃いの短髪に睫(まつげ)の長い切れ長の開眼していたら吊り目になるが今は糸目がちの眼(まなこ)に、やや幼い顔立ちをしている彼は江戸川乱歩、先程社長の福沢が和菓子を乱歩に取っておくように春野に告げるほど社長が一番に気に掛けている本人だ

 乱歩は頬を冷たい机に押し付けたまま、徐(おもむろ)に口を開けると


「あ〜......何かもう疲れた......一部の人の視線が僕に集中してるとか......僕が名探偵として有名になるのは一向に構わないんだけど、何かそれとは違う気がするんだよねえ......敦(あつし)、これどう思う?」

 不満そうに唇を尖らせながらもやや斜め横に居る少年に、何の前触れもなく聞く乱歩からしてみれば何となくでただ自分の近くに居たのが、敦と呼んだ少年だった。それだけのことでこの質問に意図や深い意味は何もなかった

 だが、聞かれた敦は朝から乱歩と同じか乱歩以上に疲弊している中、ぼーーっとした頭で、乱歩の不満そうな声を言葉を耳にして、僕と似たような目にあってるなあなんて思いながらも立ち聞きのようなことをしていたのもあって


「は、はいっ?!え、僕に振られてもと云うより........僕も実のところ、似たような目に合っていて、一部の人に獰猛な目で見られてて......しまいには........だから、その体中が痛くて此処に来るのが......ってそうじゃなくて!えっと、すみません、乱歩さんのお役に立てなくて......正直なところ...僕が知りたいなあ、なんて....あははっ」

 やけに上擦ったような声を上げて持っていた書類を驚きからか床にばらまいてしそうになるのを何とか持ち直して聞かれてもないことを混乱した頭でそう言うが、言っている内にやけっぱちになったのか乾いた笑みを浮かべて乱歩を見る


「....ふーん、昨日からか......まあ、お互い様...嗚呼、違うね!僕の方がマシだ!何たって僕はまだ被害を受けていない!あの目は君が言うように獰猛な眼差しで僕を見た時は本当に気持ち悪かったけど、それが____だったら全然気持ち悪くないし君のようにはならないからね!」

 聞いたのにも関わらず、どうでも良さそうに返すがちらりと開眼している目で敦を数秒見てから再び何時もの糸目になるとまた口を開き、最後の方肝心な部分は濁して何かを得心したようにつらつらと言い放ち、顔ごと敦の方を向ける


「ふへ!?え、あ、何もないですよ?!昨日は何もなかった、あんなことは....!と云うよりも思い出したくもないです、昨日のこと全て!.......嗚呼、そうですね、乱歩さんの方が被害受けていない時点で大分マシですよ.....僕なんか身も心もずたぼろにされた思い....ですからね、嗚呼、忘れたい....」

 あわあわと何かを得心したような言い方をする乱歩に片手に書類を持ってから手を前に出して、身ぶり手振りしながら否定して何とか確信させないようにするも被害を受けてないと云う言葉に隠しきれず、そんなことを愚痴のように溢しよっぽど忘れたいのか頭を抱えるようにして項垂れた


「あ〜あ、君もう僕に答えを言っているようなもんだよ?そう云うのをこの僕に隠したいなら冷静にか頭を空(から)にして受け答えしなきゃ...嗚呼けど、そんなにひどい目にあったんなら与謝野(よさの)さんの治療が必要になるね、内側が色々痛いんでしょ?....僕が呼んでこようか、直ぐに来ると思うよ?」

 項垂れた敦を開眼していない眼で見て、しょうがないなあと云うようなニュアンスで言っていれば、ふと敦に近寄る女性に気付いてそれを含めた上で敦にそう聞く


「うう、以後気を付けます!そ、それは、そうなんですけど!!で、出来れば遠慮し....っ」

 自分の言ったこと後悔したように言っている途中で敦の肩に後ろからぽすんと手を置かれて、肩に置かれた手を見て明らかに男性じゃない女性の手に敦は血の気がなくなるような感覚を覚えながらも恐る恐る後ろを振り向く

 乱歩が名を口にしていた与謝野女史だった、乱歩は此方に来る与謝野さんにも聞こえるようにまた敦の反応を見るためだけに言っていたのだ

 彼女は与謝野晶子(あきこ)という名で、探偵社専属の医師。三度の飯より手術や解体を好んでいるが故に敵よりも寧ろ身内から恐れられている

 そんな与謝野女医(せんせい)が敦が向いた途端に、にやりと笑みを浮かべて


「へえ....敦、怪我しているって?見たところ外傷はないようだけど、乱歩さんが言うなら内部の方だねえ、遠慮しないで良いからねえ、敦?大人しく妾(アタシ)の治療を受けな」

 そう言う与謝野女医は、心配から言っている訳じゃなくただ解剖と手術が出来るこの好機を逃さないと云わんばかりに笑いながら威圧をかけつつ、敦に肩に手を置いたまま問う


「あ......は、はい、お願いします......与謝野女医」

 さーーっと顔色を変え、青ざめた顔で消え入るような声で何とかそう言って、項垂れながらも与謝野女医に首根っこを捕まれて引き摺られる形で手術室に連れてかれる


「........、....」

 その光景を止めることなく開眼したつり目で二人が視界から外れるまでぼーーっと眺めてからゆっくり目を閉じて、ぽつりと


「........何か本当に疲れ、た....」


〜〜〜続く