大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 【カゲプロ】カノシンばっかり【シンタロー総受け】 ( No.221 )
- 日時: 2019/05/26 22:45
- 名前: デイズ
side : シンタロー
陽炎学園にはちょっとした伝統がある。その1つが朝の黙想だ。10分間目を閉じ、自分を見直す時間(とか謳ってはいるが、健全な男子の頭にはエロいこととかゲームにしか脳にないだろう。)なのである。
入学してきた1年生には、生徒会のメンバーがそれぞれ教えることになっている。会長、副会長2人、書記2人の5名で1年1組から5組までくじで振り分けた結果、オレは3組になった。
開始10分前に着いて説明するように言われていたが、もう既に5分前だ。急いで、3組まで行きガラリと開ける。
ざわざわと騒がしかった教室は一瞬しん、と静まり返り、またざわざわと少しずつ波を大きくしていった。
謎の人物登場で眉をひそめる者、指を指しニヤける者、ポカンとする者。オレはそれを一瞥すると、さっさと教壇に立つ。
「おはようございます。」
挨拶をすると、何人かの小さな怪訝な声が返ってきた。チラリと横の時計に目をやると黙想の時間まであと2分もない。
オレはサッと目を通し、全員いることを確認してから口を開いた。
「オレは、副会長の2年如月伸太郎です。」
オレがそれを言うと姿勢が崩れているものはすぐさま正し、まだざわついていた教室が静かになった。
多分、オレが副会長だからか、先輩だからか、あるいはその両方だろう。
とにかく、そんなことには構ってられないから黙想の簡単な説明をする。
大まかにわかりやすく、そして時間内に終わらせるよう早口で言ったから、かなり支離滅裂としていただろう。
でも、理解が出来たかと問うとみな頷いてくれたので安心した。
『黙想始め』
雑音混じりの声がスピーカーから流れる。拙い動きでなんとか身なりや姿勢を正し、1分も無いうちに全員が黙想を開始できた。
オレは軽く周りを見渡して、特に気になるとこもないので、強ばっていた体をほぐすためゆっくりと肩を回した。
そんなことをしていたら、向こうの方からおずおずという感じに手が挙がった。
窓側から2列目の後ろから2番目の席だ。オレは急いで向かった。
青ざめた顔で手を挙げるこの子。大分参ってるみたいだ。片方の手で口元を覆い、挙げる手ですら小刻みに震えている。
とにかく、介抱してやらなければ。オレは近くにしゃがんで、大丈夫か、と声をかけた。
その子はオレが声をかけるとゆっくりと手をさげ、目を開けてこちらを見た。
綺麗な子だと思った。
鈍い色味の金髪、猫目で切れ長だがどこか幼げな目元、指も細くて形も綺麗だ。手で鼻と口も隠れてるけど、絶対イケメンなんだろうな。
まあ、そんなことは今関係ないので、大丈夫か?ともう1度声をかけ、背中をさすってやった。
「.......吐きそうです。」
消え入りそうな声で確かにそう言った。
声も、綺麗なイケメンボイス所謂イケボだ。オレの耳に心地好く響いた。
イケメンは、何もかも完璧なんだな。
圧倒されてるのもなんか癪で、心の中でよく分からない嫌味を吐いた。
そんなことしてても意味は無いけども。
「大丈夫か、トイレに行こうか」
「はい.......」
「肩貸してやるから、行くぞ。」
「はい、すみません.......。」
チラリと机の上に貼ってある名前を見る。
「鹿野修哉」.......、かのしゅうやって呼ぶんだろう。よし、覚えておこう。
オレは鹿野の片方の手を自分の肩に回して、ゆっくりと立ち上がった。
鹿野は運が良かったのかもしれない。鹿野がいる3組は1番トイレが近いやんクラスなので、そこまで遠くはない。
しかし、気分が悪い時と普通の時では歩く速度が違うから、かなりのスローペースでトイレまで行った。
最初は普通トイレにしようと思ったけど、もしもトイレの中以外に吐いた時にほかの男子が入れなくなるから、多目的トイレに入った。
こっちなら広いし、もしも吐いて入れなくなってもさほど変わらないだろう。
オレ達は多目的トイレに入り、鹿野をトイレの前にもたれかからせるように座らせた。
すると、「先輩.......」と震える声で鹿野が呼んだ。
「どうした?」
「鍵.......鍵、閉めてくれませんか?」
「鍵?分かった、閉めればいいんだな。」
「すみません.......。」
言われた通りに扉の前に来たが、今更ながらなんで鍵を閉めるんだろうと思った。
まあ、多分、黙想を過ぎてもまだ吐いてる時に他の子が入ってこないようだろう。
オレはゆっくりと鍵を閉めた。
カチャリ、鍵がかかる音が重く鈍く聞こえた。
その途端、右腕を後ろに引っ張られる、振り返る間もないままオレは便座に座らされた。
いや、正直投げつけられたって言った方が正解なくらい乱雑な座らせ方だった。痛む尻を擦りながら、上の人物を睨む。
オレに軽く多いかぶさるように笑っている、さっきまで気分が悪そうだった子。そう、鹿野だ。
こいつは所謂、壁ドンと言うやつで俺をホールドしている。
両手でしているからまず、逃げれない。
せめてもの抵抗で睨みつけているのだ。
「先輩、睨んでも煽るだけですよ。」
そう言って、軽くオレの顎を撫でた。
サーッと体が冷えた。
待って、オレって結構ヤバくないか。てか、こいつその気があるのか。
ゾワっと鳥肌が全身に駆け巡った。
「ねぇ、先輩。」
「うっ、うるせぇ!」
ちょっと驚きで目を見開く鹿野。もちろん大声だと周りに聞こえるから、小声で。あんまりこういうことは、公にするとめんどくさい。
しかし、オレの抵抗も虚しく、カノは可笑しそうにクスリと笑った。
「なっ、何が可笑しい?!」
「いや、だって如月先輩面白いんだもん。」
クックックと声を潜めて笑う姿に、怒りがふつふつと湧いてきた。
「笑うんじゃねぇよ。」
結構ドスを効かせたつもりだけど、あんまり効果はなかったみたいだ。
「ねぇ、如月先輩..............ん〜、なんか違う。」
何かを言いかけたみたいだが、なんだか腑に落ちない様子で言うのをやめた。
「如月.......キサラギ、伸太郎.......シンタロウ、シンタロー.......先輩、君.......うーん.......。」
なんか、よく分からないが、自分の名前が何故か連呼されている。
まあ、よくわからん奴に自分の名前を連呼されているのは、気持ち悪いもの以外のなんでもなくて。やめて欲しくて、また口を開く。
「おい、お前いい加減に.......」
「よし、決めた!!.......ねえ、シンタロー君?」
言葉を遮られた上に、勝手に呼び名を決められた。なんだ、このズケズケとした態度は。ただただイライラする。
「先輩をそんな、呼び方するんじゃ.......」
「僕さ、不良だからさ〜正直ダルいの。この時間。」
「は?」
「だからさ、いつもこんな感じでサボるね〜」
「はぁ?!」
こいつ、人の話聞かないで自分の事ばっかりだな。ほんと、頭がイカレてるのか。よく、こんなんでこの学校に受かったな。
と、悪態を吐いてみるが、さっきの体調不良の時も嘘と見分けがつかなかった。多分、騙すことが上手なんだろう。って、何納得してんのか。
とにかく、こいつをさっさと教室に戻さなければ。そうすれば、事は穏便に解決するんだ。
オレは腕力じゃどうしても勝てないので、話術ではめてみることにした。
「お前、そんな事してると、指導だけじゃ収まんないぞ?」
「え、別にいいですよ?」
「下手したら停学、もしくは退学だって.......」
「今までもそんなことあったんで、今更ですけど〜」
くっそ、こいつ変にスキル高いな。
ちょっと手強い。
そんな間も逃げる隙を伺うが、さっきから両手をどかそうとはしない。
ああ、もう。早くしなきゃ.......。
「お、お前がよくても家族とか.......」
「ちょっと、うるさいですよ。」
なんだか少しイラついた声で返してきた。
お、これはいい線行ったんじゃねぇか?よし、このまま.......っ!
───チュッ
少し口を開いたら、不意にこんな音が聞こえた。
目の前には、鹿野の瞼と、不揃いな前髪が見える。肌に柔らかい髪が当たって、少しくすぐったい。
待て、オレ今何されてる?
分かってはいるけど、理解に頭が追いついていない。グルグルと頭が回って、ただただ混乱するばかり。
だが、鹿野が緩く開いたオレの口の中に舌を入れてきたら、流石にゾワっとしたから、思い切り突き飛ばした。
鹿野の顔が少し遠ざかったが、あの力でもまだ両手はついたまま。こいつ、結構慣れてるんだな.......。
オレは気持ち悪くて、ゴシゴシと袖で唇を擦る。
「あー、なんで拭いちゃうの。」
「だって、.......オ、オレの.......オレの.......」
ファーストキスが奪われたと声に出す前に涙として溢れた。恥ずかしいのもあったけど、なんとなく悔しかった。
そんな、様子を見て少し固まる鹿野。
「もしかして.......ファーストキス?」
だったらなんだ。と言いたくても、嗚咽で声が掻き消された。なんで、泣くんだよ.......オレ。
「えっ、えっ。超嬉しい。僕も、今のがファーストキスなんだよ?お揃いじゃん、やった〜!」
なんだか1人盛り上がってる鹿野。お前もファーストキス?
そういう割にはかなり手慣れてたんじゃねぇか。絶対嘘だ。
「ね、もっかいしよ。」
そう言って、頬に伝う涙を舐め取られた。思わず首を竦めると、かわいい.......という呟きが聞こえた。
「次は逃げないでね。」
オレの顎をクイッと上に向けるとまた口付けを開始した。
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