大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: シンタロー総受け【カノシン・R18多め】 ( No.71 )
日時: 2017/12/19 05:30
名前: デイズ

Said : カノ

「花、吐き、病……?」
「ええ、そうです。」

医師が先程いった言葉を繰り返すと、こくこくと頷きながら言う中年の男。シンタロー君を診察してくれた、医師は特にこれといった特徴はないが、頭皮は薄くなっている。

その医師は目を見開いたまま、続ける。

「我々としても、信じられません。これは、奇病というもので、世界にあんまり例がありません。」
「ち、治療法は…ないんですか?」

キドがそう訊ねる。医師の男は暫く、顎に手を当て考えていたが、静かに首を横に降った。

「ないですね。」

静かにそう告げる医師。
僕はガクンっと体の力が抜け、前のめりに傾く。

しかし…、という医師の声が耳に届いた。

「今、分かっていることなら…多数あります。」

そう言った、医師の口から告げられたこと。
医師も自分の目で見るのは初めてなのか、焦っていたのか、とにかく説明が長かったのでまとめると

・花吐き病を発症すると、吐くときに暫く血を伴う。回数を繰り返すごとに段々と出なくなっていく。
・花を吐くときは必ず、悲しいと感情が生まれたとき。
・吐くときには耐え難い嫌悪と吐き気に見回れる。
・死ぬことはない。
・身体的より精神的にくる病。
・鬱病になりやすい。
・心のケアによって吐かなくなる。
・一生治ることはない。

ということだった。
死なないことに安堵した僕らだが、一生治らないということにまた絶望した。

「患者の悲しみの元を探さないと、これからも吐き続けます。確かに、この病気が致命傷になって死ぬことはないです。しかし、鬱病になった方で、自殺してしまった例も数件ほどあります。」

"死"という単語にみんな背筋を伸ばす。
医師は真剣な表情を崩さないまま、話を続ける。

「早めに患者の悲しみを探し出すことを、おすすめします。」

そのあと僕らは、詳しい説明が終わったあと、シンタロー君のいる病室を教えて貰った。
病室は、不幸にも"37号室"…。
シンタロー君と僕の団員ナンバーだ。

僕らは、廊下に出て目の前のソファに座る。
みんな、起きたことがいまいち信じられない。シンタロー君が病気にかかり、一生治らなくて、自殺するかもしれない…。
そして、花吐き病の根本的な原因は"悲しみ"。

きっとそれが、僕のせいだというのは薄々…というか、すぐに分かった。
最近、シンタロー君を妙に意識してしまい、人前でも抱きつきたくなる衝動にかられる。シンタロー君は、人前での行為を少し嫌う。
だから、我慢しているのだ。
ちょっとした行動でもキュンキュンするし、理性が効かなくなってしまうときだってある。
でも、だからといってそんなに避ける必要はなかった筈だ。

買い出しのペアだって、僕はシンタロー君で嬉しかった。
でも、さっきみたいなことが起こるから、キドと交代しようと思ったのだ
男子なら嫉妬するけど、女子なら多少は許せる。

でも、それがどんだけシンタロー君を傷つけただろう?
気づかなかった僕はバカだ。
今すぐにシンタロー君に会って、謝って、いつも通り過ごしてあげたい。
前したみたいに、手を繋ぎたい、抱き締めたい、笑いあいたい。

それなら、今すぐの方がいい。
今すぐ、シンタロー君の笑う顔がみたい。


シンタロー君の病室に向かおうと、腰をあげる。

「…カノさん…っ!」

キサラギちゃんの呼び止める声が聞こえ、僕は足を止める。
キサラギちゃんはゆっくりと僕に近づくと、スッと手をあげた。


―パシンッ


頬に籠る熱と痛み。僕は驚きで、目の前のキサラギちゃんを見つめる。
キサラギちゃんの目は赤く腫れ、落ちそうなぐらい涙が溜まっている。その目に映るのは、怒りと疑い。

「お兄ちゃんに…なにしたんですか?…分かってますよね?」

そう問うキサラギちゃん。
分かりすぎていることに、後ろ目を感じ目をそらす。

「お兄ちゃんに…今後一切、近づかないでください。…カノさんは、お兄ちゃんのこと…分かってないから。嫌いです、大嫌いです。」

キサラギちゃんの気持ちが痛いほどに突き刺さる。
分かってたけど目をそらした僕は、反論する権利すらない。

ただ、黙っているしかないんだ。

「もう…お兄ちゃんと別れてください。…恋人失格ですよ。」

"別れ"という単語…もう、こんなにも近くに迫ってしまっていた。


キサラギちゃんはいうだけいうと、僕を軽く睨んでからシンタロー君の病室へとむかった。
キドとセトが僕の背中を擦り、「今日はもう帰ろう」と静かに言った。

僕はそれに同意すると、2人に支えられるようにして病院を後にした。



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