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Said :　シンタロー　

鼻から突き抜けるような鉄の臭い、酷い嫌悪感と吐き気。
そして、パラパラと口から溢れる花びら。

なんにも問題ないって言われたけど、この花が何なのか…分からないから怖い。
だからもっと不安になる。もっと吐いてしまう。
なれれば、血を吐かなくなるって言ってたけど、それは一体いつ？
どのぐらい、血を吐けばなおるの？

その自答に返ってくる答えはないだろう。
奇病だから。

滲む視界のなか、たまたま窓の方に目を向けた。

「……っ！」

そこにいたのは、外から病室を見上げているカノ。
来てはいたんだな…。それだけで、嬉しく感じる。

早く…早く…俺のところに来てくれ…っ！
でも、その願い空しく、カノはそっぽを向いて歩いていってしまった。

…寂しい。
…くるしい。
…辛い。

……悲しい。


より一層吐き気が倍増し、また吐く。
びちゃびちゃと床までも深紅に染めてしまった。





Said :　コノハ

ヒビヤと一緒に猫と遊んでいると、たまたまカノと会った。
なんだか、何時ものカノと違う。しょんぼりしてて、元気がなさそう。
どうしたんだろう？

あ、そう言えば…シンタローの所行くって言ってたっけ？
じゃあ、何でここにいるんだろう？

「あれ？…カノ、シンタローの所…行ってないの？」
「あぁ……。行きたくても、行けないんだよ。イクジナシだから。」

とっても苦しそうな、悲しそうな顔になってカノは言う。
イクジナシ…ってなんだろう？
でも、いい意味ではなさそうだなぁ。

「カノ…」
「ん〜？」
「イクジナシ…ってなに？」
「え〜とね、弱虫…ってことかな？」

イクジナシは弱虫と同じ意味。
そうなんだ。

カノが弱虫だから、シンタローに会えないんだ。
でも……なんで？
シンタロー、毎日毎日カノのこと、カッコいいって強いって言ってたのに。
なんで、カノは弱虫だっていうんだろう？

「でも…、シンタローは…毎日、カッコいいとか強いって…言ってるよ？」
「……っ！」

カノの顔が、泣きそうな顔になる。
僕……なんか、まずいことしちゃったのかな…？

「それでも…、出来ないもんは出来ないんだよ…っ！」

カノは泣きそうな声で、そう叫ぶとどこかに走り去ってしまった。
僕……、泣かせちゃった。
謝りにいかなきゃ……。

飛んで追いかけようとした僕の袖を、誰かが引っ張った。
後ろを見ると、ヒビヤが止めている。

「いいんだよ。放っとけば。」
「でも…、僕……カノを泣かしちゃった。」
「泣かしたからって、全部が全部悪いわけじゃないんだよ。」
「そうなんだ…」

なら、僕のやったことは悪いことじゃないのかな？
じゃあ、大丈夫。
ヒビヤが、言うんだもん。きっと、大丈夫。

「ヒビヤ、猫で遊ぼ？」
「うん。いいよ。」

僕はまた、ヒビヤと一緒に猫と遊び始めた。



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