大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 コメ、リク募集中! ( No.38 )
- 日時: 2018/06/09 09:11
- 名前: 皇 翡翠
青から赤へ 酔いで転んで
あれから直ぐに事件は解決に追い込まれた。
乱歩と太宰は特に最後まで見届ける事無く、すっかり日が沈む小田原を後にする事にした。
「あ、見てみて!駅弁だよ。僕もうすっかりお腹すいちゃったよ!あ、あとお茶も欲しいかも!」
乱歩は隣に並んでいる太宰に向かって云った。買って来い、と遠回しに云っている。なぜなら、彼は財布を所持していないからだ。乱歩は眼鏡のみを所持して出かけてきた為、金銭面に関しては太宰を頼るしかなかった。
ここで太宰も彼に我慢を強いる人間では無い為、直ぐに彼の要望に応えるべく品を購入して電車に乗る。乱歩の注文の品を間違える事無く購入。
このまま乗って行き、横浜へと帰る。
「………」
電車に乗ってから乱歩は直ぐに弁当を開いて腹に入れていく。一粒一粒米を残さずに。よほどお腹が空いていたのだろう。
「……乱歩さん、よろしければこちらも如何ですか?」
そして太宰はすっと袋を一つ渡してあげる。
「…何これ」
乱歩は不思議そうにその包みを眺めるも、太宰から開けるように促されてその中身の正体を目に入れると、それは太宰が購入していた茶菓子であった。
「お疲れだろうと思って、乱歩さんに買っておいたんです」
乱歩はその品を見て純粋に糖分を欲していた為、とても輝いていた。
「太宰は本当に気が利いているんだよね。如何して……」
如何して、と云いかけてはみたものの、乱歩はそこで口を止めてしまう。
「それじゃあ、私は少し仮眠させてもらいますので、横浜に着いたら教えてください」
太宰はそう言うや直ぐに目を閉じて背凭れに身体を預けてしまった。
乱歩はその彼の姿を見て、云いかけてた言葉の先を口に出さなくて良かったのだ、と思った。―――如何してそんなに気が利くのか。そんなことを太宰に訊いたところでそれは互いに首を絞めるだけなのだから。
「………何も変わらない」
空はすっかり青黒く変わっていた。
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 コメ、リク募集中! ( No.39 )
- 日時: 2018/09/30 16:27
- 名前: 皇 翡翠
「あ、家に帰れないや」
横浜に着くと同時に乱歩はそう云った。
「…え、如何したんですか」
「家の鍵を探偵社内に置いてきているんだよ。すっかり鍵の存在を忘れていた。
もうとっくに社内には誰も居ないだろうから取りに行くことも出来ないから……社長の家にでも行こうかな…」
乱歩は焦るよりも次にどう行動すべきかということに直ぐ切り替えていた。
一方太宰は社長と云う単語を訊いて直ぐに反応をした。
「だったら、私の家にでも来たらどうですか?社長だって突然来られたら困るでしょうし。殺風景な家ではありますが、よろしければ」
「…いいの?」
「いいですよ」
いいの、この問いかけは一体誰にしたのだろう。
乱歩は自分の口の中で了承するか否かで悩んでいた。そのまま太宰の家に邪魔をするか。何か別の策に逃げるか。しかし、今此処で逃げてしまえば「変わらない」と決めた二人の間を変えてしまうのではないか。そう乱歩は考える。
意識しているのは単純に自分だけなのではないか。
読みにくい男の考えなど目を見ただけで判断が出来ない乱歩はこう答える。
「じゃあ、よろしく」
ただ社の後輩の家に一泊お邪魔するだけのことなのだから、そう云い聞かせて自分の中で暴れていた何かを直ぐに冷静に戻す。
太宰は少しだけ昂揚していた。「変わらない」という約束を作っておきながら、何かが変わるのではないかと期待している。自分で編み出しておきながら矛盾しているこの気持ちを隠す気は無いけれども、それでも乱歩に気づかれぬように丁重に家へと案内する。
「……本当に殺風景だねえ。何か面白いものでもあるのではないかと楽しみにしていたんだけれども、太宰は本当に粗を見せないねぇ」
そして太宰の家に招待された彼は先ず第一声にこの言葉を放った。一度足を踏み入れてしまえばそれからは遠慮というものを知らないかのようにずかずかと奥へ歩いていく。
「適当に座っていてください」
うたい文句も彼には効かない。口に出す前に彼は暴れているのだから。一度座ったものの、直ぐに立ち上がって何か無いのか、と探り歩く。
「……うわぁ、お酒ばっかり」
冷蔵庫を開けてみると、生活感の欠片も見当たらない。酒と水だけが揃えられているこの冷蔵庫から乱歩は二つ取り出す。
「疲れた時にはお酒が善いんだよ」
「……厭な酔い方はしないでくださいよ」
太宰は苦笑しながらも、既に開けられていた缶ビールを片手で持つ。
「かんぱい!」
乱歩の合図と共に一口、喉に通していく。少しの遠出の疲れを癒すように冷たい飲み物は直ぐに体内へと入っていく。
太宰の缶は早くも半分に減っており、酔いの周りをそろそろ気を付け始める。
太宰は別に酒が弱い訳では無い。悪酔いはしない。緊張の糸を常に張っている仕事をこなしていた所為か、彼の身体はそれが染みついて酔うことが出来ないでいるのだ。
一方で乱歩は少しだけ酒を注入しただけで赤く頬を染めていた。普段あまり酒を好んで飲まない彼の酔い方に太宰は少し警戒していた。飲み姿すら初めてみるのだ。
「…乱歩さんはお酒、強いんですか」
「んん、どうだろう」
既に呂律が怪しくなっている様子を曝け出している。
太宰は直ぐにこの男は酒が得意では無いのだと理解する。
彼にも注意を払っておこうと目を光らせる。
「もっと小田原でのんびりしてみたかったなぁ。こんなことなら小田原で一泊してもよかったよねぇ」
「明日も仕事があるんでしょう」
「今日は今日。明日は明日だよ。そんなことを一々考えていたら疲れちゃうでしょう」
乱歩は一気に残りの酒を含む。最後には空になったかどうか缶の中身を覗いて確認する。
「ちょっと乱歩さん…あんまり飲み過ぎないでくださいね」
「…なんで」
「なんでって…ほら、乱歩さん今日は疲れているでしょう。疲れていると酔いも回りやすいですし」
すっかり酪酊している彼の姿を見て、太宰は水を用意してあげる。暫く水と睨み合いをする乱歩は文句を云いながらも、一口水を喉に通す。そして乱歩は立ち上がろうとすると、足元が覚束無かった為、体勢を崩してしまう。
「大丈夫ですか?」
「…うーん、だいじょうぶだいじょうぶ」
「その様子だと大丈夫では無いですね」
身体には異常は無い。体勢を崩したところで直ぐに太宰が彼を受け止めたので大事には至らなかったのだ。
乱歩はぼーっとした目を太宰に向けて距離を詰めていく。
まるで石にされてしまった様だった。
太宰は乱歩に見つめられて、そこから動けなかった。
「ちょっと…」
そこで急いで太宰が身体を引けば少しは展開が変わったのかもしれない。それが好い方か悪い方かは判らないが、それは後の祭りというものだ。
「―――え?」
顔の距離が少しずつ近づいて行き、鼻息が伝わるところまで来た。そして―――キスをした。
乱歩が顔を近づけて唇をくっ付ける。押し付ける様にされた可愛らしい口づけ。それから太宰にまで熱が移る。
「………んっ」
ネジが飛んだ。太宰はそのまま乱歩の後頭部を押さえると、唇を開けて舌を絡ませていく。
これが後の祭りとなるのか。
今判ることは、乱歩のアルコールの味が流れ込んできたことだけだった。