大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.48 )
日時: 2019/07/24 22:24
名前: 皇 翡翠

 18歳の二人でどこに生きるかについての見解の相違って感じのしめっぽい太中

■In the light
「夜の匂いがする」と酔っ払いは言った。
日本酒を三杯ほど飲ませた後のことだった。酒精で顔を真っ赤にさせ、とろんとさせた目でじぃっと見つめて言ったのだ。ヘーゼルの瞳は溶けたチョコレートのようにどろりとしている。

「手前から、いッつも、夜の匂いがする」
「なんだい、それ。詩人にもなったつもりかい?
 それとも私から血やら埃やらの匂いがするって意味?」

太宰はつまらない戯言だと鼻を鳴らして酔っ払いをあしらった。
しかし中原はふるふると頭を緩慢に振って「そうじゃない」と目を伏せた。

「手前からは夜の匂いがするのに。夜の生き物みてえなのに。本質は昼の生き物なんだぜ」
「はあ?」
「手前はきっと俺とは違うんだろうさ」

太宰はきょとんとして、それから無性に苛々として中原の帽子を奪い去った。なにするんだ、と怒ることを期待して。
だが実際は太宰を一瞥すると嘲笑うように口の端をちょっと上げただけだった。

その時、太宰は心臓にびゅうびゅうと風が吹くのを感じた。そして友人に会いたくなった。織田と他愛もない無駄話をして、坂口をからかって、酒を飲むのだ。
自分に何かを求めて、そして失望する彼ではなく、友人と時間を過ごしたくなった。

「………店に迷惑かけないでよね」
そう言って中原の肩を支えて立ち上がる。
だって、ここの店は織田作や安吾と来るもの。中也のせいで出禁になったら困るし馬鹿らしい。
太宰はそう言い訳のように呟いた。

中原はいつの頃か極端に日のあがる時間に外出する事を嫌うようになった。冷たい夜の月の光を好み、任務で外を歩くときは太陽の光を避けるのだ。
太宰がどんなに彼を煽って賭けに持ち込んでゲームセンターに連れ出そうとしても尽く失敗した。

理由は解っている。
彼の出自だ。

「太陽の光は毒だ」と彼は繰り返し口にした。
まるで彼の上司であり師である尾崎のようだった。彼女もまた太陽の光を忌み嫌うかのような言動を繰り返す女性だった。

最初は彼女の影響なのだと思った。だって彼はとても単純で素直な性格の少年だったから。
尊敬する女性の言うことをそのまま信じてしまうに違いないと思った。

けれど違ったのだ。彼は彼なりに自身の出自と向き合って、そして結論づけたのだ。
中原中也は決して昼の世界に生きることのできない生き物なのだ、と。

馬鹿らしいと思う。
心底、中原中也は馬鹿だと呆れ返った。

太宰は酔いつぶれた中原をタクシーに乗せ彼の住むマンションへと走らせた。
隣でぐうすかと眠る中原の頭をそっと自身に寄せた。

ふんわりと、お日様の匂いがした気がした。
きっとこれが月の匂いなのだと思った。