大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.54 )
- 日時: 2018/09/16 18:30
- 名前: 皇 翡翠
マフィア時代、任務帰りの車の中でちゅっちゅする二人で太→ ( ← )中な感じの甘めの太中
■悪あがきとキス
キスをするのが好きだった。
今のような疲れ切った時は特に。
興奮冷めやらぬ、けれど休息を欲する襤褸雑巾のような身体は、妙に人肌恋しくなってしまい(恐らく太宰―――あの糞ッたれの刷り込みに違いない)奴の部下が走らせる車の中で、ちょん、と包帯だらけの奴の指をつつく。
それが合図で、キスをする。
互いに目も合わせずに、触れるだけのキスを繰り返し、時折、ちゅ、と唇に吸い付く。小鳥のようなキスだ。
けれど、ちゅぱちゅぱと音を立てて互いの咥内を荒らすのはどうにも好きになれない。「んッ」と甘い声を漏らしてしまうのも、じんじんと身体の奥から痺れるような快感に酔わされるのも、そんな自分を見た奴が嬉しそうに笑みをこぼすのも、興奮した奴が瞳に宿した炎も、大嫌いだった。
それなのに奴は徐々にキスを深いものに変えて、息を奪い唾液を流し込みむりやり飲ませる。それを嫌がって首を振っても後頭部を押さえ込んで、唇を合わせる。こちらが嫌がろうがお構いなしだ。そればかりか逃げたことを咎めるように唇を甘噛みするしまつ。
舌と舌を絡められ吸い付かれ、口蓋を擽られ、思わず背を弓なりに反らしてしまう。
「ンッ、は……ぁ、あ…や、めろッ!」
どんと奴の薄い胸板を押すと、名残惜しそうに唇が離される。はあ、という吐息が唇にかかり、ふるりと身体が震えた。
「ねえ、興奮してる?」と奴が訊く。
「別に」とつっけんどんに言うが「興奮してるんだ」と愉快そうにするので脇腹を蹴り上げた。痛いという文句は聞いてやらない。だって、そっちが悪いのだから。
「照れてるの?」
「馬鹿言え」
「照れてるんだ」
「違ェよ」
下らないやり取りだ。
そう思うのに、甘い声だとか視線だとか、どちらのものかも分からない唾液で濡れた唇だとか、その奥に見える真ッ赤な舌だとか、その全てが熱になって身体を支配する。胸のあたりがそわそわとして思わず目をそらすが、これでは本当に照れているようで悔しくてたまらない。
あゝ、そうではなくて、もっと軽やかで生暖かいモノが欲しいのだ。明け方の微睡みのような、穏やかな、触れ合いが欲しいのだ。
「中也………ね、ね、中也ぁ……」
甘えたような声を出して太宰はすりすりと体を擦り寄せる。まるで猫のようだった。
「キス、したい。
………ね、君もキス、好きだろ?」
「………俺の言うことなんて、聞きやしねえ癖に」
すると、太宰はくすくすと笑って小声で言った。
「キスして下さいって、私にお強請りしてご覧よ。
そうしたら、キモチよくシてあげる」
カァッと顔が熱くなる。
次の瞬間、背中に衝撃。視界にはいけ好かない太宰の顔と天井。
「中也、私にキスして貰えて、嬉しいね?」
あゝ、くそ、これだからコイツは嫌いだ。
ぎゅうと目を瞑って俺は堪える。これから始まる奴からの嫌がらせが、ある種の刷り込みだと分かっているからだ。中原中也には太宰治が必要だという刷り込みだ。
たとえ、負け戦だとしても、抵抗をやめることはできない。
だって、それが俺だから。