大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.60 )
- 日時: 2019/07/25 13:31
- 名前: 皇 翡翠
合言葉は「にゃん」である/太乱
「乱歩さんは猫のようですね」
「は?」
とある昼下がりの探偵社。乱歩と太宰は会議室にこもっていた。
特に意味はなく、ただ「暇だから」という理由だけで、乱歩と太宰が会議室を占領するのはよくある事だ。武装探偵社の中でも飛び抜けた頭脳を持つ二人を理解できる奴は、少なくとも探偵社には存在しない。
僅かな情報だけで全ての真実をひと目で見抜く頭脳を持つ乱歩と、全てを達観した様に人を操る頭脳に長けている太宰。
似た者同士というべきか、人並み外れた二人の言動や行動はどこか他者には理解しがたく、まるで二人の周囲だけ異空間の様だった。故に、二人の世界を理解できるのも、二人にしか出来ない事であった。
そして本日も会議室にて、特にやる事もなく暇を弄んでいた中で、唐突に太宰に云われた言葉に乱歩が顔をしかめた。
「いきなり何」
「ですから、乱歩さんは猫に似ていますね、と」
太宰がくすくすと笑う。なんとなく気に触り、乱歩が眉を寄せた。太宰がペンを取り、ホワイトボードに何かを書き込んでいく。
「理由は幾つかありまして、まず一つは気まぐれである事。二つ、他の人の様に誰かに媚びる事をしない事。三つ、他者に簡単に心を許さず誰にも御せない事。四つ…」
次々と増えていく理由とやらに、乱歩はドーナツを咥えたままげんなりとした顔をした。太宰が何を言いたいかは、なんとなく察してはいるが、面倒くさい。一通り書き終えた太宰が、にっこりと人の良さそうな笑みを浮かべて、ですから、と乱歩に語りかける。
「以上の理由から、乱歩さんは猫によく似ているかと思われます」
「うん。で、それが何?」
「うふふ、なので…ちょっとしたお遊びだと思って、」
太宰がペンを机に置いた。それから、まるで今日の天気は晴れだと呟くように自然に、何もおかしな事はないんだという様に云った。
「鳴いてもらっていいですか?」
嫌な予感が的中した。
「ね、乱歩さん。お願いします」
「…それやって僕の利益は何?」
「特に何も。ですが、いいじゃないですか。可愛い後輩の我儘だと思って」
「僕は一度もお前を可愛い後輩だとは思った事ないよ」
ぐいぐいと距離を詰めてくる太宰に乱歩が椅子に座ったまま後退する。太宰はにこにこと笑ったままだ。
「では訂正を。可愛い恋人の為に、お願いします」
わざとらしく囁くように云われ、思わず舌打ちをしそうになる。
似た者同士、惹かれあう何かがあったのか、乱歩と太宰は恋仲であった。それは確かだ。ただ、それに至るまでの経緯は曖昧で、正直覚えていないし、思い出したくもない。けれど、その関係だけはハッキリとしている。
ただ、それを理由にこうして迫られるのはおかしいと思う。乱歩はひたすらお願いしてくる太宰を横目に溜め息をひとつ零した。
太宰が人を掌で転がすように操る才能があるのは知っている。よく国木田や谷崎はその餌食にされているぐらいだ。太宰がその気になれば、探偵社全体を操る事も可能だろう。乱歩もそれを知っているから、厭な時はそうならないよう回避するようにしている。太宰の考えも見抜ける乱歩だからこそ、太宰の事を理解できるし、太宰も乱歩を理解できるのだろう。
けれど矢張り似た者同士であるわけで。
太宰が国木田達を転がすように、乱歩もこの面倒くさい恋人をからかいたくなるのだ。
「気持ち悪いにゃあ」
馬鹿にするように笑って、さらっと云われた言葉に太宰がぴたりと動きを止める。
鳴けと云ったのは太宰だ。乱歩はそれに従っただけ。然し驚く程目を丸くする太宰に、乱歩が本当にやってくれるとは思っていなかった事が手に取るように判った。
「…乱歩さんすいません、もう一回お願いします」
「にゃあ」
「あ、すいませんもう一回。今度はにゃんで」
「注文が細かくてめんどくさいにゃん」
太宰がそっと口に手を当てて俯く。何かを堪えている様な、そんな様子だ。その状態のまま太宰がそっと携帯を取り出した。
「…もう一回お願いします」
乱歩がそっと顔を反らした。
「お願いします乱歩さん、ちょっとだけ、にゃんって云うだけ」
「やだね。携帯しまえよ」
「そんな事を言わずに。ちょっとノリノリだったじゃあないですか」
「録音されるって判ってて云う奴がどこにいるのさ」
「そんな…」
「ちょ、押さないで危ないから」
無駄に必死な太宰に迫られてバランスが崩れそうになる。丁度その時、会議室の扉が開く音がした。
「すいません乱歩さん、新たな依頼が…」
書類を片手に入ってきた国木田が、二人を見て書類を床に落とした。
椅子に座った乱歩に携帯を片手に迫る太宰と、椅子から落ちないよう縮こまって掴まっている乱歩。傍から見れば、椅子に追い詰めて強姦寸前にも見える。
国木田の表情が死ぬ。太宰と乱歩が国木田の脳内を察し、あー、となんとも云えない声を上げた。それを合図に国木田が我に返る。
「な―――何をしている太宰ィ!!?」
見事としか言いようのない国木田の飛び蹴りが、太宰の顔面にめり込んだ。