大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.61 )
- 日時: 2019/10/20 15:27
- 名前: 皇 翡翠
ドラマみたいに 国乱
「乱歩さん、俺は貴方が好きです!」
真正面からそんな事を云われた。
「……だったら、時と場所を選ぼうよ」
ここは今探偵社内で皆が聞いている場所だというのに、如何して彼は堂々と告白を晒すことが出来るのだろうか。
「いや…乱歩さんが今度合コンというものに向かわれるという話を聞きましたので」
「……合…コン?」
何それ。最近は言葉を略称で表したりするからその言葉の意味を理解するのに時間が掛かるし最早理解したいと努力する気にもならなくなる。だが、目の前の堅物眼鏡男は汗をかいて此方を見続けている。
「合同コンパ。大体の呼称は男性と女性の交流の場で、主にその後として恋人を探す場であると考えるのが常であるかと」
隣で谷崎君が僕に情報を与えてくれた。
だけれど、僕がそんな判っていないものに行くなんて云った覚えは一度も無い。そう思っていると、少し離れた処で太宰がにこりと笑って手を振っている。そこで思い出した。ああ、今度太宰が食事をする人数が居ないから穴埋め役として来てくれって頼まれていた。
あれは単純に食事を自由にさせてくれるっていうから。
「……国木田君は行ってほしくないって事?」
「そりゃあ、好きな人が別の人と交流を深める事には多少は厭な気持になると思います」
「でも、僕は君と付き合っているわけでも無いんだから別に国木田君に何か云われる筋合いはないよね?」
すると、国木田君は俯いてしまった。何も反論する事が出来ないのか、そのまま口を閉ざしてしまった。
「……それに国木田君って将来における理想とか持っていたじゃない。その中に僕に告白するなんてことが刻まれているの?」
うわぁ、攻めるなあ…なんて声を小さく呟く谷崎君の事を聞かなかったことにしてあげる。
「理想は……理想ですから」
うーん、まあそうだけどね。
「では、乱歩さんは俺の何が不満ですか?俺の中の何が駄目ですか?」
今度は何を聞き出すかと思えば。
太宰を含めて周囲が口を抑えて笑いを堪えているのが見えた。第三者の立場だったらきっと僕も笑いに堪えられていなかったはずだ。
それでも国木田君は真っ直ぐにこちらを見て知いて、ちっとも冗談だなんて笑い話に出来る状態を作ってはくれなかった。
……これは逃げられない。
「僕、年下は無理」
けれど、此れさえ云ってしまえば国木田君も流石に諦めるだろう。それに目も覚ましてくれるんじゃないだろうか。僕なんか好いてるなんてきっと正気じゃない。
すると、途中で出先から戻ってきた敦君によってこの話は中断された。
「―――合コンには行くんですか?」
「合コンには年上の人もいるだろうしね。気が合えばいくらでも仲良くしたいと思っているよ」
本当はそんな事考えていないけれども。それでもこのままでは国木田君が引いてくれないだろうからそう云い切って本当に話は終えた。
実際に来てみたけれど……
矢張り太宰を含めて男性が5人。女性が5人の計10人の組み合わせで食事をする事になった。谷崎君の情報通りだ。
僕は食事をする為に来たので他の皆が女性と会話をしているけれども、そんな邪魔も手助けもしない。太宰なんて両手に花状態だった。
「えーっと、貴方が乱歩さん?」
「―――んんむっ?」
食事に夢中しているので僕は口に物が含まれたまま会話する。
「あはは、食事が好きなのかしら?」
軽く笑みを見せるとその後挨拶をしてくれた。そして彼女は普通に空いて居る隣の席に座ってきた。
如何やら有名企業のチームリーダーを担っているらしい。30歳という年齢に対して少し恥じらいながらも僕に提示してきた。
「よろしかったら乱歩さんの連絡先を教えてくれないかしら?」
とはいえ、僕はほとんど手ぶらで来ている。
「んー…電話番号とかなら今教えられるけど。でも名探偵として仕事があるからあんまり出れたりしないと思うよ」
素直に回答をした。
すると笑顔で相手も連絡先を教えてくれた。
「ありがとう」
それからも彼女はずっと隣で会話を進めてきた。趣味は、だとか。何だか自分が好きに食事を出来るからと云って聞いたから来てみたけれども、会話をされると少し疲れて体力を必要以上に消費される。年上がいいかな、とは思っていたけれど…意外と理想ってのは難しいのかもしれない。
それから取りあえず解散をする流れになって各々店の前にまで歩く。空はすっかり夜空を表し、星が綺麗に映っていた。
そして主催者が閉めの言葉を述べていた。太宰はこの後も両手の花を愛でていくので二次会に向かうらしい。
「乱歩さん…これから一緒に飲み直しませんか?」
「うーん、結構食べたからなあ」
「もしよろしければ私の家でもいいですよ。ゆっくりできるでしょうし。それに私料理が得意なので乱歩さんが好きな物を出来るだけ要望に応えることは出来ると思いますし…」
凄く押しが強い。なんだかあの時の国木田君の様に中々挫けることが無い。
けれど、別に僕は彼女に好意が無いから家に上がらせてもらうつもりは無い。
「そんなに、厭ですか?」
うん、厭だ。
なんて正直に云ってしまえればどれだけ楽か。それでも世間はオブラートという常識を備えて置けという。日本人は実にめんどくさい。国木田君なら直球で云っても別にへこたれる事は無いんだろうけど…。
手首を握られて、逃げられない様に先手を打たれてしまった。振りほどいて走ってもいいけれど、一応太宰の知り合いという面でやってきているから彼奴に迷惑はかけない方がいいのかもしれない。
なんで僕がこんな事をいちいち頭で考えなければならないのか、と苛立ちが募り始めている頃だった。
「…乱歩さん、帰りますよ」
国木田君の声が聞こえてきた。幻聴か、と疑ってしまいながらも背後を見てみると…
「乱歩さん」
もう一度名前を呼ばれた。
髪の毛が乱れて、お世辞にも格好いいとは云えない登場ではあった。
それでも彼はそんな事気にすることなく、空いている片腕を国木田君に捕まれた。このまま二人が引っ張り合ったら僕が千切れちゃうじゃないか、なんて発想も浮かびながらもそのまま動かない二人を交互に見返した。
「国木田君…何やってんの」
「何やっているの、は此方の科白ですよ。何時までも戻ってこないので心配したんですから」
戻って…なんて僕はこの後直帰する予定なんだから国木田君にこの後どう行動しようと勝手だろう。
そんな事を思いながらも国木田君の方が行動力があったのか、僕は話しかけてきた女性を置いて連れて行かれた。引っ張り合いになる事も無く、女性の手首を掴む力なんて直ぐに振りほどかれていた。国木田君のらしくも無い、けれども男らしい背中だけが僕の目の前に映っていた。
「国木田君、手…っもう、いいでしょ!」
人通りが多くなってきた辺りで、流石の僕もこんな大道で男同士で手を握っている事に抵抗があったので直ぐに振り払った。
「邪魔しに…来たの?」
「邪魔じゃないですよ。あの後女性と二人で飲んだりしてそのまま大惨事に成ったらどうするつもりだったんですか」
大惨事って…一体どういう事が起きるんだ。それに僕は男だ。何か襲われることが在ったとしても力の差では間違いなく僕が勝つ。
「でも、別に国木田君は恋人でも何でも無いんだから関係ないでしょ。お節介も度が過ぎているよ」
「……お節介、そういうものじゃないですよ。乱歩さんに告白をしたことをもう忘れたんですか?」
そこで僕が今度は国木田君の腕を掴んで路地裏に連れ込んだ。決して厭らしい意味では無い。単純にこんな人が行き交う中で告白だとか危うい言葉を並べたからだ。如何わしい関係だと思われたら絶対に困る。
僕はそのことについて怒ってやろうと思った。
けれども僕は国木田君の表情を見ては何も云えなくなってしまった。
「…………ごめん、なさい」
怒っていた。悲しんでいた。苦しんでいた。
彼の心中を考える間も無く、彼は眉間に皺を寄せて此方を見ていた。偶に怒られる時に人は険しい顔に変わる事があるけれど、それとも違って。
だからこそ、直ぐに謝らなければならないと思ってしまった。
「乱歩さんが俺を如何思っていたとしてもかまいません。けれども、こうまでしても俺が貴方を好きだという気持ちを覚えていて下さい」
「…きっと、厭がっても君は僕の事を追いかけてきそうだ」
なんだかな。
あそこまで強く離したつもりだったのに、如何して僕なんか眼に入れているんだ。君の理想が理想であるから、血迷ってしまったというのか。
「云っておくけれど、僕は君の事を何とも思っていないから」
「判っていますよ。でも、きっと振り向かせてあげますよ」
どこでそんな男前な科白を覚えてきたんだか。
夜道に居たはずなのに、彼の姿がやけに輝いて見えた。