大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.73 )
日時: 2019/12/14 18:52
名前: 皇 翡翠

姐さんが火付け役(?)になっちゃったお話

二人は15歳の設定で、太(→)中な感じで姐さんは面白がってる

■賭

 太宰少年は賭けをした。相手は四つ歳上の女性、尾崎紅葉だ。
「賭け?」と鸚鵡返しに問う彼女に「そう!」と無邪気に笑う。勝てる確信があったから太宰は彼女に賭けを持ちかけたのだ。
 彼女は切れ長の瞳をすうと細めて十五の少年の漆黒の瞳を覗き込む。しかし恐ろしく賢しいこの小僧の奸計を見破らんと射抜くような視線を太宰はふふんと鼻で笑いとばした。
「何が目的じゃ?」
「目的なんて大袈裟なモンじゃない。ちょっとした、お遊びですよ。言うなれば、暇つぶしさ」
そう言ってピンと指を立てる。
「今、紅葉さんはアイツに一般教養を叩き込んでるんでしょう」
それがどうしたと首を傾げる彼女に満足げな顔で頬を赤らめた。それは“クリスマス前の少年”のようだった。
「賭けをしよう。一ヶ月後、取引先との招宴があった筈だ。その場に中也も出席してもらう」
「ほう?」
「そこで中也が笑い者になったら私の勝ち。見事紳士淑女に溶け込んで見せたら紅葉さんの勝ち」
尾崎は呆れたようにふうと溜息をついた。
「……まったく。お前の考えることはよく解らない。
 それで、お前は何が望みだというのだ?」
その問いに太宰はぎらりと瞳を輝かせ「僕に返してよ」と言った。
「もともと、僕の犬だったんだよ。なのに森さんが貴女にあげちゃったんだ。こんなのってないじゃないか。
 ――――だから、僕に返して」
 あらまあ、と尾崎は目を丸くさせる。あらあら、こんなお人形のような得体のしれぬ小童も、一丁前なことを云うじゃあないの。そんな風にケラケラと笑う心を華やかな装いの下に隠し「わっちの躾をなめるなよ、小僧っこが」と不敵に笑った。

 さて、この尾崎紅葉は老成した女であった。弱冠十九歳にして幹部入りを果たした女傑だ。それ故に太宰は彼女と四つしか歳が変わらないことがすっかり頭から抜けていた。つまり、彼女もまた、太宰や中原と同じ“若者”であり、更に言うのであれば“子ども”であるのだ。
 尾崎は子どもらしい独占欲と我儘を剥き出しにした太宰を見て思った。ちょっと意地悪をして、この子のお気に入りを取り上げてやろう、と。
 それは他愛もない悪意だった。

 結果として、賭けに勝ったのは尾崎だった。
 中原は紳士淑女に溶け込むばかりか何処ぞのご子息かと噂されるほどに完璧に仕上がっていた。そのできに、尾崎は太宰の前で中原を褒めちぎり中原もまた得意げな顔で幼さの残る頬を紅潮させていた。
 面白くないのは太宰だ。
 彼はと言えば、悔しさと己の浅慮に顔を真っ赤に染めあげて中原を睨みつけていた。
「紅葉さん」と太宰が地を這うような声を出す。
「僕、わかったよ。あの犬、どうしても僕の言いなりにはならないみたい。
 だからね、本気を出す。本気であの犬に首輪を着けてみせるし、僕に服従させてみせる。もう見誤ったりしない」
 尾崎はいつぞやのように「あらまあ」と目を丸くさせ、やがてくすくすと笑った。

「勝手にせえよ、小僧っこ!
わっちはせいぜい馬に蹴られぬように用心するかの」
尾崎の言葉に、太宰は「ちぇっ」と地面を蹴るのだった。