大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- Re: 【文スト】芥敦ばっかり【敦総受け】 ( No.8 )
- 日時: 2018/08/06 21:51
- 名前: デイズ
Said : 敦
芥川を引っ張って遠くへと歩いて行く。此処は初めて来た場所だけども、兎に角人目のつかない場所まで行きたかった。
薄暗く細い道を敢えて選び、路地裏の方へ行き更に奥へ進んだ。
「離せと云っておる!」
不意に手を振り払われ、芥川の苛立った声が聞こえた。
怒りたいのは僕の方だよ。芥川の漠伽……。
「貴様、一体如何いうつもりだ。」
不機嫌そうにそう云う芥川。
しかし、直ぐに芥川が言葉を失う気配がした。僕は気まずくて下を向いて俯いていた。
「人虎、貴様……泣いているのか。」
そうだよ、悪いか。
そう云い返したいのに、唇は固く結ばれた儘。泣くとふるふると唇が震えるから、噛んで止める。嗚咽が漏れ出してしまうから。
悔しい筈、腹が立っている筈。其れでも其の気持ちに反して涙は止めどなく溢れる。零れ落ちる。
目の前は水彩画に水を垂らした様に滲む。輪郭がボヤける。
止まらない、止められない。腕で拭う、服に染みが広がる、腕に湿り気を帯びる、でも止まらない。
嫌い、嫌いだ。
芥川なんて、大嫌いだ。
「人虎」
「煩いっ!!」
芥川の声が煩わしく感じられて、大きな声で叫び返す。
此の時になって、漸く芥川の顔を真っ正面で見る事が出来た。芥川は相変わらず気持ちの読めない無表情の儘だ。その事が更に僕を苛立たせた。
「お前は何も感じないかもしれないけど、僕は嫌なんだよっ!探偵社を休まさせられるし、こんな服は着せられるし、太宰さんと中原さんにはバレるし、というか皆にバレてるし。こんな屈辱的で恥ずかしいのはもう、うんざりだ!!お前なんか嫌いだ、大嫌いだ!!」
今日の不満が爆発して、芥川にぶつける。
口からひょいと出てくる罵詈雑言を、声と音に乗せて言葉として発する。スッキリする筈だった。きっと、喉にある小骨が取れるくらいスッキリする筈。
でも、何故か小骨が取れないどころか、胸がジンジン痛み更に涙で視界が滲む。
此の言葉で傷付いているのは芥川だ。其れは判っている。でも、なんで僕も傷付いているのは如何して?
「……っ!」
頬に何か冷たく固く細いものが触れる。きっと、芥川の手だ。
僕は振り払おうとして手を挙げようとするが、挙がらない。驚く僕の耳に芥川の声が響く。
「其の事は予想していた。故に、貴様の腕を羅生門で固定しておる。」
云われてみれば確かに、腕には黒い紐状のものが固く巻き付いているのが判る。
きっと、振り払う直前に巻き付けたのだろう。その前からなら、僕でも感じて振り切ることは出来る。そんな短い時間で、手を縛りつけたのか。
「……人虎、すまない。」
「今更 謝っても……んぅっ?!」
僕が反撃しようとすると、芥川は唇を唇で塞いだ。所謂、キスだ。
慣れないからなのか、僕に気遣ってなのか舌は使わない芥川。然し、たまに角度を変えては、唇を食むかのようにしてキスをする。
急な事で僕は理解が追い付かなかったけど、すぐに芥川とキスしているのだと判り、緩みかけている羅生門から腕を引き抜き、芥川の胸をドンと押す。
「お前、何だよ。此のタイミングで」
動揺を隠す様に冷静を装って問い掛ける。おかげで涙は止まったけど、嬉しくない。しかも、僕のファーストキスが奪われた。
芥川と何時かとは思っていたけど、此のタイミングなのがなんとなく癪だった。
「僕自身にせぬのに、人形や写真にすると聞いて。」
「此のタイミングで?!今更、その事切り出すなよ。ていうか、お前も同じことしているじゃないか。」
「然り、貴様と僕は違う。僕は貴様に見立てた虎の人形だけだ。貴様みたいに二つも三つもあらぬ。」
「あまり変わらないから!」
嗚呼、芥川の独走のせいで、いつの間にか仲が元に戻っている。先刻まであんなに云い合っていたのに、泡沫のようだ。
何時もの様に云いあいを始める。
「人虎。」
「何だよ。って、うわっ!?」
芥川が急に羅生門を腰に巻き付け、僕を自分の胸の中に放り投げる。
勢いよく胸の中に入った僕は、いつの間にか芥川の腕の中にいた。ドキドキと鼓動が高鳴り、緊張してしまう。
フワリと香る芥川の匂い、薄い胸板、細いけど力のある腕。
どれもこれも、僕が意識してしまうには十分すぎた。芥川を近くで、肌で感じられて緊張してしまう。
「人虎。先刻のは、本当なのだろうか。」
「……。」
芥川の声には悲壮感が漂っていて、なんだかキュッと心が痛んだ。
あんな無表情だけど、表情では感じてない風に装っても、声までは装えないみたいだ。
僕は、そんな芥川が愛しくて。
ぎゅっと無意識に芥川の服を力強く握っていた。
続き>>9