大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】芥敦ばっかり【敦総受け】 ( No.9 )
日時: 2018/08/08 22:04
名前: デイズ

Said : 敦

何れ程抱き合っていただろう。
只、二人の熱を感じて、自分の中にある静まらない鼓動を耳に聞きながら、ずっと人肌に触れていた。なんとなく、落ち着くんだ。

「……御免、芥川。先刻のは嘘だよ。勢いで云っただけなんだ。そんな事、思ってない。」

あの芥川が僕が答えるまでジッと待っていて、しかも其の間ずっと抱き締めていた。何時もならとやかく云うのだろうに、何も云わず只待っている。
だから、云わずにはいられなかった。気付いたら、云っていた。

「御免……御免ね、芥川。傷付いたよな?御免なさい。」

謝罪の言葉が口から溢れる。其れと同時に目からも涙が溢れる。
声が震えて、嗚咽が漏れるけど云い続けた。
物凄く悲しかった、苦しかった。あんな事を云ってしまった自分が恥ずかしい。そう思うと、更に止まらなかった。

「……っ!!」

フワリと頭を優しく撫でる感触。少し遠慮気味でぎこちなくて、でもとても優しい。
芥川が僕の頭を撫でている。

「関係あらぬ。僕は気に仕手無い。」

芥川の何時もの素っ気ない言葉。でも、何故か胸に染みて、又涙が溢れて止まらなくなる。
優しかった。
芥川はこんな事をした僕を許して、しかも優しく接してくれる。

一つ一つに不器用さを感じる。きっと、人に優しく接するなんて、あんまりした事が無いのかもしれない。僕の知っている限り、芥川は自分にも他人にも厳しい。
でも、今は慣れない手付きで僕を必死に慰め、更に優しくしている。こんな僕に一生懸命仕手呉れている。嫌いな僕を好いていて呉れる。

其れが嬉しかった。

「人虎、そろそろ泣き止め。貴様の涙と鼻水で汚れる。」

そんな事を云っている割には、僕を抱いている手を緩めない。
一体どっちが本音なのか。そんな矛盾が可笑しくて、思わず笑ってしまう。

「如何した。遂に精神が遣られたか。哀れな獣だ。」
「違うって、お前。云ってる事とやってることが違い過ぎて、可笑しいんだよ。あははっ!」

芥川は不思議そうに首を傾げていて、僕の云ってる意味が判って無いらしい。
其れが更に僕を笑わせた。

軈て、笑いも止まり始めた頃、涙も何時の間にか止まっていた。

「やっと、止まった。ああ、もう……お前のせいで沢山泣いた。」

鼻が風邪でもないのにぐずぐずする。鼻を啜りながら、まだ流れきらなかった涙を服でゴシゴシと擦る。なんとなく、泣いた後って風邪みたいだよな。
ゴシゴシと擦るのを止め、芥川を見てみるとぐいっと顎を上にあげられた。

一寸驚いたが、瞬時に理解して赤くなる。

「お前、又するのか。」
「然り。したくなった故。」

又無理矢理されるのかと思って、目をきゅっと固く閉じた。
芥川の顔って意外と綺麗だから、あんまり直視出来ない。しかも、近いなら尚更だ。

「重疊」

芥川のそんな嬉しげな声が聞こえたと思ったら、ちゅっと音を鳴らして又触れた。

―カシャッ
「仕舞ったっ」
「あ〜あ。」

僕と芥川は固まる。
今、絶対聞こえてはならないものが聞こえた。触れていた唇を離し、音のした方に振り返った。

其処にはカメラを持つ中原さんと隣に並ぶ太宰さんが居た。

「だから云ったのだよ。音は鳴らないか確認した方が善いって。」
「煩ェ!手前ェが急かすからだろうが!」
「何を云うのかと思えば。中也、自分の間違いを他人に擦り付けてはいけないよ。」
「糞っ、おかげで善い奴逃したじゃねェか。」
「わー、ブレッブレッ。」
「此れは手前ェのせいだ。」
「え〜。」

僕らに気付かれても特に気にする事無く、会話をする二人。
一体如何いう風邪の吹き回しなのだろう。二人して其の異様な光景に目が離せなかった。

「あ、でも今でも十分じゃあないかい?」
「……其れもそうか。」

太宰さんに云われ、何かを納得したらしい中原さん。

直ぐに僕らに又カメラを向けた。
僕らはまだ唇を離しただけ。躯はまだピッタリと密着していたし、腕も確りと背に回していた。しかも、僕は女装している。

直ぐに気付いて二人とも離れるが、もう既に撮られている。

「じゃあね、敦君と芥川君。」
「後は手前ェらで続けとけ。」

二人はそう云い立ち去ろうとする。

「逃がしてなるか……っ!」

芥川はそう云うと羅生門を二人に伸ばす。然し、太宰さんは異能無効化。片手で簡単にあしらって仕舞う。中原さんに関しては、重力を操れる異能にポートマフィアでもかなりの体術遣いだから、簡単に避けるし逃げ足だって疾い。
二人は特に歩調を変えること無く、颯爽と去っていった。

「おのれ……っ、強すぎるっ!!」

そりゃあそうだろうな。彼の二人、かの有名な"双黒"だもの。
そう易々と捕まるわけがない。

其の儘追い掛けて仕舞いそうな芥川をなんとか落ち着かせ、僕は取り敢えず帰る事を提案する。時間的にも探偵社の勤務時間も終わり、鏡花ちゃんも帰ってくる。
僕は悪魔で風邪で休んでいるから、其までに戻らないといけない。
不承不承と云った感じで芥川は頷き、帰りの途に着くことにした。芥川は僕を道の判る所まで送ると、直ぐに身を翻し帰っていった。

僕は暫く其の背中を見つめていたが、直ぐに探偵社員寮に歩みを進める。
もうすぐで夜が更ける。


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