15歳以上向け小説投稿サイト「大人小説☆カキコ」。超本格派から秘め事・過激な小説まで！

泣き虫で、ロマンチストで、いつだって真っ直ぐ。

ああなれたらいいなあ、なんて。

あいつは、誰もが思うようなヒーローだ。

そんなこと言ったら、困ったように目を逸らせて、愛用の黒いキャップを深く被って、赤くなった顔を隠すのだろう。

そこまで考えて、くすっと笑ってしまった。

いくら幼なじみだったとはいえ、長い空白の時間があったのに、そんなのを忘れるくらいあいつのことだけは考えやすい。

考えやすい、というか、暇があればオーストラリアで頑張っている恋人のことを考えてしまうから、こうなってしまったのだろう。今もこのカフェテリアであいつを待ちながらあいつの妄想ばかりしている。
あいつを待つこの時間も、あいつのことを考えるだけで幸福なひとときに変わるのだ。

手術の結果は、どうやって知らせよう。
いや、あっちから切り出すのを待ってみるか。

どうやって切り出すのだろう。
きっと、言いづらくてもごもごしたままカウンターテーブルを指で小刻みに叩いて目を泳がせるのだろう。

「成功した」と言ったら、どんな反応をするだろう。純粋に喜ぶか、それとも感極まって泣いてしまうだろうか。

ああ、早く会いたい。あいつの声を聞きたい。

カラン…

「宗介！」

嬉しそうな声。

待ちわびた、ヒーローみたいにかっこいいのに単純で純粋な、愛しい声。

「久しぶりだな、凛。」

振り向いて、微笑んだ。


いつか、言って、見てみたい。


「結婚しよう」


そう告げたら、どんな反応をするだろうかって。

楽しみで、今からでもにやけそうだ。

でも、それはまだ隠しておこう。


誰よりも現実に近い、俺だけの凛と俺の妄想なのだ。


fin.