【雨と恋煩い】
豪炎寺視点
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放課後、雨が降っていてグラウンドには雨が溜まっていた。スポーツも勉学も両立して良いが評判の高校だ、スポーツはサッカーだけじゃない。
簡単に校舎内施設を借りる事は出来ず、折角部室で練習着に着替えたというのに本日はサッカー部は休みらしい。閉めたロッカーをまた開けて制服へ着替え直す、隣で鬼道が着替えてるのに鬼道の家柄を思い出してクスッと小さく笑うと鬼道にだけ聞こえるように小さくボヤく。
「鬼道なら、どこか借りられるんじゃないか?」
「フッ、この雨の中だ、どの施設でも理由はどうあれ空いてはいないと思うぞ」
「そうだよな…はあ…」
肩を少し揺らして鼻で笑った鬼道は正論を述べる。俺は肩を落としてため息をつく、これも雨のせいだろうか。
「だが」
話は終わったかに思えたが、鬼道の方からButの単語、話の続きが気になり鬼道を見ると口は奇麗に弧を描いていた。
「狭くてもいいなら、ウチに来るか?」
「!いいのか?」
「サッカー、したいだろう?」
「ああ!」
内心とても喜んでいるし嬉しいのに鬼道に伝わっただろうか?
鬼道の家に招待されるのは純粋に嬉しいし、サッカーが出来るスペースがあるというのも気になる。俺を試すように微笑した口元とは裏腹に視線は真剣なもので真っ直ぐ問われた質問に勿論だと頷く。
それを確認した鬼道はゴーグルを着けて鞄の紐を肩にかける、それに慌てて着替えを再開する。
「円堂なら、この雨の中でもサッカーやろうと言い出しそうだな」
「ああ」
「当の本人はどうした、また補習なんて言わないだろうな?」
「いや、補習ではない」
「だったら何だ?居眠り授業の罰で資料整理でもしてるのか?」
「いや、居眠り授業なら俺もしている」
「おい、あたかもそうすることが当然のような口振りで言うな。なにか言いづらい事なのか?」
「…少し見に行くか?」
「?ああ」
着替え終えればロッカーを閉める。自分のロッカーに背を預け腕組みして俺を待っていた鬼道に口では説明しづらいことで、実際に見に行った方が早いと踏んだ俺は疑問を抱えたまま眉間にシワを作る鬼道を連れて、放課後の鐘が鳴るなり駆け足で出て行った円堂の目的地へ向かった。