大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】名もなき愛を【太中・乱歩受け】 ( No.10 )
日時: 2019/04/22 20:32
名前: 枕木

「誕生日プレゼント、何か欲しい物ある?」

口に運んでいたじゃがいもの煮物がぽろりと箸から落ちる。
俺がそうやって驚いている間に、その発言をした恋人は「あー、じゃがいも勿体ない」と、ひょいっと箸でじゃがいもを掴み、食べている。

……今、なんて言ったんだ、このくそ可愛い名探偵。

「だーかーらー、誕生日プレゼント何か欲しい物ある? って。1週間後でしょ。特にないならいいけど」
「……ら」
「僕が欲しい、とか言ったら捻り潰すよ」
「……はい」

食卓を挟んで向かい側で、乱歩が「いやあ、莫迦な恋人もつとたいへんだよね」と、やれやれと溜め息をついた。

信じられなかった。俺の誕生日を、1週間前から認知していて、しかもプレゼントをくれようとしているなどということが。
いや、こいつの頭脳の出来の良さを考えれば覚えていることは当たり前なのかもしれないが、それでも、滅多に愛情表現をしない恋人の心遣いが、すごく嬉しかった。

「何でもいい。つか、何もいらねえぞ」
「そういうわけにはいかないでしょ。付き合って初めての誕生日じゃん」

嗚呼、こういうことをさらりと言うから怖いのだこの男は。可愛すぎて殺したくなる。

「歪んでるねえ。で、結局欲しいものあるの」

人参を箸の先でつつきながら問うてくる。
少し考えて、そして、箸を置いて立ち上がった。
食卓を回って、ぱちくりと糸目を瞬かせる乱歩の隣に立つ。そして、その頭をかき抱いた。

「……やっぱり、手前、しかいねえんだけど?」
「うわあ、推理するまでもない陳腐台詞」
「んで、くれんのかよ?」

首筋に口づけを落としながら言うと、乱歩はそれを少し顔を赤らめて受け入れて、そして、にやりと笑った。

「それってつまり、誕生日まで僕はお預けってこと?」
「……はぁ!?」
「1週間、僕をあげなくてもいいんだ。へえー」

たらたらと冷や汗が流れる。
乱歩は、「それなら助かるよ」とにやにやしている。

「ら、乱歩……」
「紳士だね、中原は」
「ちょ……」
「誕生日が楽しみだなあ」

……誕生日、抱き潰してやろう。

そう決意しながら、もう一度ぎゅっと抱き締めた。

自分が生まれた特別な日を、特別な人と過ごせる。これ以上のプレゼントなんてないだろう。

にやにやしながら、こいつは、こんなに幸せなプレゼントをくれたから。だから、「ありがとな」と耳元でささやいた。乱歩は少し耳を赤らめていた。


……中原中也誕生日まで、あと7日。