大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】太中R18*乱歩・中也受け ( No.102 )
日時: 2019/08/23 19:06
名前: 枕木

つっかれたー!!
疲れた。とにかく疲れた。マフィア絡みの始末書だったから、今回ばかりは国木田君に丸投げするわけにもいかず久方ぶりに机に向かい朝から夜までみっちり書き物をしてみればこの始末。矢っ張りお仕事なんてするものじゃないね。明日は絶対働かない……って、毎日誓ってるけど。それなのに結局こうして働いちゃう私ってば何てお人好しなんだろう。
嗚呼、国木田君が怒鳴る幻聴が聴こえる……まずいなあ。これは早く寝ちゃった方がいいよね。お風呂とか御飯とか何も考えず、泥のように眠りたい……嗚呼でも明日も出社しなきゃだしどっちもしなきゃなあ……でも、御飯もお風呂も、一緒にする人がいないとイマイチ、なんか。って云っても、最近あっちも忙しいみたいだし、当分会えそうにないけどね。

憂鬱に溜め息を吐きながら外套のポケットの中の鍵をまさぐり、ふと住処であるアパートを見上げてみれば、自分の部屋に位置する場所の明かりが点いていた。
はて、お客さんかな……? でも、電気点けるなんてナンセンスな事しないか。真っ暗のまま玄関の死角に潜んで、私が入ってきたら私が電気を点ける前に後ろに回り込んで首をかっさばけばいい話だもの。とすると、空き巣さん? 物騒だなあ、やだなあ、蒲団の下に隠してあるお酒盗られたらどうしよう。
お酒を盗られるのは嫌だから、アパートの古い階段を重い足でなんとか上っていく。そして、傘で殴れば気絶するかなあ……なんてぼんやり考えながら自分の部屋の前まで来ると、ドアノブをひねった。嗚呼、本当に今日はよくない日かも知れない。こんな疲れた頭と躰で、ちゃあんと空き巣さんを追い払えるかなあ。面倒くさいなあ。あーあ、こんな日には、無性にあいつの声が聴きたくなる……絶望的な気分でドアを開けて、そして、その光景に、目を見開いた。

……え?

玄関には、一足の黒い革靴。見慣れた予想外なそれに目を見開いていると、奥の居間から、声がした。

「帰ったか? 年中暇な探偵社には珍しいじゃねェか」

凛とした、乱暴な言葉遣いの、その声。
それに回らない頭で呆然としていると、足音がして、居間に続くドアが開いて、そいつが姿を現した。

「早く入れよ。飯が冷めちまうだろ」
「……」
「おい」
「……」
「太宰?」

不機嫌そうだったのがいぶかしげな表情に変わり、とてとてと近づいてくる。
そして、たちすくむ私の目の前までくると、首を伸ばして、蒼い双眸で私を見上げて、眉を寄せた。

「おい、聞いてんのか?」

返事をできないでいると、チョーカーをつけた首をかしげ、そして、ふわっと浮き上がると、私の顔をのぞきこんだ。

「どうしたんだよ太宰。熱でも……どわっ!?」

心配そうに揺れる瞳と、目の前の顔を見ていたら、もう堪えられなくなってしまって。衝動にあらがわず、目の前の彼を……会いたくてたまらなかった恋人を、ぎゅっと抱き締めた。

異能が解けてすっぽり私の胸に収まる彼を、ぎゅう……と思いきり抱き締めて、朱色の髪に、首筋に、顔を埋める。
嗚呼、中也のにおいがする。
「はぁ……」と深く息を吐き愛しい感触と体温とにおいを躰中で堪能していると、「おい、おい」と胸板をばしばし叩かれた。
少し腕を緩めて見てみると、頬を染めた恋人が、私の胸の中から私を見上げていた。

「ど、どうしたんだよ、まじで……矢っ張り体調悪いのか……?」

余程驚いたのか、しどろもどろに尋ねてくる。
あーあ、矢っ張り知らないんだなあ、中也は。

「んー……そうだね、少し悪かったけど、でも、もう治ったかなあ」
「? そ、そうなのか……?」
「うん。嗚呼そうだ、御飯作ってくれたの? お腹ぺこぺこなんだよね」
「嗚呼……そんな手の込んだもん作ってねェけどな」
「お風呂は?」
「沸いてる。先風呂にするか?」
「そうしようかなあ。一緒に入ろうよ、中也」
「い……善いが……へ、変な気、起こすなよ……?」
「わあ、中也のエッチ」
「ああ”!?」
「あはは、ごめんごめん。判った判った、何もしないよ。じゃあこのままお風呂場行こうか」
「わ、莫迦下ろせ……っ!!」

何もしないよ。多分……ね♪ と心の中で付け加えて、私はいつの間にか空いていたお腹と、いつの間にか満ち足りた幸せな気持ちと、顔を真っ赤にして足をバタバタさせる恋人を抱えて、意気揚々とお風呂場へ向かった。
そして、ふと思い立って、立ち止まって、目をぱちくりさせる恋人に微笑んで、「ただいま」と口づけした。


えんど