大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.147 )
日時: 2020/08/16 14:07
名前: 枕木

はらはら、紅葉が散る。屋敷の中が見えないように竹柵で囲っている為、こうして縁側に座っていても、見えるのは、越えることの許されない、低くも余りに高い柵と、中庭に植えられた大きな楓の木。紅く色付いた紅葉が、音もなく散って、落ちてゆく。もう地面は紅葉で埋め尽くされていた。
四季折々で中庭も景色が変わる。冬になれば、雪が積もり、かまくらなんか作ったりする。春には桜が散り淡い色の花が咲いて、夏になれば向日葵や池や。屋敷の持ち主で俺たちの雇い主である森鴎外が、客に景色まで楽しんで貰おうという精神だからだ。どうやって中庭を作っているのかは知らない。だが、この柵に囲われている俺たちが見られる唯一の世界が、この中庭だ。客の為に作ったものとはいえ、その世界が展開されているのを見ていられるのは有り難かった。15で此処に入って、もう既に感覚は麻痺しているが、それでも人間だ。もし、こんなに小さくてもこの世界がなかったら、柵に囲われ屋敷に閉じ込められるしかない人生だったら、狂っていたかも知れない。この小さな小さな世界は、俺の支えだった。

「もう秋かえ。早いのう」

上品な、衣擦れの音。そちらを見ると、紅蓮の髪を結い上げた、背の高い美しい女性が歩んできて、俺の隣で立ち止まり微笑んで中庭をみつめた。

「姐さん」
「これ、姐さんは止めよと云っておるじゃろう。まだそんな齢ではないがえ」
「すみません、姐さん」
「ふう……まあ、よかろう」

姐さんは、仕方のない奴じゃ、と着物の袖を口元に添えて、淑やかに笑った。

姐さん___尾崎紅葉は、この遊郭の最上級の花魁だ。森鴎外___主<ボス>にも気に入られていて、儲けの3割はこの方の功績だという話だ。一時期はこの儲けを一割にまで抑えられ、代わりに四割を制していた男娼がいたが、彼のいない今は彼女がそれを制している。
この遊郭では、最下級のまだ成り立ての遊女でさえ、普通の人間の一ヶ月の収入分は支払わないとその姿を見ることさえ許されない。姐さんの階級までいくと、一夜を共にすればもう車が買えるんじゃなかろうか。
それなのに、姐さんに客が絶えることはない。それどころか。

「また、身請けの話があったそうですね」

姐さんの魅力に、敵う者などいない。ましてや、姐さんの魅力に、虜にならない者などいないのだ。

姐さんを見上げて云うと、姐さんは俺を見ずに、落ち行く紅葉をみつめて、再び小さく笑った。

「まあ、そこかしこに物好きなどいるものじゃ」
「その話、どうするんですか?」
「どうもせん。私は、今の生活が気に入っておる」
「……そうですか」

うつむいて、俺は呟いた。
今の生活が、気に入っている……俺も、嫌いではない。居場所もなくふらふらしていた俺を拾って育ててくださったのは主<ボス>だ。俺も、少ない男娼の中では最上に位置する、姐さんほどではないが上級の男娼だ。俺がこの遊郭の、主<ボス>の役に立てているのなら、嬉しい。
……だが、身請け、即ち、家で例えるなら庭付きの豪邸を買えるであろう多額の金を支払って自身を買ってくれる者が現れれば、一生その者のものになる代わりに、この遊郭や柵の中から解放されて、自由になれる。姐さんには、身請けの話が幾度もきているのに、姐さんはそれを請けたことは一度もない。この遊郭が、暮らしが、気に入っている、というのだ。
昔、それと反対のことを云って、この遊郭を出ていった男がいたのを、思い出す。

『ねえ中也。君はさ、この人生が___』

「窮屈だと、感じたことはありませんか」

ぽつりと、口から滑り落ちていた。
全くの、無意識だった。

「この柵も、中庭も、飽きてしまったなあ、と……」

そこまで云ってはっとして、さっと姐さんを見上げた。姐さんは、表情もなく、ただ静かに俺をみつめていた。血の気が引く。何てこと云ってんだ俺。やばい、どうしよう、ただの男娼の俺が不満なんて云っていい筈ねェのに……!
慌てて口を開いた俺をそっと制して、姐さんは、優しく目を細めた。

「よい。内緒にしておいてやろう」
「……有り難う御座います」

頭を下げる。すると上から言葉が降ってきた。

「籠から逃げた小鳥は、果たして幸せかのう」

目を見開く。姐さんに、俺の思考、ばれてる……
うつむいたまま、唇を結んだ。

「が、しかし、中也」

名を呼ばれて、顔をあげる。
姐さんは、美しく微笑んでいた。

「誰と一緒になるかくらいは、自分で決めよ。お前の躰はもうお前のものではないかもしれぬが、お前の人生は、心は、お前のものじゃ。飼い殺される定めならば、誰に飼われるかは自分で決めよ。大丈夫じゃ、お前の籠の中でさえずる姿は何にも変えがたいほど美しい」

俺は、黙って頭を下げた。衣擦れの音が遠ざかるまで、頭を下げ続けていた。

そして、右手に握っていた一通の手紙を……『そなたに惚れた。儂の元へ来てほしい』というとある客の厚意を……握り潰した。

誰に飼われたいか、と問われたなら、一番最初に出てくるのは、何年か前に籠から逃げ出した一羽の小鳥。判っている、逃げた小鳥は帰ってこない。
ふう、と立ち上がり、自身の部屋へ戻ろうとしたとき。

「中也君」

姐さんが去っていった方とは反対から、呼ばれた。
振り向くと、中年の男性……主<ボス>がいて、にこにこ笑っていた。さっと頭を下げる。主<ボス>は、朗らかに云った。

「ほらほら、頭を上げて、支度をしてくれ給え。お客様が来ているよ。椿の間にご案内してあるから、お相手してねえ。明日の朝まで、頼むよ」

どくん、と心臓が高鳴る。ぎゅっと胸を押さえる。
毎月月末に、椿の間で、夕方から翌朝まで、俺を指名する客。それは、一人しかいなかった。

何年か前に、身請けされて、出ていった、姐さんを霞ませるほどの男娼だった男。だが、彼を買ったのは、この屋敷の男娼の世話をしていたとある男で、その男は死んだ。死に際に、彼を買うための金と契約書を残して。
彼の身請けは受理されて、彼は出ていった。しかし四年経って、彼は……客として、この遊郭に現れるようになった。

椿の間に、足を踏み入れる。酒を飲み、窓から落ちる紅葉を眺める、黒髪で、茶色の着流しに灰色の衣を羽織って、躰に包帯を巻いた、かつて幾多の人間を虜にした美形の男。
彼が俺に気付き、振り返った。鳶色の瞳が俺をとらえた。そして、口角を上げて、軽く云った。

「やあ。待っていたよ」

太宰治。

元最少年男性花魁であり、

俺の、初めての客だった男。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.148 )
日時: 2019/11/03 13:36
名前: 枕木

太宰は酒を机に置き窓を閉めて、俺を手招いた。俺は正座して、

「宜しくお願い致します」

と、お客様に御挨拶した後、襖を閉めて、太宰に歩み寄る。太宰が座ったまま微笑んで両腕を広げたので、太宰に向き合う形で、太宰の膝の上に股がった。

「久し振りだね、中也」
「丁度一月振りになります。御会いしとう御座いました」
「あれ、可愛いこと云うねえ? そんなこと云ったら、すぐに食べたくなっちゃう」

太宰が俺を抱き締め、首元に口づけを落としながら云う。嗚呼、首元は、昨日の……

「……」

案の定、太宰は、昨日の客が首筋にくっきりと残した痕を見て、一瞬、表情を消した。そして、その痕に上書きするように、口づけを落とした。
それが……それが、悲しくて、嬉しくて、声が震えそうになるのを、股間に触れてくちゅっと卑猥な音で誤魔化した。

「遠慮なさらず、召し上がってください。俺は貴方様のものです」

俺は、太宰の手をとって、着物の帯に触れさせた。下着の履いていない下半身を、着物越しに太宰のそれに擦りつける。少し捲って、もう既に濡らしてあるそこを晒すと、太宰はにこりと微笑んだ。
内心をひた隠しにして、お客様を悦ばせるため、楽しませるための、言葉を吐く。もう何年もやっているのだ。こんなこと、慣れている。

それが例え、かつては軽口を叩き合いながら日々を過ごして、客のいない夜になると互いの部屋を行き来して、蒲団に隠れて躰を重ねて愛を囁きあった、ただ一人の男だとしても。

もう、あの日々が来ることは二度とないから。

「あッ、あッ、ああっ」
「あー……すっごいイイ。もっと締めて」
「はぁ、ん、い……あぁん! あん、あん、あんっ!」

蒲団に寝かされ、足を開かされ、上に乗った男のそれを突っ込まれて、よがり喘ぐ。帯は傍らに捨てられていて、開いた着物は白濁で汚れていた。
一度一度のセックスで感じていたら身がもたないので、感じすぎないようにと、薬を服用されている。だが、お客様を気持ちよくさせるため、きゅうきゅう締め上げて、喘がないといけない。
太宰が、腰を小刻みに揺らす。いくら薬を飲んでいても、前立腺をゴリゴリされると堪らない。太宰はそれをよく判っていて、前立腺だけを硬い亀頭で何度も擦るのだ。小さく、速く、揺すって、ゴリゴリする。気持ちよくて、背中が反って、唾液が溢れる。

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ
「あッ、あッ、あッ、あッ、あッ」
ごりゅごりゅごりゅ、ごりゅっ
「あぅっ! あ、あん、あぁん、あんっ!!」
「あー……きゅうきゅう締まって……あっ、いい……ちゅーや……」

足を開いて、もっともっとと、腰を揺らしてしまう。男が股を開いて、男に突っ込まれて動かれて感じて性器膨らませて透明な蜜だらだら流して喘ぐ。
それに興奮を覚え、病み付きになる人間がいる。だから俺たちは生きていけている。

この男も……太宰も、その一人なのだろうか。偶々、俺と躰の相性がよかったから……それだけなのだろう。

ぱんっぱんっぱんっぱんっ
「いぁあ……お、く、おく、あんっ、おく、らめ、らめぇ……あぁんっ! あんっ、ひぁっ、あぁん、あんっ、らめぇ……」
「うわあ、イイ顔……きもちいい? 中也」

本格的に、快楽に襲われる。元々感じやすい方なのだが、どうも、太宰に対してだけは薬がよく効かない。
だんだん感覚が麻痺して、太宰をお客として扱おうとしていたのが崩れてくる。

ぱちゅんっぱちゅんっぱんぱんぱんっ
「いい……ああんっ! あんっ、あぁんっ、あんっ、あんっ! きもち、いい、いい、あぁんっ! よ、すぎ、ぃ、あっ、ん、あぁっ、よ、すぎぃ、て、いっちゃ、いっちゃう……っ」
「いいよ……イッて」
「やらぁ……だ、ざい、の、だざい、の、ほしい……」

太宰の背中にしがみつき、ビクビク躰を痙攣させて、懇願する。太宰はにやっと笑って、俺の乳首をきゅっと摘まんだ。勿論、乳首も開発済みだ。紅く染まって、太宰につねられると、快楽が走った。

「はは、矢っ張り。中也って、乳首つねられるとすっごいナカうねるよねえ。ほら、ナカに出してほしかったら、頑張って締めて?」

きゅう……ぱんぱんぱんぱんっ

「やっ、ち、くび、らめ、おく、らめ、いく、ああっ、ああんっ、あんっ、あんっ、あんっ、ああ、ああっ!!」

ゾクゾクっと熱が集まって、我慢なんて出来なくて。
俺は、本当は禁じられていることを……自分のそれに手をやり、濡れたそれを上下にクチュクチュ擦って、ビクビク躰を痙攣させて、イッた。

「ああぁあぁぁぁ……」

きもちい……きもちい、きもちい。
もっと、もっと。

ごりゅっ

「ッ!?」

目を見開く。
やだ……なに、そこ……
太宰を見上げると、太宰は悪戯っぽく笑った。

「ねえ、もっといろんな顔見せて? ちゃんとナカに出してあげるから」
「あ……だざい……」
「ちゅうや……」

どちらからともなく、唇を重ねる。太宰は、腰を揺らして、奥の奥を突いた。

「んんっ、んっ、んんぅ、んっ!!」

目を見開いて、太宰に必死でしがみつく。無意識に下半身に力が入ってぎゅっと締め付けて、太いそれが狭く収縮したところを往復して擦るのが堪らなくきもちよかった。
太宰……太宰。初めてのときも、太宰だった。痛かったけど、段々慣れて。客をとれるようになっても、太宰とするのが一番で。
こんな……こんな関係でしか会えなくなっても、矢っ張り、俺は、こいつが。

ごりゅっ、ごりゅっ、きゅう、きゅう
「あッ、あんッ、あん、あんっ……あっ、いい、ああっ、いいよ、ああんっ、いい、あんっ、いいよぉ、だざ、ひあぁっ! いいよぉ、だざいぃ………」

突かれる度、摘ままれる度、涙が溢れる。快楽に支配される。けれど、怖くはない。相手が、太宰だからなのか。そうなのか? なあ……

ごりゅっ

「ひっ」
「ふふ……もう、そろそろ」
「だざ……」

ゴリ、ゴリ、ごりゅ、ごりゅ、きゅうぅ……

「いく、いっちゃ、いく、いく、いくぅ、ああ、ああ、ああ、ああぁぁぁぁあああぁ……!! あっ、あっ……!」
「っつ……」

ナカがぎゅうっと締まった。太宰の、太くて、硬くて、熱い……きもちいい……
どくんっとそれが脈打って、奥が重い液体で勢いよく濡らされる感覚。敏感になりすぎて、それだけでイッてしまいそうだった。

「……中也……」
「だざ……太宰……」

名前を呼び合う。引かれ合うように、口づけをする。


それでも俺は、こいつのものではないのだ。明日になれば、また違う男に抱かれる。このまま眠ってしまえば、もう二度と俺たちは会うことはないかもしれない……そんな、関係でしかない。
不意に流れた涙が、快楽からきたものだと信じたい。俺はぎゅっと太宰に抱きついて、囁いた。

「ほら、なにへたばってんだよ。明日の朝までだろ? まだ夕方だぜ? こんなんで一晩中楽しめんのかよ」

太宰は、客への態度だとは思いがたい俺の挑戦的な発言に、楽しそうに笑った。

「勿論。覚悟しときなよ、中也」

太宰はそう云って、口づけてきた。それに応えて、舌を絡ませる。こうして夜になって、更けてゆく。


客との口づけは禁止されている……とか、俺らの、太宰と俺との間だけは、どうか、許してほしい。

このくらいしか、太宰と特別でいられる方法がなかったのだ。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.149 )
日時: 2019/11/04 07:44
名前: 枕木

不意に、何の前触れもなく、目覚めた。辺りはまだ薄暗い。
上半身を起こし、傍らを見る。すー……すー……と微かに寝息をたてて眠る太宰がいた。そっと、その黒髪に触れてみる。存外、柔らかかったりする。
あー……毎日、こうだったらいいのにな。毎日、目覚めたとき傍らにいるのがこいつだったら、どんなに幸せだろう。
なんて、叶わぬことを思いながら、その寝顔をみつめる。罪になるほどの美形。かつて、何百という人間の人生を狂わせた、美しい悪魔。
判ってる。俺は太宰のものではないし、太宰は俺のものではない。こいつが帰ったら、また違う客が来る。そうしたら、俺は太宰にしたのと同じように、股を開いて、突っ込まれて、きもちいいきもちいいと鳴いて、腰を振る。そうして一月を過ごして、こいつがやってくる……

嗚呼、なんて人生だろう。ほんと、いやになってくるな……

「泣いてるの?」

はっと気づくと、太宰が目を開けて、じっと俺をみつめていた。
やっべ、俺、泣いて……? 慌てて目元に触れると。

「ううん、涙は流れてないよ。そう見えるだけ」
「……申し訳御座いません。お見苦しい姿をお見せしてしまって」
「いいよ、君の泣き顔ってすごいそそるから」

太宰が手を伸ばし、俺の頬に触れた。ひんやりと冷たい手。きもちいい……
そのまま引き寄せられて、ちゅっと口づけした。唇を開くと、その隙間から舌が侵入してくる。それを受け入れて、絡ませた。この行為が、俺の唯一の特別だった。他の客に同じように抱かれはしても、口づけはしない。これだけは、太宰が最初で最後の相手だから。
太宰が俺の腰に手を回し、立場を入れ替える。俺の上になった太宰は、突然、俺の首筋に歯をたてた。

「っ……」

一瞬、顔が歪む。太宰が口を離す。あ……? どうなった……? 太宰は、僅かな痛みの残るところに指を滑らせ、ふふっと笑った。

「くっきり、歯形ついちゃった。森さんに怒られるかな?」
「い、いえ……」

本当は、余り歓迎されない。昨日の客がつけた痕も、本当はつけてほしくなかった。独占欲の強い客だと、他の男がつけた痕を見て眉間に皺を寄せることもあるからだ。客を不快な気持ちにさせることは、絶対に許されない……けれど、太宰は……太宰だけは、嬉しい。

「俺は、貴方様のものです」

迷いなく、云った。太宰は嬉しそうに鳶色の瞳を細めて、口づけてきた。
舌を絡ませて深く口づけていると、ふと、太股に硬い感触が当たる。
唇を離し、少しばつの悪い顔をする太宰を、ははっと笑った。なんだよ、可愛いとこあるじゃねェか。
昨夜、情事を終えてから着替えた着物をまた汚してしまうことになる。けれどまあ、気にすることでもない。
俺は、着物の袂を開いて、紅く染まりぴんと勃った乳首を晒した。太宰が、ごくりと息を飲んだ。我慢する気か? 勘弁しろよ、こっちももうその気になってんだからよ。

「太宰様……どうか、遠慮なさらず。俺も、貴方が欲しいから……早く」
「っ……そうだね、もう今日はお客さんとれないくらいへとへとにしてやろうかな」

それもいいな。
口には出さずに、賛成の意を伝えるため口づけた。太宰のそれを、俺のそこに誘導する。今更慣らすような穴ではない。ずぷん、と勢いよく挿入る。ずぷずぷ……と進むと、太宰の形が判ってくる。最奥にぶつかると、太宰は一度息をついた。そして、俺の髪をかきあげて、優しく微笑んだ。

「君のナカ、すっごくあったかくて、やわらかいね。最高」
「俺も……太宰様が、一番です……」
「ふふ。有り難う」

太宰が、一度腰を引いて、ぱちゅん、と思いきり打ち付けた。「あァン!」と鳴いて、その動きに合わせて腰を振る。そうして、快楽に溺れていく。

他の客じゃこうはならないのだ。太宰だけ、こんなに気持ちよくて、こんなに愛おしくて、どうしようもなく幸せで、嬉しくて……

ずっと、ずっと、この時間が続けばいいのにと、願ってしまう。

叶わないのは、判っている。綺麗に色づいた紅葉も、いつまでもその色を保っていることはできない。綺麗なうちに落ちるか、枯れて残るか……それだけの違いだ。

けれど若し、美しく落ちた紅葉を、貴方が……太宰が、拾ってくれたなら。そんなに嬉しいことはないのにな。

「じゃあ、また来月来るよ」
「お待ちしております」

最後に口づけをして、みつめあって、微笑を交わして、名残惜しく、太宰は去っていった。
その背中に小さく手を振って、息をつく。腹に手をやる。まだ、太宰がナカに出した精液が残っていて、温かい。これが残っている内は、太宰のもので……

「中也君」

ああ……

「太宰君はお見送りしたよ。今度は、蓮の間にお客様が来ているから、躰洗ったら行ってねえ。その間、芥川君が相手してくれているから」

そうだよな。判ってる……筈だったのに。

「……畏まりました」

俺は、太宰のものには成り得ない。

俺たちを繋げられるのは、金と、躰だけだから。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.150 )
日時: 2019/11/14 21:12
名前: 枕木

湯槽に浸かり、湯気で白く霞んだ遠い天井をぼんやりとみつめる。この遊郭がどれだけ栄えているのかを思い知らされる。その支えの一部に俺は含まれているのかもしれないが、それはただの古株だからという理由だけで、姐さんや太宰のような、生まれついた瞬間にこうなることを定められたような才能はもっていない。現に、毎日途切れることなく人が俺を指名するけれど、何度も来るような客はいない。多くて三度だろうか。ほぼ、毎日人が変わる。つまり、直ぐに飽きられる程度の魅力なのだ。
だからといって、遊郭で暮らし遊女や男娼に育てられた俺に、これ以外出来ることもない。だから、外に憧れたことなんて無かった。

否。一つだけ……たった一つだけ、けれど胸が焦がれるほど、惹かれることはあった。それは、柵の外でなら、彼の人と……太宰と、手を繋いで、歩けること。太宰と暮らして、朝起きて一番に太宰の顔を見て、お早う、と挨拶を交わして、太宰の吐いた空気を吸って生きることができること。

外に出られたら、それが叶うかもしれない。太宰に愛してもらえたら、そうなるかもしれない。一人の人間を愛し愛されることさえ許されないこの柵に囲われた屋敷の中では、到底叶わないこと。ただ、湯気でぼんやりふやけた頭で、数刻前まで愛のない男に抱かれていたこの躰を湯槽に浸からせて、微睡みながら想うだけ。願いなどしない。ただ、妄想、瞑想、想像。

あと、半月。半月で、太宰に会える。あと半月、俺は他の男に躰を売りながら、どうにか生きる。太宰に会える。それだけが、俺の生き甲斐だった。長風呂で温くなってしまった湯槽には、これっぽっちも生きた心地を感じない。早く、早く、太宰に逢いたかった。

一つ息をついて、ざぶんと勢いよく立ち上がった。そして、湯槽から出た。
もう、半月の辛抱だと、唇を噛み締めて。
磨り硝子の扉の向こうにいる、次の客が来たと報せに来た世話係の元へ歩いていった。

*  *  *

「どうか、また会いに来てください」

勿論だ、と興奮が覚めやまない紅潮した顔で頷く男に、心中でこっそりと、うそ吐き、と呟いて、それでも笑顔を崩さずに、手を振った。
名残惜しそうに何度も振り返りながら去っていく男に、まるで別れを悲しむような歪めた顔を送り、完全に見えなくなると、そっと手を下ろした。どうも、太宰以外とやるのは心だけじゃなく躰も重い。鈍く痛む腰に手をやって、まだ感触の残る下半身を撫でた。溜め息をつき、部屋に戻ろうとしたとき。「中也さん」と声がして、振り向くと男娼の世話をしている少年がいた。頬に十字の傷がある少年は朗らかに、

「主様がお呼びです。主様の部屋へいらしてください」

と伝えてきた。
主<ボス>が部屋に呼ぶなんて、珍しいな……。滅多に呼びはしないのだ。
少年は俺を呼んだ内容は知らないようで、朗らかに、俺を導いてくれる。少年は笑顔だ。笑顔で、口調も柔らか。なのに、どうしてだろうか。歩きながら、むかいながら、胸に手をやりぎゅっと抑えた。

どうしようもなく、悪い予感がする。

そして、その予感というのは大抵、当たるものなのである。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.151 )
日時: 2019/11/17 16:48
名前: 枕木

幸せも不幸もない囲いの中と、
幸せも不幸もある囲いの外は、

どちらが、いいのだろうか。

「良かったですね」

主<ボス>の部屋からぼんやりと出てきた俺に、少年はそう云った。悪気などないのは判っている。けれど、何の悪気もなく放った一言が、無知で無垢な少年が笑顔で云った一言が、心を深く抉ることもある。

「お幸せに」

そして、その傷は半月経っても癒されることはなかった。

*  *  *

月の終わり、夕方から朝まで、椿の間。

「これが中也君の最後の仕事になるねえ」
「……はい」

主<ボス>は、にっこり笑って頷いた。俺も、何とか笑顔をつくった。

妖艶、純粋、明るい、あざとい、可愛らしい、美しい、儚い……

幼い頃から、沢山の表情を、笑顔を、つくることを教わった。上手くやって、客を喜ばせることもできている筈だ。だが、今の俺は……判らない。今俺は、どんな笑顔をつくっているのだろうか。

「中也君」

ふいに、主<ボス>が俺の名を呼んだ。ぼうっとして、うつむいていたらしい。慌てて表情を作ろうとして、その間も与えず、主<ボス>は笑顔のまま、云った。

「今日までは、君は誇り高い美しき花魅だ。判っているね?」

喉元で何かがつかえる。鉛のように硬く重く、息を詰まらせる。苦しくて、胸を抑えた。否……平気。平気だ。大丈夫。判ってる。判ってる。……判ってる。

「はい」
「うん」

短くそれだけを交わして、俺は立ち上がり、背筋を伸ばした。そして、一歩一歩、確実に、歩を踏む。
半月前も、こうして歩いていた。目の前に少年が立ち、その後ろを歩いた。あのときはきっと、意識せずともこうして美しく歩けていただろう。否、もしかしたら上の空で、全く出来ていなかったかもしれない。嫌な予感に胸を抑えて、そわそわして。だが、一つだけ確かなことは、


若しあの日に戻ることが出来るのなら、俺は決して主<ボス>の部屋の扉を開けはしなかった。

*  *  *

すれ違う人々の、驚いたような顔をして、振り返って背中まで追いかけてくる、沢山の視線を感じたが、無視をして歩いた。俺は、決して遊郭を歩き回ったりしない。自分の部屋と部屋から出たところで見える中庭を前にした縁側だけが主な活動範囲だ。主<ボス>に呼ばれ奥まったところにある主の部屋へ行くときだけが、俺の、ほんの僅かなそれの機会になる。男の花魁となれば噂は下級の遊女や男娼にまで噂は流れるようで、ひそひそと興奮気味に俺のことを囁き合う声も聞こえた。嫌な予感が、益々強くなる。どろどろして、気持ち悪い。
だが、目の前には立派な、金糸の入った襖。主の部屋だ。不愉快な顔をすることなど許されない。
ふうー……と大きく息を吸い、窺うような視線を向けてくる少年に「ありがとな、もういいぞ」と云って立ち退かせた。少年が走り去ったのを確認し、襖に向き合う。矢っ張り、嫌な予感がして、胸の中がどろどろしている。今なら、逃げられるかもしれない……と躊躇っていると、「遠慮なんかしないで、入ってきていいよ」と中から声がした。ごく、と生唾を飲み込む。

もう、逃れられない。

「失礼します」

襖を開けた。そこには、机を前にしてにこにこ微笑む主がいた。
否、可笑しい……何か変だ。こんな笑い方を、する人だっただろうか。

「まあ、座り給えよ、中也君」

促されて、丁寧に断りながら、机を挟んで主の前に正座した。主は相変わらず機嫌が良さそうに笑っている。そして、俺が佇まいを落ち着かせたのを待ってから直ぐに口を開いた。

「いきなりだけど、本題に入ってしまうね」

それを聞き、心臓がばくばくと激しく鳴る。背筋がぴんと伸び、動けなくなる。無意識に、太股に置いた手に力を込めていた。聞きたい、でも、聞きたくない。いやだ、いやだ、いやだ

「実はね」

やけに、ゆっくりに見える主の口の動き。三日月形に開いた口。そこから、発せられた声が、空気を揺らし届いて、鼓膜が震える。そんなことまで感じていた。うるさかった心臓の音が、急に聞こえなくなった。否、全ての音が、なくなる。急に、目の前から鮮やかさが、現実味が消える。血液が一気に冷たく重い液体と化して、すっと躰を冷やしていくような。脳内が空っぽになって、何も、考えられなくなって。これが、絶望ってやつなんだろうな。と、後に思う。でも、その瞬間はただ躰が一気に冷たくなって、笑う主の口元だけが切り取られたように鮮明で、それ以外は何も判らなくなった。
嗚呼、いやだ。いやだ、いやだ、いやだ……


「君の、身請けが決まったよ」


いやだ。


*  *  *

襖を開ける。そして、挨拶をしながら入って、襖を閉めた。正座をして丁寧に手をつく。……頭を上げられずにいた。落ち着け、落ち着け……

「やあ」

声が降ってくる。主でも姐さんでも誰のでもない、ただ一人の、愛しい人の、低くも高くもない、のんびりとした、声。
鼻の奥がつんとして、唇を噛んだ。なんだよ、俺。これだけで……。しっかりしろ。
口角を上げようとしてひきつって、それでも無理矢理持ち上げて、顔を上げた。

「ご指名、有りが……」

思わず、声が途切れた。言葉を、発することが出来ない。

柔らかい、茶のかかった黒髪。全てを見通してしまう、時々ふとしたときに素を出すように濁る澄んだ鳶色の瞳。相手を畏縮させない、柔らかな口元。余りに整った顔立ちと、きめ細かい色白の肌に巻いた包帯に、何時もの茶色の着流しの上に羽織った黒色の着物。窓は閉ざされていて、卓上に酒はない。蒲団の上に座り、ただ黙って、俺を見ていた。その瞳を見て、もう何もかも判っていることが判った。

「太宰」
「うん」

掠れた声で呼んだら優しく返事をされて、
もう、無理だった。

「太宰……ッ」

息が詰まる。立ち上がって、もつれそうになりながら彼に駆け寄って、彼が広げた腕の中に飛び込んだ。

「太宰、太宰、太宰……ッ」
「うん、うん、うん」

俺が呼んだ分だけ返事をして、太宰はぎゅっと俺を抱き締めた。
筋肉も贅肉も俺よりなくて、背ばかり高くて、だから、こうして収まってしまう太宰の胸が、何より好きだった。太宰のにおいも、体温も、全部、全部がいとおしい。ずっとここに居たい。ずっと、ずっと、太宰と、一緒に。

「俺……ッ 俺、俺は……ッ」
「うん」
「俺、本当、は……ッ」
「うん」
「本当は……」

喉につかえたものが、あるいは俺の中の無意識の自制心が、その先を云わせてくれない。本当の気持ちを、伝えさせてくれない。太宰だけ、太宰だけなんだ。太宰だけに、この気持ちは、あるんだよ……なのに……なんで……? なんで、どうして、声が、声が……

「うん。判ってるよ、判ってるから、中也」
「ッ……」
「もう、いいよ」

太宰の顔を見たかったが、胸の中に押さえつけられて、それは叶わなかった。
暫く、そうされていた。太宰の着物が濡れることはなかった。けれど、太宰は「もう泣かないで」と云い、腕を離して顔をあげさせて、口づけをしてきた。目を瞑ったままだったから、その瞬間の太宰の顔を見ることはなかった。でも、背中に蒲団の感触を感じて目を開けた瞬間、心臓が潰れそうになった。
太宰、太宰。なあ、太宰。俺は、俺はな……
云いたい言葉が一つだけある。けれど、云ってはいけないのだ。云ったら、きっとこいつは困った顔をして、心臓を潰すのだから。

だから、それをひた隠しにして、太宰の背中に手を回した。口づけをする。
そして俺は、太宰治に抱かれた。

奥まで深く深く繋がって、強く強く手を繋いで、一度も、太宰の鳶色の瞳から目を逸らさずに。言葉は、一言も交わさなかった。そうして、夜になって、気づいていない振りをして眠っている彼に、伝えられない想いと引きかえに呟いた。「さようなら」と。

さようなら、愛しい人。どうか、幸せで。

そっと蒲団から抜け出し、襖を開けて、出て、後ろ手に閉めた。
幸せな時間だった。この上なく、幸せな時間。
この思い出だけで、生きていこう。きっとできる。それだけで、きっと。

俺は幸せ者だなァ、太宰。

振り向かずに、歩いた。

口づけは、しなかった。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.152 )
日時: 2019/11/26 05:12
名前: 枕木

明け方、俺は生まれて初めて屋敷を出た。

初めて屋敷の門の敷居を跨いで、辺りをぐるりと見回せば、そこは竹林だった。目の前に車に黒い車が止まっていて、鬱騒と生い茂る竹林を切り開くように下り坂の道が続いている。よくもまあ、こんなところまで来ようと思うなあと、場違いな感心をした。
もう生まれ育った屋敷を振り返る気はなくて、運転席から降りてきた背広姿の男が、車の後部座席の扉を恭しく開けるのを、ぼんやり見ていた。まず最初に出てきたのは、綺麗な革靴だった。傷や汚れのない、革靴。
そういやあ、俺は幾らで買われたんだろうか。主は、「君が十年かかっても儲けられないくらいの額を積まれて、断ることは不可能になったのだよ」と云っていた。換算したことはないが、俺の一年に稼ぐ額だけでも、三人家族が一生贅沢に暮らせるくらいの額にはなる筈だった。そうしたら、幾らになったのか。
いかにも成功者なその革靴を見て、そんなことを考えた。彼奴の靴は、傷だらけで緩んでいて、だらしがなくて、こんなのとは比べ物にならねェよなァなんて、微笑みながら。

「噂に聞いた以上の美人だね」

はっとして、顔を上げた。足元ばかり見ていて、ぼうっとしていたのだ。見れば、長身で長髪の、外套や襟巻きで不自然なくらいの厚着をした色白の男だった。見覚えはない、が、隣の主が笑みを浮かべているのを見ると、彼なのだろう。彼こそが……俺の、一生の主なのだ。

「初めまして。私は蘭堂。よろしくね、中也君」

笑みを浮かべ、手を差し出してきた。手袋は、このために外してくれたようだ。品のいい育ち方をしたのだろう。矢っ張り、彼奴とは大違いだ。彼奴のことを考えると、自然に笑みを浮かべることができた。だから、その表情のまま、手を握った。そして、彼の……蘭堂の瞳を、みつめた。鳶色では、ない。勿論、それは。な。

「宜しくお願い致します。どうか、」

末永く、と云おうとして、「う」の口のまま固まった。あっ、やべ……慌てて、笑顔でそれを誤魔化した。

どうしても云えなかった。何故か、は考えたくない。でもきっと、その内忘れるだろうから。そうしたら……

「では、貰いますよ」
「はい。どうぞ」

そんな会話をする主を見上げると、主も俺をみつめた。俺は、すっと頭を下げた。

「今まで本当に有り難う御座いました。この御恩は一生忘れません」
「うん。此方こそ、今まで有り難う、中也君。元気でね」

黙って、頭を下げたまま、蘭堂の元へ歩いていった。そして、蘭堂に「さあ」と促されるまま、車に乗り込もうとした、その瞬間。背中に、声が刺さった。


「お幸せにね、中也君」


目を見開き、血液が凍り付くような感覚に、硬直した。
嗚呼、嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼……
貴方は、ここでその台詞を吐くのか。
ぎゅっと唇を噛み締め、絶対に主はもう見るまいと、車の中に滑り込んだ。その代わりに、隣に滑り込んできた新たな主に微笑みかけた。蘭堂は頷き、顔を綻ばせると、召し使いなのであろう運転席の男に「出してくれ」と指示をした。
そんなにエンジン音もなく、静かに、車が滑り出していく。少しずつ少しずつ、離れていく。目を瞑って、瞼の裏に浮かんだ包帯に、そっと別れを呟いた。

さようなら。さようなら、俺の全てよ。さようなら、愛しい人よ。どうか、いつまでも。

*  *  *

可笑しい、と感じたのは、車が発進してから一時間ほどたった頃だろうか。
蘭堂は落ち着いた静かな口調で、とりとめもない世間話をした。それが不思議と心地好く感じられて、俺もそれに応えて、それなりに楽しい時間を送っていた。だから、気がつかなかったのだ。いつまでも終わらない、竹林に。

「あの……」
「うん?」
「街に……向かっているんですよね?」

以前、客が此処に来る間に雨に降られて大変だったと話していた。だから、時間はどれくらいかかるのですかと、特に意図もなく訊いた。客は、街の外れに住んでいるから二十分くらいで来られるよ、と返した。それに対して俺は、ではそれなら何時でも会えますね、なんて云って客の上に股がったのだが、それはもうどうでもいい話だ。山を登って二十分、詰まり、遅くとも三十分もあれば山を降りられる筈なのに、そんな時間はもうとっくに過ぎている。
蘭堂は、にこっと笑った。
……え?
その笑みに、背筋がぞわっとした。

「どうしてそんなことを訊くのかな?」
「え……」
「街に降りたいのかい?」
「……向かっているのは、貴方様のお家ではないのですか……?」
「誰もそんなことは云っていないよ」

車が、止まる。周りは、あの中庭ほどの大きさの原っぱになっていて、竹も遠巻きだった。きっと、この辺りの竹を伐採したのだ。なんのために?
蘭堂が、更に笑みを深くする。背筋に冷や汗が流れる。何か……何か、やばい。やばい。

「ねえ中也君。私は、何の為に君を買ったと思う?」

普通なら、性奴隷にするため、とか、伴侶代わりにするため、と答えるところだ。しかし、こう質問するからには、違うのだろう。
真っ先に頭をよぎったのは、人身又は臓器売買だった。否、違うだろう。俺は体格だけ見れば普通の男だ。それをしたいなら、態々高い値のつく男娼を買う必要はない。もっと安く、寧ろただで買える人なんて其処ら中にいる筈だ。それなら、何故……

思考を巡らせていると、蘭堂は突然、片手で俺の顎を掴み、蘭堂の顔を見ろと持ち上げた。手が、冷えきって冷たくなっていた。蘭堂はにっこり笑っていた。

「私が思っていたよりもずっと、君は賢かったようだね。けれど、車に乗り込んでしまったのは、賢明な判断ではなかったようだ」
「ッ……」

俺はこれから傷つけられる……否、殺される、らしい。視界の片隅に、運転席の男が刃物を光らせたのが見えた。背筋にひやりと悪寒が走り、動けなくなった。ただ、楽しそうに微笑んでいる蘭堂を、見上げていた。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.153 )
日時: 2019/11/27 17:44
名前: 華蓮

お久しぶりです!
相変わらず素晴らしい作品ありがとうございます(*´∇`*)

だ、だだ大好きだなんてそんな…///
こんな素敵なもの書く方にそんな言葉をかけて頂くなんて…(*/□\*)もう死んでもいい……

更新待ってます!愛してます!
また来ます!(((語彙力皆無