大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.163 )
日時: 2019/12/15 08:15
名前: 枕木

今日は時間もあるからと、店が揃う駅前へは徒歩で行くことにした。ぶらぶらと、とりとめもなく会話をしながら、歩いていく。
そうしながら、うなじがピリピリするのを感じていた。気にしないように努めたが、ヒソヒソと話し声まで耳に入ってきて、苦笑いがこぼれた。太宰も察したようで、俺の苦笑いに釣られるように、眉をひそめた。

「気になるかい?」
「……まあ、ほんの少し、な」

太宰が、そっと辺りを見回す。すれちがう人々が、俺の腹を見て、ザワザワしているのだ。
はあ、と溜め息をついた。

「悪ィな、太宰」
「何で謝るの」

少し怒気を含んだ声音で、太宰が云う。
まあそれもそうだよな、仕方のないことだ。と頷くしかなかった。

世間体とか、俺も太宰も気にするタマじゃない。けれど、矢っ張り、気分が悪い。何故こんなに注目されるかって、妊娠・出産のできる男性がいると発表されてから、その例があまりにも少ないからだ。例え器をもっていたとしても上手く腹の中で育たなかったり、そもそも種付けができなかったりする。同性での恋愛自体、普通のこと、という認識は低い。

だから、こんなに腹の膨らんだ男が男と連れだって歩いていたら目立つのは当たり前だし、奇異の目で見られヒソヒソ噂されるのも当然だ。男同士で、そういうことをしたのか……と妊娠するにあたる経路を想像し、囁きあい爆笑する人もいた。

矢っ張り、そういうのは気分悪いもんだろ。

「……中也……」

太宰の顔を見上げ、微笑んだ。

「そんな顔すんなよ。そこまで気にしてねェ」
「でも、気分悪くしたでしょう」
「まあ、多少はな」

ふう、と息をついた。この生活が、あと四ヶ月ほど続く。そうして産んで、育てていく。長い長い人生だ。それなら、これくらいのことは慣れねェと。
だから、心配すんな、と傍らの夫に笑いかけた。

「このくらいのことはどうってことはねェよ。
……考えなきゃいけねェことは山程あるぜ」

そう。決して楽観的にはなれない。危惧しなくてはならないことは、山程ある。こんな些細なことはどうでもいい。もっと危険な、命に関わることもある。

……それでも。それでも、産みたいと思った。産むと決意した。太宰と俺の、もう何人人を殺めたか判らない手で、子供を育てようと決めた。

守りたい。俺の、俺たちの、大切なものを、全部。

「男らしいなあ」

俺の思考を読み取ったのか表情から何かを読み取ったのか、太宰がくすくす笑う。俺はにやっと笑い返した。

「まあ、一先ずデエトを楽しもうぜ」
「そうだね」

差し出された手を握って、並んで、歩いた。
この先に待つものも、今はどうか、姿を見せずに。二人の時間を、邪魔しないでくれ。
もう少しだけ、どうか。