大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.192 )
日時: 2020/04/17 21:54
名前: 枕木

妊娠してから、一年が経過した。
十月十日とされていた出産予定日をとうに過ぎているが、特に異常は見られないようだった。

いや、異常はないといっても普通の妊娠とは違う。予定日を2週間過ぎたとき、太宰と病院へ行った。何かあったんじゃねぇかと思ったからだ。エコーで見た医師は、予定日を過ぎている割には平均より大分小さい、と云う。

「成長が止まったってことか……?」
「いえ、ほんの少しずつですが成長はしています。しかし二十四週目で見たときまでは普通の妊娠の経過と同じでしたから、遅くなっているのは事実です。丁度いま二十五週目と同じくらいですから、このまま成長していけば約一年で出産できる大きさになるかと」

矢っ張り普通に妊娠して普通に出産して……とはいかねぇか。まず俺らの存在が普通じゃねぇし。

「あまりに例の少ない出産になりますから、慎重に、あと二ヶ月様子を見ましょう」

相変わらず俺らに怯えた顔の医師に頷いて、ふと部屋の角に立つ夫を仰ぎ見た。太宰は憂い顔でじっと映像の我が子をみつめていた。何を思ってみつめてるんだろうな、こいつ。

そう考えながら太宰をみつめていれば、突然、彼の口元が、ふっと微笑んだ。驚いて声をかけようとしたが、その前に太宰がぽつりと呟くように云った。

「君に似て、暴れん坊だね」

絶え間なく躰を動かしているのが、映像でも確認できる。なにより、腹を蹴って外に出たがっているのがいつも感じられる。

うっせ、と笑えば、太宰も幸せそうに微笑んだ。

大丈夫だ。なんたって、俺たちの子だからな。


……そうやっていたのが、二ヶ月前の話になる。もう腕の中にいるはずの我が子は、俺と繋がったままだった。大きさはもう充分で、元気に動いている。しかし、一向に陣痛がこない。

俺は、本当に子供を産める躰なのか?
女じゃねぇ躰だから、赤ん坊が……

『もうこれ以上は……様子を見るしかありません。しかし、もう産める大きさで長く妊娠していると、母体にも影響が……』

太宰は、その言葉をずっと気にしてるようだった。でも、決して口には出さなかった。太宰も俺も、自分たちの子供を信じて待ち続けると決めていた。

何より安心する温度に包まれて微睡んでいた夕方。突然、見知った着信音が部屋に鳴り響いた。一気に目が覚める。思わず、同じように目を覚ました太宰と目を見合わせた。


着信を告げたのは、仕事用の携帯電話。
表示された名前は、『首領』だった。

……否、でも、なんか、なんで。

どうしようもなく不安になって、自分の腹を……我が子を抱き締めた俺の背中を、太宰が安心させるようにそっと擦った。

鳴り響いていた着信音が俺の耳元でぷつりと途切れると、聞こえてきたのは、半年前に聞いたっきりの物腰穏やかな、しかし背筋の凍るような冷徹な声だった。

『やあ。突然すまないね。元気かい、中也君?』

ごくりと喉を鳴らした音が聞こえていないか、不安で仕方なかった。肩を抱く温度に支えられて、口を開いた。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.193 )
日時: 2020/04/20 06:53
名前: 枕木

「手前は此処までだ」

後ろの靴音がぴたりと止まる。首だけで振り向けば、僅かに顔を歪めた夫が、車の前で、外套のポケットに手を入れ直立不動で立っていた。
随分行儀が良くなったもんだな。まあ、助かるが。

太宰は、揺らぎのない瞳で俺をみつめた。予想はしていたんだろうな。俺が首領には一人で会うって。もう表情はいつも通りに戻っていて、ただ、肩を軽くすくめながら「そう、気を付けてね」と軽い口調で云った。

俺はそれを黙って受け取って、彼奴から離れていく。入り口に向かって真っ直ぐ歩くと、警備の男たちが俺に気付き、慌てたように駆け付けてきた。躰を舐めるように見られて驚いた顔をされるのはもう慣れた。いくつも投げられる労いの言葉を受け流しながら、ポートマフィア幹部として、久しぶりに基地へ足を踏み入れた。

数々の視線や声を全部無視して、ただ、上を目指す。考えることは山ほどあって、他に構う暇なんてねぇ。

ぎりっと奥歯を噛み締めた。先刻の太宰の歪んだ表情が脳裏に甦る。

……嗚呼、判ってる。ったく、手前と何年居ると思ってんだ。そのくらい、気を付けてねの一言で判る。俺だって、そのくらいは予想ついてんだよ。

帽子を被り直し、外套を少し払った。

……判ってんだよ、そのくらい。

ノックを三回。「どうぞ」と穏やかな声がして、静かにドアノブに手をかけた。片方の手で、我が子を守る。これはもう、癖になっていた。

扉が開く。

「やあ、久しぶりだね。元気にしていたかな、中也君」

待ち受けるのは、未来を変える分岐点。

……問題は、どれだけ時間があるかってことだろ? 太宰。

*  *  *

上等な机に両肘をつき、手を組んで微笑む彼を一瞬で確認すると、さっと帽子を取った。そして片膝をつこうとすれば、「ああ、結構だよ」と声がかかった。正直助かった。今この体勢は大分きつい。

「では、お言葉に甘えて」
「楽にしてくれていいからね。休みをあげると云って呼び出したのは私なのだから」

帽子を胸につけ、直立不動で彼を真っ直ぐみつめる。闇に溶けるような黒髪と洋服、年相応の皺が刻まれた中年の男。真意の読めない笑み。

俺はこのお方に、この血潮を、この肉体を、全て捧げた。この組織を、このお方を守ると誓った。偽りは無い。俺はこのお方の奴隷だ。それは一生変わることは無いだろう。

けれど、俺にはもう一つ、守るものが出来たんだ。

守らなければいけない。

彼奴と二人で、守ってみせる。

首領を真っ直ぐ見つめて、すっと床へ視線を落とし、出来得る限りで頭を下げた。

「首領の配慮には感謝しています。俺の影響で組織が被った損失は、必ず俺が」
「それなんだけれどね、話というのは」

床をみつめたまま、そっと息を飲み下した。

……矢っ張り、その話か。

変わらない穏やかな声だが、責められている。一歩間違えればこの場で殺されるほどの危うさがある。話の結末はもう見えた。覚悟はしている。首領が無償でこんなに長い休暇をくださるとは思っていない。それでも、犠牲になるのは俺一人じゃないとならねぇ。

「頭を上げてくれるかな、中也君」
「はい」

すっと背筋を伸ばせば、果てのない闇が広がる瞳とぶつかった。
……もう、後戻りは出来ねえな。否、そんなの、疾っくに判ってる。

産むと決めてから、覚悟はしている。

だから、ただ真っ直ぐに首領をみつめた。

首領は暫く俺の真意を探るようにみつめていたが、ふいに、ふっと失笑を溢し、組んだ手に顎を乗せ目を瞑った。

「母は強し、というのは本当なのかもしれないねえ」
「いえ、お言葉ですが首領。俺は今、ポートマフィア幹部としてここに立っています」

すっと瞼が開き、薄笑いが浮かんだ。

「ほう。……そうだねえ、君はとても優秀な構成員だ。マフィアきっての対術遣い。強力な異能力も持ち合わせる、圧倒的に強い存在だ。組織の為によくやってくれているよ」
「有り難う御座います」

頭を下げ礼を云うのも、唯の時間稼ぎに過ぎない。話の持って行き方は予想通りだった。つまり、行き着く先は……

「だからこそ」

深い闇が、首領の背後に広がる。俺は闇の中で生きる人間だ。そう決めたのは俺だ。決めたのは、俺だった。十五のときに、そう決めた。それでいい。俺は、生まれた瞬間からこの闇に一人で居たんだ。
でも……でもな、俺は……

そっと腹を撫でる。首領の口角が上がり、開かれる。


そしてとうとう、待っていた言葉が発せられた。


「君が生んだ損失は、余りに大きい。……君一人では、到底埋められないだろう」

続く言葉は、判っていた。表情は変えない。ただ真っ直ぐに、みつめ続ける。

「私は、君が恩を仇で返すような人間だとは思っていない。厚意は利子を伴って返ってくるべきだ。そうだろう?」
「はい」

きっぱりと肯定すれば、首領が、おや、と面白がるように声を上げた。

「成る程ねえ。流石、太宰君の相棒だ」

此処で、太宰の名が出されるってことは。否、悪意を感じる云い方だがそういう話じゃない。これは俺と太宰の話じゃねえんだ。

「否、太宰君の奥さん、と云った方が良いかな」

からかうような口調は受け流す。首領は気にせず、にこりと微笑んだ。

「太宰君のことも、私は高く評価していたよ。否、今でも必要とする優秀な人材だ。君と太宰君は、長けた部分は違えど互いにひけを取らない、最高のコンビだった。……そしてその二人が夫婦となり、血を分けて育んだのが、今君のお腹に宿る命だ」

何よりも恐れたこと。
太宰の歪んだ顔が脳裏を横切った。

これは、太宰と俺の話じゃねえんだ。

首領が親しみさえ感じる笑顔で、口を開いた。

そう、これは。

「私はね、期待しているんだよ。何せ、中也君と太宰君の遺伝子をもっているのだからね」

これは、未来の話。

「元最少年幹部と、現幹部の子供だ。それなら、と。私はね、期待しているんだよ」


俺と太宰が守ってゆく、まだ顔を見せない我が子の話。


「マフィアに尽くしてくれる、優秀な子になってくれるんじゃないかってね」


大丈夫。

絶対ェ守ってみせるからな。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.194 )
日時: 2020/04/20 11:34
名前: 枕木

電話を切り、少し時間が流れた。俺も太宰も何も云わなかった。俺は黙って立ち上がり、帽子を手に取った。

「……中也」

そこで、太宰が口を開いた。

「中也」
「ああ」

振り向かずに、首を動かさずに、頷いた。それだけで、俺たちは伝わる。抱き締められた温度で、伝わる。

躰に回された太宰の包帯を辿って、左手に触れた。薬指に、かたい感触。視界の隅で光を放ったそれに安堵して、少しだけ胸の中で目を閉じた。


太宰の意思と、俺のは同じだった。
当たり前といえば、当たり前だった。

表情も姿勢も一切変えずに、薄笑いの首領に口を開いた。

「それは、俺が生んだ損失をこの子で埋めるということですか?」
「そう受け取っても良い。君にはこれから、子を育てるための時間も必要だろう? それを二年あげたとしても、二年半だ。その間、ずっと五大幹部の一席は空いている。ましてや、あの中原中也の席だ。その莫大な空白を埋められる人材が、そう何人もいるとは思えない」

首領からの過大評価も、今は俺を追い詰めた。

受け取ってもいいと仰るが、そう受け取るしかないでしょう?

時間稼ぎの言葉を探していれば、首領が先手を打った。

「それに、君。難産なんだろう?」

思わず息が止まった。首領が口角を更に上げる。

……あの病院は、マフィアの傘下だ。首領に情報がいくのは当然だ。そんなのはいい。

それよりも、首領の笑みを見て一つの可能性に思い当たって、血の気が引いた。否、真逆……

「マフィアが抱える医療部隊[チーム]は、少なくともヨコハマでは最先端の技術をもっている。設備も整っている。残念乍産婦人科という訳ではないけれど、彼らに任せれば安心だろう」

否、真逆。
けれど、俺たちも思わなかった訳じゃねえ。俺と太宰の子だ。出来損ないと云われる子でも善かったが、恐らくそんなことは無いだろう、と。

「それに君、忘れた訳じゃないだろう。君の存在は、荒神を封印する器だ。出産時に何が起こるかも判らない。もしかしたらそれは、赤子の方かもしれない」

もしかしたら、世界を壊す力をもつ子が産まれるんじゃ、と。俺の存在が、正にそれだからだ。

出産には太宰が立ち会うことになっていたが、それも怪しいのかも知れなかった。

首領がここまで期待するのも、俺らと変わらないということだ。首領が、組織の利益になると感じたのなら。

首領は、あらゆる手を遣ってこの子を組織の人間にするだろう。


マフィアの首領が、傘下の病院に、一人の患者への処置を怠れと云うなんて、林檎にナイフを刺すより簡単なことだ。


首領は依然として微笑んだままだった。一方で俺は、頭の中まで真っ白になって、立っているのもやっとだった。

もうマフィアの手が伸びているのなら、逃げ道はないのか。この子を守る手は残っていないのか。

立ちすくむ俺に更に追い打ちをかけるように、幾分か軽くなった口調で首領は云った。

「将来有望な人材の育成という名目なら、五年間、君に子供を育てる時間をあげよう。子供は母親を求めるものだろう? 五才になったら、一緒に出勤してくれば善い。構成員が責任をもって君の子の面倒を見てくれるだろう。その方が、君も安心できるよねえ」

くらりと目眩がして、堪らず顔を伏せた。

……首領は、俺たちの子を完全にマフィアの犬に育て上げる気だ。マフィアに育てられ、マフィアに恩を感じ、マフィアに尽くす、従順な犬。


もう、崖っぷちまで追い込まれた。


「……俺は」

俺はまだ、何も云えていない。予想が甘かった。相手はマフィアの首領だ。本気で手に入れようとするのなら、俺一人で太刀打ちなど。

俺の子、というより、太宰の子だからか。太宰の代わり、否、それ以上の存在になるのかもしれない、この子が。太宰が手に入らないのなら、この子を。そういう事なんだろう。

……太宰と一緒じゃなくて、本当に善かった。

すう、と息を吸い込む。

御免な、未来を奪っちまって。

「俺は、自分が生んだ損失くらい、自分で埋められます」
「ほう」

首領の目が細められる。

御免な。俺と太宰と、三人で暮らす未来を奪っちまって。

「二年半も、かい?」
「いえ。半年」

御免な。

「半年分、頂く筈だった五年間で埋めます」

首領が満足げに笑みを浮かべた。

遣える“であろう”子供を期待して更に五年を潰すより、遣えると判っている俺を五年ほぼ無償でこき遣う方が、利益が上がる。そういう考えもあるだろう。首領の選択肢にもあった筈だ。

「それで善いのかい? 君は。……太宰君も」

紡ぐ筈だった「はい」が喉につっかえた。太宰の、我が子を映像でみつめていたときの、幸せそうな笑顔が脳裏に甦る。太宰が笑う未来とは、程遠いものになるかもしれない。


それでも善かった。

この子には、光の下で生きて欲しいからなァ。


「だざ」バァーン!!

俺の言葉を遮って、勢いよく扉が開いた。驚いて振り返った俺は、思わず目を見開いた。

どうして。手前は此処までだって、云っただろ。あのとき、決意は固めただろ。なんでだよ。

扉を開け放った男がずかずかと部屋へ入ってきて、俺の隣に並んだ。その目は俺を一切映さず、ただ真っ直ぐ、首領を捉えていた。

「私は納得していません。中也の一人よがりです」
「おや、突然の訪問に随分なご挨拶だねえ」

にこりと笑う顔が、みつめあう。思わず喉が鳴った。

「ねえ、太宰君」
「はい、森さん」

太宰、なんで来たんだよ。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.195 )
日時: 2020/04/20 15:00
名前: 枕木

穏やかな表情で見つめ合う太宰と首領の間に、静かに火花が散った。もう俺は、それを見守るしかねぇ。

先に口を開いたのは、太宰だった。

「単刀直入に云いましょう。私は、マフィアに入れても善いと思っています」

声を出しそうになって、必死で飲み込んだ。

おいおい、そんなの聞いてねぇよ。

その言葉には、流石の首領も驚いたようだった。

「ほう、意外だねえ」
「中也の考えは私と合致している訳ではない。あくまで中也の意見です。ですから、私の意見としては」

太宰の手が伸びてきて、声を出す間もなく肩を引き寄せられた。なんだよ、いきなり……

顔をあげて、はっとする。

いつになく真剣な顔で、太宰は前を見据えていた。

ああ、そうだった。

こいつは一度、俺から離れていった男だ。自分の意志でマフィアを抜けた、元最少年幹部。

こいつは、行くべき先を示した友が在れども、その道を自分で切り開いた。そう、俺が生きる深い闇の底から、光の下へと。

そんな男が父親なら。……それなら、この子の未来は。

我が子をそっと抱き締めた。


「己の道は、己で決めるべきだ」


静かに、太宰はそう云った。

光の下で生きて欲しいという俺の……母親の願いを断ち切って、太宰は……父親は、ただ先を見据えていた。

太宰が俺に回していた手を下ろし、歩を進めた。そして、俺の前に立ち、外套のポケットに両手を入れた。

「十五歳」

太宰は、云い放った。
ただ、その背中をみつめた。

「十五歳になったら、決断させます。己の道を。ポートマフィアに入ると決めたのなら、中也が生んだ損失の倍の利益を生むマフィアに、私と中也が育てます」
「ほう。では、それ以外の道を選んだ場合はどうする気かな?」
「その時は……」

なあ、お前の父親の背中、ひょろくて大分頼りねぇな。

だけど、その分、何もかも見通すような気味悪い眼で、お前のことをきちんと見てるみてぇだから。

「中也と私で、利益を出します。社長にはもう話はつきました」

ポケットから携帯電話を出し、その手をひらりと振った。薬指で輝きがあった。首領は満足げに目を閉じた。

そしてその目を開けたとき、我が子の未来は守られた。

「善いだろう。中也君、育児休暇は?」
「三年、お願いします」
「うん、そうだね。子供が十五歳になるまでは色々融通を効かせたいだろうしねえ」
「はい。有り難う御座います」

太宰の隣に進み出て頭を下げる。下げながら、腹をそっと撫でた。

父親の分も、俺が躰張って守ってやるから。


だから、安心して生まれて来いよ。


話は終わった。もう云うこともねぇ。

「では、これで……」
「あと一つ、森さんに云いたいことが」

驚いて、隣の男の横顔をみつめた。
太宰は、口元に笑みさえ浮かべ首領を見ていた。

他に云うことって、手前、何を……?

「何かな」
「貴方が、何か云ったのでしょう? だから、困ったことになっていましてね」
「何の話だい?」

とぼける態度は、明らかに太宰を面白がっていた。
俺だってそのくらいは判る。積り、通っている病院の話だろ? 俺が今、まだ子供を産めていないのは、何か治療が行き届いていないから。この子をマフィアに入れる為に脅す材料にするから。でもそれなら、話は着いたんだからもう言及する必要も無い筈だ。困ることって、それじゃあ、他に?

「医院長と上の人たちが細工をして、医師には全く伝えられていないのでしょうね。だから私も気付きませんでしたよ」
「ふふ、そうかい」

首領は意味ありげに笑うだけだ。一方で太宰の笑みは少しも笑っていない。否、全く判らない。一体、何が……

戸惑って太宰の横顔をみつめ口を開いた瞬間。
太宰が、云い放った。


「あのエコー写真も診断書も、全て偽物ですね」


…………は?


偽物?


順調に大きくなっていることがわかるエコー写真。元気に育っていますよ、と渡された診断書。男だと書かれていて喜んだ。


じゃあ、あれも全部嘘か?


困ったことって、何だよ。


おい、ふざけんなよ。



「……首領、それは事実ですか」

やっと出た言葉は案外平然としていて、ただ空虚で、何も考えちゃいなかった。

ふいに浮かんだ意味ありげな笑顔が、俺を絶望へと突き落とした。

「さて、どうかな。私では無いかもしれないよ」

嫌な予感は、これだったのかもしれない。首領に我が子の未来を定められる恐怖よりも、その全てが偽りだったという絶望。

いる筈の我が子を抱き締めた。とんとん、と蹴り返す微かな痛みが、唯一の救いだった。

……例え嘘だったとしても、ここに在る。

滅茶苦茶に蹴られる感覚で、やっと立っていられた。少し落ち着いて、太宰の声が耳に入ってきた。

「……ら、本当に困るんですよ」
「そうかい? そんなに困ることかな」
「はい。なんて云ったって……」

続いた言葉に、耳を疑った。


「ベビー服を、全てお揃いで二着ずつ揃えなくてはいけない。もう買ってあるんですよ、どうしてくれるんですか」


…………は?

「は?」

先刻から立て続けで目が回って、処理が追い付かなかった。

どういうことだ、それ。

太宰が、ふっと気が付いたように、嗚呼、と俺を見た。そして、顔をしかめて、親指で首領を指した。

「信じられる? あの人、中也に子供をマフィアに入れるって約束させて、二人ともゲットする積りだったんだよ。一人渡す、じゃなくて、子供を渡す、と云っただろうって云ってさ」
「……は? 二人って……」

太宰は呆れたように肩をすくめた。

「ね、そうなるでしょ? 私も吃驚したよ。そんなことの為に……


中也のお腹にいるのは一卵双生児だってこと、隠させてたんだよ」


時が止まったように感じた。

何度もその言葉を繰り返した。

一卵双生児。……双子。


この子は……双子。


大きく膨らんだ腹を撫でた。

二人いるのか、此処に。

それなら、悪いことしたなァ。

お前じゃなくて、お前らって呼ぶべきだった。

「ほら、これ。本当のエコー写真、医院長がくれたから」
「太宰君、日本語は正しく遣おうね。くれた、じゃないでしょう。脅したよねえ、君」

首領を嫌そうな顔で無視して、今度は右ポケットから一枚の写真を取り出して、手渡してきた。

その写真に、釘付けになった。

我が子の影が写っている。手足を丸めた人間の形をしている、その子は、その子たちは、確かに二人、俺の腹の中に居た。

「……二人」
「うん」

顔を上げれば、夫の優しい笑顔があった。堪らなくなって、額をその胸につける。

「っ……」
「うん、ねえ、中也」

躰に回された手が、そっと子供たちを撫でた。

「嬉しいね」
「っ……莫迦、二人も育てるの、どれだけ……っ」
「はは、そうだねえ。でも、大丈夫。二人で頑張ろう。大丈夫だよ、二人とも、元気に産まれてきてくれるから。だってさ、何て云ったって、」

左手が重なった。頭上から優しい声が降ってきた。


「私たちの子供たちだもの」


ああ、本当に。

本当に、俺は。

俺は、待ってるからな。

二人揃って、元気に泣いて産まれてこいよ。

「ああ……そうだな」

顔をあげて笑い合った。はっと気が付いて向きを変えれば、首領が呆れたように笑った。っ〜〜……やっちまった……

「お見苦しいところを……」
「まあ、今回は善いよ。確かに傘下の病院が君の診察にあたって細工をしたのは事実だからねえ」
「だから、貴方がやったんでしょう」
「さてさて、それは。ふふ。もう下がりなさい。産まれたら顔を出すよ」
「結構ですけど」
「もう、そんな顔をしないでおくれよ、太宰君〜」

露骨だなァ、太宰も。

と笑っていて。


ふいに、突然、それはきた。

「っ……!?」

ずくん、と躰の内側が大きく脈打つような感覚。目眩がして床に膝をつけば、躰の奥から激痛が走り、声をあげた。

「中也!」

叫ぶ太宰の声。駆け寄ってくる首領の靴音。また、ずくん、と激痛が走った。脂汗が浮かび、躰が冷たくなる。また、ずくん。

嗚呼……そうか。

お前ら、もう、俺の腹の中は厭きたよな。

もう、外に出て暴れてぇよな。

「森さん、医療部隊[チーム]は直ぐに呼べるの」
「問題無いよ。おや、外が……」
「太宰! 遅かったかい!?」
「いえ。今始まったところです。敦君、そのストレッチャーを……嗚呼、芥川君も来たの。じゃあ二人で持って」
「何故こやつと……否、致し方ない」
「そうだよ、お前の大事な先輩だろ! ほら、中也さん、大丈夫ですか……」
「太宰、お湯を持って来られるかい……」

一定時間をおいて何度も来る激痛に霞む意識。その遠くで、沢山の声と足音がした。

お前らのことは、俺が守るからな。

そう誓った俺を、何か沢山のものが守っていた。

今にも飛びそうな意識を何とか保っていられたのは、ふいに浮かんだ名前を、呼び続けていたからだった。

なあ、これがお前らの名前だ。

早く、呼ばせろよ。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.198 )
日時: 2020/04/20 18:05
名前: 枕木

命を育むことのできる器をもっているとはいえ、躰は普通の男だ。生まれて初めての陣痛に耐えられる女の躰は持ち合わせていなかった。

運ばれながら、ただただ激痛に襲われる。繰り返し繰り返し訪れる波の狭間で、幾度も意識が溺れかけた。けれどその度に、頬を叩かれて連れ戻された。

ぼんやりと目を開ければ、それは、

「しっかりするんじゃ、中也! 私はそんなひ弱な男に育てておらぬ!!」

と叱咤しつつも目に涙を浮かべる姐さんだったり、

「頑張んな! 今、アンタの子も一生懸命産まれようとしてンだよ!」

と鬼の形相をする探偵社の女医だったりした。

女は、強ぇな。

否、俺も姐さんに育てて貰ったんだ。強いに決まってる。そして、お前らも俺の子だ。そうだよな、お前らも生きようとしてんだ。俺も。

「中也さん、着きましたよ!」
「おい人虎、揺らすな。中也さんの躰に障るだろう」

消えかける意識を必死で保ちながら目を開ければ、眩い光と、マスクに手袋をつけた女や男が見えた。躰が持ち上げられ、大きな椅子に乗せられる。背もたれがぐっと倒され、天井を見上げた。バタン、と扉の閉まる音がして、突然、周りで聞こえていた声援や足音がなくなり、静寂に包まれた。「失礼しますね」と声がして、下着ごと脱がされる。足を開かされ、けれど寒さも感じられぬほど、痛みは強くなっていた。

「頑張って。もう大分開いていますからね。あともう少しですよ」

痛い、痛い、痛い、痛い。

うめいて、声をあげて、手に触れた肘掛けを必死で掴んだ。手袋の感触が無いと気付けるほど、理性は残っていなかった。息をするのもやっとで、「呼吸して。はい、すぅー……はぁー……」と声をかけられ、必死で呼吸をした。

「ぐっ……あああ……っ!!」

突然一際大きい波がきて、頭痛と共に激痛が走る。

その瞬間、必死に堪えていた一線がぶつりと切れた。掴んでいた右の肘掛けがバキッと嫌な音をさせて、俺の手の中で粉々になった。

「ああ……ぐああ……ああああああ……!!」
「抑えて! っ、堪えて! 頑張って!」

がく、がく、と躰が震える。けれど激痛は収まらなくて、怒りのような感情が燃え上がる。

「開いた! もう、出てきますよ! 頑張って!!」

叫ぶように言う医師の声が、遠ざかる。肘掛けが、左手の中でミシリと軋む。


痛ぇ……終わらせてぇよ。

でも、お前らが俺の元に来ようとしてんだ。

でも、もう。

否、もっと。

今にも押し勝とうとする衝動が、肘掛けを更に軋ませる。

ああ……もう。

嫌な音がして、掴むものの無くなった俺の左手が……

掴まれた。


「中也!!」


見知った声だ。

すうっと燃え上がっていた衝動が落ち着いてゆく。静かな意識で目を開ければ、俺の左手を両手で包み込んだ夫が、泣き出すんじゃねぇかと心配になる顔で、俺を見下ろしていた。

ひゅう、と息を吸い込んで、掠れた声で呼んだ。

「だざい……」

太宰は頷いて、ぎゅっと俺の左手を握り直した。

「中也。もうすぐ会えるよ。頑張ろう」

小さく、首を動かす。太宰は笑みを浮かべた。

ぐいっと更に足を開かされる。足の間に顔を埋めた男の医師が、「見えた!」と叫んだ。

生まれようとする意志が、圧迫感と痛みを伴って、迫ってくるのを感じた。

「頭が出ますよ! いきんで!」
「ひっ、ふっ、ふっ、」
「そう、その調子! 頑張って、もう少し!」
「中也……」

痛みを堪えきれなくて、太宰の手を握り締めた。


嗚呼、いってぇなぁ、コラ。

何時か、この痛みをお前らに伝える日が来るんだろうなァ。

「いきんで! もう少し!」
「ひっ、ひっ……ふぅ、ふ、ああ、あああ! ぐぁあああぁぁぁ……!」
「出た! 頭! もう一踏ん張り!」

ぐっと下半身に力を込める。

「中也……」
「ぎっ……ぐ、あ、う、うぅ、ぐ、う、ひっ」

手を、思いきり握り締めた。

「いきんで!!」
「中也!」
「ぎっ……ああああぁあぁぁ……!!」



お前らが必死に、生まれて来ようとしている。医師らも額に汗を浮かべて、お前らを助けようとしている。此処まで、沢山の声や手が支えてくれた。


そして、太宰がお前らの未来を躰張って守った。俺が一年間、腹の中で育ててきた。何時もお前らと会える日を、太宰と、全員で過ごす日々を祈って、命をかけて守ってきた。


なあ、絶対ェ守るから。

お前らの未来も、全部。


だから、来い。俺と、治の元に。


「中也、最後だよ。息吸って……いきんで!」


元気に、生まれてこい。


「う、ぐ、あああぁぁぁぁあああぁぁぁ!! 〜〜〜っ、〜〜っ!!」


ずっと腹の中にあった温かさが……消える。代わりに聞こえたのは、手際よく俺との繋がりを切る音が四回。そして、ばしゃばしゃとお湯がかけられる音。

もう親しみさえ感じていた痛みが消え、静寂が訪れる。


その静寂を打ち破ったのは、


「うぅ……」

小さな、うめき声。

そして、間髪入れずに、響く。


「おぎゃぁぁぁあああ!! おぎゃあああぁぁぁ!!!」
「ひっ、うっ……おぎゃぁああ!おぎゃあああぁぁぁぁぁ!!」


それは、二人分の産声だった。


二人が、初めて声をあげた瞬間だった。


「中也……!!」
「お目出度うございます!」

ぼやけていた視界が、頬を熱い雫が伝うと共に、泣きそうに笑う太宰の顔で一杯になった。

「元気な双子の男の子ですよ!」

太宰がそっと身を引いた。もう力の残っていない手を、太宰の手が引く。すると喧しい泣き声が近づいてきて……


目の前に、真っ赤な顔を皺くちゃにして、歯のない口を大きく開けて泣き喚く、赤ん坊が二人、やって来た。

「抱いてあげて。君の子供たちだよ」

太宰が、引いた手をそっと離した。


俺は、微かに震える手を、伸ばした。

両手で二人の頬に触れれば、「えっぐ……」としゃくりあげて、泣き声が止んだ。

柔らかい頬は、林檎のように熟れていて。

その温かさに触れてしまえば、声が掠れているのを、自覚していても。

名前を、呼んだ。

すると、二人はそれに返事をするように、ぱちっと目を開けた。

息を飲むような、澄みきった、

青色と鳶色が、俺をみつめるように開いていた。

涙を呑み込むのに必死な俺の胸に、二人はそっとやってきた。

まだ世界に慣れていない四つの瞳は俺の顔を見上げるように見えて、涙は意地でも呑み込んだ。

もう一度、二人の名前を呟いた。

二人は、それに応えるように、今度は顔を皺くちゃにして、泣き出した。


俺たちにも泣かせろよ、と笑うのは俺と太宰の声で、本当に喧しく、二人の泣き声が響いた。


けれど、その声と胸の中の熱さは、ずっと待っていた、何よりも愛しく大切なもの。


ぎゅうっと抱き締めれば、苦しいと抗議するように、全力で暴れた。太宰が笑い、扉の外で歓声があがった。

頬を伝うそれは、言葉じゃ云い表せねぇ。けれどそれは紛れもなく、お前らに溢れ堕ちた、

母親の涙だった。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.199 )
日時: 2020/04/20 18:07
名前: 枕木

ありがとな。

生まれてきてくれて。元気で生まれてきてくれて。

ありがとう。

私たちを、親にしてくれて。家族にしてくれて。


一生忘れられねぇよ。
忘れる訳がないでしょ。

それは、一生消えない汚れも浄化され、人間を辞めた人間さえ許されるような、

そんな、輝きに満ちた春の日だった。


治輝、春也。

それが、お前らが生まれた日。
俺たちが、私たちが、

家族になった日だ。




二〇二〇年四月二十日十八時七分
太中家族計画、成功
期間、三百六十五日

応援ありがとうございました。
えんど

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.200 )
日時: 2020/04/20 18:28
名前: 枕木

云うことは、ありがとうございます、しか有りません。

この一年間で、沢山の方に関わってもらいました。初めて感想をもらい、必要としてくれて、どんなに嬉しかったか。勇気を出して得られた感動が、どれだけのものだったか。沢山、沢山、学ぶことができました。閲覧数もコメント数も、こんなに増えて。全て0だった一年前が、本当に懐かしい。今ではもう、このサイト無しでは無理です。正直、嫌になって投げ出したことも一度や二度ではありません。書きかけの作品も、一体いくつあることやら(´∀`;)でも絶対戻ってきます。やっぱり大好きなんです。この場所が、小説が、太中が!(笑)

沢山沢山、作りました。小説も、思い出も、関係も。本当にありがとうございました。これからも沢山作っていきます。

これからも、枕木をよろしくお願いします。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.201 )
日時: 2020/04/29 08:06
名前: 枕木

何処までも何処までも落ちてゆくような。堕ちてゆくような。ただ、心地好い虚無。何も無い、底無しの絶望。それが一番心地好くて、死することとは、生きていないとは、そういうことなんだろうと。

何かが手の中にあれば、掴んでいた感触を知ってしまえば、もう知らなかった頃には戻れない。その感触が決して好ましいものでなかったとしても、それが無くなって喜びを感じたとしても、知らないことには出来ないのだ。一度知ってしまえば、何も無い手のひらをみつめ、「無くなった」と思ってしまうのだ。得ることを知らなければ、無くなることも知らなかったのに。

何かを得ることとは、何かを失うこと。失うこととは、何かを得ること。
この世に生を受けた。命を得た。同時に失ったのは、安全で心地好い暗闇。

剥き出しの絶望は、周りを巻き込んで。隠しもしない絶望は、嗚呼、私はあまりにも幼く、無邪気だった。その絶望は、友達を呑み込んだ。得た楽しみは、友達を失った。失った友達は、あまりに素敵な日常を得た。得た日常は……

君を失った。

そして、この心臓と引き換えに、君を得た。

「ねえ、中也」

塞がっていない左手を、そっと掴んだ。窓は半分ほど開いていて、澄んだ朝の風が白いレースのカーテンを揺らしていた。部屋が純白の光で満たされていて、その中で眠る綺麗な三人は、天使の如く。まだ動き出すには少し早い、燃え出すには早い、静かな時間。私は、あまりに美しく愛しい寝顔をみつめて、静かに、静かに、燃える炎で胸を焦がしていた。

静かに、優しく、泣きたいほど、恋をしている。

「……ねえ、中也」

握り締めた左手は、細いけれど固くて、何度も何度も私の躰に傷をつけた、男の手。

その薬指には、私と同じ、輝く誓い。

その手を額につけて、目を閉じて、呼吸をした。

ずっとずっと、こうやって私は、君に生かされてきたのだよ。

君が殺してくれるのを、ずっと待っている。

君にはとっくに殺されているのに、君の隣で呼吸をして、早く早く、と待っている。

ねえ、中也。君は「なんだそれ」って変な顔をするのかな。それとも、笑うのかな。君はきっと、こう言って、

「今更かよ」

って。

目を開けてみると、青い瞳が私を貫いた。にっ、と笑った顔は予想通りで、笑い声が漏れた。

「あっ、おい、こら。こいつらが起きたらどうすんだよ」
「御免、御免」

小声で云って、まったく……と顔をしかめる中也の頬にキスをした。中也はただ微笑み、繋いだ私の手を導いた。導いた先には、温かい命があった。

真っ赤な顔をして泣いて、泣くのはいつだって青色の瞳の春也が先で、それを感じて悲しくなったような治輝の鳶色の瞳もうるみだすのだ。青い瞳がじんわりとうるんでいくのを見るのは、まるで。

「春也は、君に似るのかもね」
「治輝は、手前に似るかもな」

同時に云って、同時に目を合わせて、同時に笑った。小さく小さく、笑った。

そして、中也は母親の笑みで、胸の中で並んで眠る我が子たちを抱き締めた。目を閉じて、呼吸をして。そして目を開けて、無言で私を呼んだ。私はベッドに乗り上がり、中也と向かい合い子供たちを挟む形で寝転がり、中也の頬を撫でた。中也はゆっくり目を閉じて、私の手に手を重ねた。胸がぎゅっと締め付けられた。

「……なおき、はるや」

中也が必死に守る我が子の、その名前を初めて呼んだとき、この子たちは生まれてきた。私の中に、私の家族として。それは温かく、じんわりと溶けてゆく、やさしいものだった。

「ふふっ、何だかくすぐったいかなあ」

呼ぶだけで、溶けてゆく。私の中に、溶けてゆく。もう忘れることなど出来ない。得るものが大きすぎて、失うことに恐怖を感じるなど。抱いた瞬間、もう、私は。

きっと、君に出会ったときから、動き出していたのだろう。完全になろうとしていた私の暗闇は滅茶苦茶にされて、心地好い温度は熱くなって、とてもいられたもんじゃない。きっと、もう私はどうしようもないんだ。

ねえ、中也。

君がこの世に生を受けた瞬間、私は心臓を失い君を得る為の空白を作っていたのだね。

最初から手遅れだったのだよ。

それならもう、仕方ない。

失うものかと、強く、抱き締めるだけだ。君は、慌てたように頬を染めるけれど。大人しく胸の中で守られていてはくれないけれど。

「ちょ、おい潰れるだろ、子供たちが……」
「ねえ中也」

たまらなくなって名前を呼べば、中也は静かになって。名前を呼ぶだけで、この愛しさが伝わる? この幸福が伝わる?


ねえ中也。どうしてだろう。
いつの間に、私の世界は光に満ちたの。


「君の所為だ」

胸に額をつけた中也が、少し揺れて、笑った。

「悪かったな」

風が吹き抜ける。

春風が君を連れてきたのだね。
私の元へ、まっすぐに。

いつの間にか、私の心臓を奪っていった、美しく輝く、あたたかい春の、風が。

「君が、生まれてきた所為だ」

中也が息を飲むのが判った。
本当はかき抱いて滅茶苦茶に愛したかったけれど、治輝と春也が目覚めてしまうから。

だから、輝く目と目を合わせて、キスをした。

額をこつん、と合わせて、みつめあって。そして私は、君に伝えよう。


私を、心臓を、友を、闇を、失い。
君を、愛を、家族を、光を、得て。


繋いだ手は、抱き締めた腕は、離さないから。だからどうか、末永く。

ねえ、君の所為だよ。
君が、生まれてきた所為だ。

だから憎しみと恨みを込めて、云うのだ。


「生まれてきてくれて、ありがとう」

心臓を神様に。
愛をあなたに。

「どういたしまして」

君が笑えば、私の世界は光で満ちた。

……眠りから覚めた息子の泣き声その静寂を打ち破るのは、もう少しあとにして。

ほんの少しだけ、夫婦水いらずで。

愛してるんだ、中也。

「誕生日おめでとう、中也」

もう一度キスをすれば、静寂の代わりに日常が始まった。

おはよう、治輝、春也。中也。

ねえ、愛してるよ。


えんど


四月二十九日
中原中也様、生誕百十三年
おめでとうございます。
そして、ありがとうございます。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.202 )
日時: 2020/05/13 12:30
名前: 枕木


空っぽのグラスが、在った。

安定した土台があり、ひび割れどころか傷一つなく、その上人より大きいグラスだった。

けれどそのグラスは、長い間空っぽだった。一滴も満たされることはなく、ただ、清く透明なグラスは、そこに在った。

「ははは! こりゃいい!」

まだ青く荒々しい魂が八重歯を見せてにやりと笑う。

その瞬間、ぽたり、とグラスに一滴、青い滴が落ちた。

「判るさ。俺はお前の……友達、だからな」

濁った闇の中、ただ一筋の光が行くべき道を指し示す。

それを境に、ぽたり、ぽたり、とグラスが日々満たされてゆく。

「この唐変木が!」
「中々やるようになったじゃないか」
「怪我人は出たかい?」
「都会って凄いですね!」
「絶ッ対にもう無理ですからね」
「感激ですわ!」
「貴君を歓迎しよう」

そして。

「あ あんた川に流されてて……大丈夫?」

満たされたグラスは、他のグラスへと注ぐ。大切なものだけど、だからこそ、注ぐ。

そう。大切なものだから、こそ。

「いまさら……なんで……」

グラスに、塩辛い滴がぽたりと落ちる。
それは、グラスを満たしていた静かな水面を激しく揺らした。

「……好き、だ」

静かな水面は、その瞬間から、波打ち、蒸発し、散々だった。

しかし、その瞬間から、グラスには温かいものが絶え間なく注がれて、

いつの間にか、溢れていた。

「……ねえ、あのね」

規則正しく胸を上下に小さく動かし、僅かに寝息をたてて、彼は眠っていた。
だから起こさぬように、そっと、その朱色の髪を撫でた。その手つきはどこまでも優しく、愛しさが溢れていた。

「私はね、色んな人に満たされて、生きているんだ。お返しもきっと出来たと思う。……だけどね」

顔を近付ける。小さな躯には宝の持ち腐れだね、とからかっているその端正な顔が、見ただけで、愛しくて愛しくて、堪らず額にキスをした。

囁くように、言葉を紡ぐ。

「君にだけは、返せた自信がないな」

震えた語尾が、ぎゅっと胸を締め付けた。

与えられた温かいそれは、毎日毎日、絶え間なく注がれる。返したいのに、返すことが出来ないから、もどかしい。しかし、それでも幸せそうに笑って、欲しがる分だけ、注いでくれるから。

幸せで幸せで、グラスがいつか、壊れてしまいそうだ。

それでもいい。

君になら、壊されてもいいよ。

「ねえ、御免ね」

彼の手を取り、そっと自分の胸につけた。その手のひらの下では、力強く脈打つ熱いものがある。

グラスは熱くなりすぎて、注ぎたい分だけ注げない。けれど与えたい人は一人だけで、全てを与える覚悟さえあった。

「折角君に満たしてもらったのに、私は他の人に分けることが出来ないんだ。全部、君に与えることしか出来ない。……きっと君は、無駄なことしてんじゃねェって、怒るのだろうけど」

握りしめた手は、力強く。

「でも私、中也だけしかいないんだよ」

心臓を、壊されてもいい。

君になら。
温かいものを、

愛を、くれた君になら。

「愛してるよ、中也」

眠っているはずの口元が微笑み青色が覗く。そして、名前を呼んだ。

「太宰」

その瞬間、ぽたり、とグラスが温かいもので満たされた。


えんど

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.203 )
日時: 2020/05/17 00:02
名前: 弑逆ノ藍





気付いたら家族計画完結……うひゃー、お疲れさまでした!!
好きです←


すいません失踪してて。
今全部読みました。相変わらず最高です。

家族計画は暖かさと辛さが文面から辛いほど伝わってきて思わずおめでとうって言っちゃいますし
他の話でも言葉回しが抽象的でとても感傷的な場面に引きずり込まれました!

あああぁぁ!!好きです!他の作品にかまけてる場合じゃなかった!!

出来ればリアルタイムでこの感想をお伝えしたかった!!

遅れて申し訳無いです

改めて家族へん完結おめでとうございますっ!!

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.204 )
日時: 2020/05/17 08:00
名前: 枕木

>>203

わー、おかえりなさい!お待ちしていましたよー!!
お祝い、ありがとうございます♪
出産編は、多分私の生涯でも上位に君臨するのではないでしょうか…。沢山考えて考えて、練り上げたこのお話です。楽しんで頂けたのなら、もう幸せです私(^^)♪

中也さんの一人称がほぼ定着しちゃいましたね…(笑)けれど、キャラの心情がよく書けてる!とか仰って頂けること増えたので、年月と愛をかけりゃあ、だんだんとその人の心に寄り添っていくものなのね、と実感しています。

いいんですよ、いつでも!来てくれただけでもう嬉しいんですから♪
こっそり言うと、あなたが「とうとう出産編!楽しみです!」のようなコメントをくださったこと、ずっとモチベーションにして書きました。あなたもこの小説の一部なんです。

またいつでも来てくださいね。ありがとうございました!

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.205 )
日時: 2020/05/19 21:21
名前: 枕木

恋人が、部屋から出てこない。

理由は単純。
仕事でやらかして、酷く落ち込んでいるからだ。

眺めていた携帯電話をポケットに仕舞い、何度目かの溜め息をついた。
幼少期のトラウマか、生まれたときからの呪いか、俺の恋人は自己肯定というものをあまりに知らなすぎる。自信満々で自由奔放(に見える)な上司を持っている筈なのになァ。あの振る舞いができる性格が彼に一割でもあったのなら、もっと楽な人生を歩めただろうに。……ついでに、その上司をもつことも無かっただろうな……

勿論、俺からしてみれば対立している組織、探偵社の事情なんてどうでも良い。社員がやらかして破産でもしてくれりゃあ、有難い。だが、昨晩死にそうな顔をして帰ってきたと思えば口もきかず自室に鍵をかけて閉じ籠り、あくる日の夜まで出てこない恋人のことは放っておく訳にはいかねェんだよ。

「おい、敦」

扉をノックする。返事は無い。判ってた。昨晩からここまで、敦は一言も話してない。最後に言葉を交わしたのは昨日の朝で、「敦、上の空だが何かあったか?」「え? あっ、いえ、何も……ごめんなさい、集中して食べます」という、作り笑いの彼との会話。

すう、と息を吸い込み、覚悟を決める。ドンドン、とやや乱暴に扉を叩いた。そして、低い声で云う。

「今すぐ開けろ。じゃなかったら扉蹴っ飛ばす」

本気だった。こんな薄い隔たりで俺を拒絶できると思うんじゃねェ。手前と暮らす俺の覚悟はそんなもんじゃねェよ。莫迦にすんのも大概にしろってんだ。

憤りさえ感じて数秒待てば、がちゃり、と躊躇いがちに鍵の開く音がした。続いて、扉が僅かに開く。そんなの待ってられるか。思いきり引っ張って、扉を全開に開いた。

部屋はカーテンも閉め切り完全な暗闇となっていて、突然光の元に放り出された少年は、泣き腫らした目を眩しそうに細めた。

「敦」

逃げ場のなくなった恋人は、低い声にびくっと肩を揺らし、うつむいた。

「……ひっでェ格好だな」

シャツは昨日から着替えていないから皺が寄りみすぼらしく、顔は涙で腫れ、目は充血し半分程しか開いていない。髪はぼさぼさで、元々斬新な髪型が大変なことになっている。おまけに叱られることを判っていて、死にそうな表情をしているから、俺くらいにしか見せられない格好だろう。

はあ、とまた溜め息をつく。

そんな表情見せられたら、叱る気も失せるよなァ。

「風呂入ってこい。着替えは出しといてやるから」

云うと、敦は吃驚した顔になり、腫れた瞼の下から俺をみつめた。チッ、と大きく舌打ちをして、敦の胸ぐらを引き寄せ、ほどけかけているネクタイを奪う。敦の唖然とした顔を睨み上げ、がっと口を開いた。

「ったく、ガキが一丁前に落ち込んでんじゃねェ。つか、手前が笑ってねェと此方が調子狂うんだよ。早くその間抜け面洗ってこい。飯が冷めるだろうが」

見開いた敦の琥珀色の瞳に、ぽわっと光が灯る。引き結んでいた口元が綻び、頬がほんのり赤くなって、弾んだ声で、

「はいっ!」

と返事をすれば、俺も釣られて笑ってしまった。

*  *  *

コトリ、と出来上がっていたものを入れたお椀を机に置いたそのタイミングで、ほかほかと湯気をあげながら敦がやってきた。目敏い奴。もういつもの腑抜けた顔に戻ってやがるし。矢っ張りガキだよなァ。

「有り難う御座います、中也さん」
「ん。早く食え。温かいうちに食っちまえよ」
「はーい……って、わあ!」

ふやけた顔で寄ってきてお椀を覗き込んだ敦が、目を輝かせて歓声を上げる。貧乏人かよ手前は。このくらいで喜びやがって。

「茶漬けくらいでそんな喜ぶか?」
「くらいじゃないですよ! お茶漬けが一番旨いです」
「そうかよ」

敦は嬉しそうに席につき、いただきます! と勢いよく手を合わせて、早速茶漬けをかきこんだ。あーあー、そんなに勢いよく食うと喉に詰まるだろ。落ち着いて食えよ。

「なんだ、腹減ってたのかよ」
「ふぉふぉふぁふぇふぁ」
「おいおい、飲み込んでから喋れ阿呆」

ごくん、と飲み込む音がして、どんぶり大のお椀はあっという間に空になった。「ご馳走さまでした!」と手を合わせ、敦は隣の俺に向き直る。

「いえ、先刻まで空腹とか何にも感じてなかったんですけど……中也さんの顔を見たら、急にお腹空きました」
「んだそれ。変な奴」

ふふふ、と笑い合い、また、目を合わせる。敦はゆっくり瞬きをし、眉尻を下げ、少しうつむいた。

「……子供に、大怪我させちゃったんです」

紡がれる言葉に、じっと耳を傾けた。

「凶悪犯が潜伏していた団地の子で、犯人が時間稼ぎに放火して……中に、取り残されていて」

敦の胸が大きく上下する。揺れる瞳は、手前への怒りか。

「僕なら、間に合ったはずなのに。……なのに、犯人捕まえるのに躍起になって……その間に、子供は……落ちてきた天井の下敷きになって。……太宰さんには、子供を救うことを最優先にって云われていたんだ。なのに僕は、目先の犯人しか目につかなくて……あの子の将来を、僕は……」

再び、彼の心が雲ってゆく。
昨日の朝から、彼はその依頼のことを案じていたのだろう。きっと毎回、不安と恐怖を抱えて現場へ向かうのだろう。

俺は、敦の上司じゃない。俺は、敦の親じゃない。だから、敦の仕事を支えてやることは出来ない。だから、敦に教えてやることは出来ない。

けれど、俺は、敦の。

「……っ……!?」

敦が吃驚して硬直する。
構わず俺は、ぎゅっと抱き締めた。

「えっ……ちゅう、いたたたたたたたたたた!!」

ギチギチと締め付けてやれば、敦は悲鳴を上げた。少しして解放してやれば、敦はぜえぜえと荒く息をして、目を白黒させている。頬は紅潮し、少年らしい、敦らしい表情が戻ってきていた。
満足して、ふう、と息を吐く。
そして、語りかけるように、静かに告げた。

「俺はな、手前を慰めたりしねェよ」

敦が目を上げた。
澄んだ瞳だった。

「それは、俺の仕事じゃねェからな」

そう。俺は、手前の上司でも親でもねェから。それは、俺の役目じゃねェんだ。

だから俺は、ポケットから携帯電話を取り出し、画面を掲げた。

「そういうのは、手前の上司にしてもらえ」

敦が目をぱちくりさせる。しかし、そのメッセージの送り主である『青鯖』の名前を見れば、飛び付く勢いで携帯電話を受け取って、目を凝らして画面を見た。

その光景を苦笑しながら眺めていれば、敦の弾んだ声が上がる。

「子供、目を覚ましたそうです!もう安心って……!」
「そうかよ」

けれど、彼奴が手前に伝えたかったのはそのあとだろう。読み進めた敦が突然笑みをおさめ、真剣な表情になる。
その瞳に光が宿っているのを確認して、俺はそっと敦のお椀を取り台所へ歩いた。

程なくして、子供のように泣きじゃくる声が聞こえた。俺はただ黙って、その声が収まるまで、何度も何度もお椀を洗った。

*  *  *

電気も消しうとうとしてきた頃、ポケットの中で携帯電話が震えた。来やがったな。相手は見ずとも判った。

細心の注意を払って、携帯電話を取り出す。画面を指で触り耳に当てれば、聞き慣れた声が『やあ』と飛び込んできた。

「いま何時だと思ってやがる」
『私に時間という概念はないね。私が起きている間は昼だよ』
「手前がそうでも、少なくとも俺にとっちゃ丑三つ時だ莫迦野郎、死ね」
『ん〜? そんなひそひそ声じゃ聞こえないなぁ〜?』
「マジ優しい上司だなー手前はー」
『有り難う!』
「聞こえてんじゃねェか死ね」
『ふっふっふ。まあ、優しい上司としては傷ついた部下のことが気になってね。……その声から察するに、大丈夫だったようだけれど』
「……まあな。つうか、態々俺を通さないで直接電話でもすりゃあ善かっただろ」
『ふふふ。それじゃあ、敦君のお腹は満たされないよ』
「……」
『私は唯の彼の上司だ。だけど君は違う。そうでしょ、中也』
「……はあ。もう切るぞ」
『はぁい。……まあ、結局のところ、傷付いたときはさ___』


胸の中で寝息をたてる子供の、あどけない寝顔に涙が溢れる。それを指先で拭って、そっと、微笑んだ。
突然、声が上がる。

「もう、おなかいっぱい……おちゃづけはみたくないです……」

吃驚して目を開いたが、直ぐにむにゃむにゃ……とまた寝息をたて始める。くはっ、と笑うと、携帯電話の向こうでもくつくつ笑う声が聞こえた。

『ガキだね』
「ガキだな」

温かな沈黙が流れ、俺は静かに通話を切った。目を瞑り、呟く。

「いい夢見ろよ、敦」


『傷付いたときはさ、恋人の手料理食べて、ぎゅうってされて寝ちゃうのが、一番だからね』


額に1つキスを落とせば、まだ成長途中の恋人は、夢を見ながらにへっと幸せそうに笑った。

えんど

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.206 )
日時: 2020/05/24 12:19
名前: 枕木

嗚呼……終わった。


発情(ヒート)が来ちまった。


躯が熱くて、頭が靄でもかかったようにぼんやりする。まともな思考回路はほんの少ししか残っていなくて、その僅かな理性が、欲しいものを……狂おしいほど躯が求めるたった一人の名を呼ぼうとするのを、懸命に堪えていた。

熱い吐息が絶え間なくもれる口元を、震える右手で抑える。自分の声にさえ興奮するこの躯は、もう、制御出来るものじゃなかった。

「ふーっ、ふーっ……んんっ、んんぅっ!」

左手は熱く疼く腹を抑えていたが、それをそろそろと下へずらし足の間を撫でてみれば、脳天を快楽が突き抜け、びくっと躯が跳ねた。その弾みで右手が口元から離れる。そして感じた匂いに、目を見開いた。

……掛けられた外套から香る、匂い。あの頃当たり前のように染み付いていた火薬や薬品の匂いはあまりしなくて、しかし、これは、まさしく、彼奴の……

「ひぅっ」

小さく、叫んだ。

じくじくと熱く疼く。脈打つ。その熱は脳も溶かしていく。僅かには残っていた俺の最後のプライドさえ、ぐずぐずに溶かしていって。


俺は……下着の中に、手を入れていた。


「はっ、はぁ……」

背中を支えるのは土の感触で、何より屋外だ。敵が残っている可能性は無いが、こんなところで淫行に及ぶなんてどうかしている。けれど、そんな理性も無いくらい、熱くて熱くて、もうどうしようも無かった。

外套を握り締め、顔に寄せる。その匂いを深く吸い込めば、手の中で自身がとぷりと愛液を垂らした。その滑りを借りて自身を擦れば、びくびくっと躯が跳ねた。

きもちいい。彼奴の匂いに包まれて、まるで彼奴に抱かれながらしているような錯覚に陥る。きもちいい。

「はっ、あっ……んっ、あっ、そこ……ああっ!」

快楽が高まっていくのと同時に、声も高く大きくなる。けれど全く気にならなくて、この声も彼奴に聞いてほしい……なんて、淫らに願った。

どこを触っても気持ちよくて、先端に爪をたてれば、腰が浮いた。亀頭をてのひらで包み込み、ぐりっと撫でるようにする。愛液が擦れてぐちゅっと音がするのに興奮して、夢中で亀頭を擦った。

「あっ、はっ、ぁ、あ、あ……はっ、あっ、ああっ! あっ!」

ぐちゅぐちゅ……ぐぢゅっ、ぐぢゅっ

びくびくっと躯が跳ね、背中が反る。

あっ……イく。

「はっ、あっ、ああああっ!!」

一際大きな嬌声が上がり、脳天をおおきな快楽の波が襲った。びくんっと反った躯に白い液体が飛び散る。びくっ……びくっ……と定期的に痙攣する度に快楽が押し寄せ、涙が溢れた。

きもちよすぎて、おかしくなりそう。

こんな台詞、まさか俺が遣うなんてな。今まで経験したことのないこの快楽は、俺が懸命に隠してきた俺の本来の姿だ。

Ωに生まれた俺だけが得られる、快楽。

そう。これが、在るべき姿だ。運命の相手を見て、触れて、感じるだけで股が濡れて発情して、求めるままに快楽を貪る。そして最後は、その相手に……


「……中也」



振り返らずとも判った、その声に。

俺の躯は、従順に反応して。

奥がきゅうっと切なく疼いて、堪らず躯を抱き締め、丸まって目を瞑った。

「中也」

呼ばれても返事なんて出来なかった。けれど、そっと、髪に手が触れられる。じんわりと涙が溢れ、その外套を濡らした。

そう。俺は、長く細い指に、ずっと触れて欲しかった。
相棒として隣にいた時期、それしか考えていなかった。

俺の服を全部取り払って、乱暴に押し倒して、足を開かせて。もう俺のそこは、手前を受け入れる準備は出来てんだ。知らねェだろ? 一人でするときは、手前の顔とか感触とか思い出しながら、だらしなく口開けてはあはあ息乱して、ぐぽぐぽ指を出し入れしてんだ。知らねェだろ? 知ったら軽蔑するだろ? 俺はな、手前らαに軽蔑され、虐げられる存在……Ωでしかねェんだ。

だから、手前にそうされてたら、もう直ぐに種を植え付けられる。奥まで突いて、そうしたら、俺はきもちよすぎてぎゅうぎゅう締め付けて中イキするから。そうしたら、手前も我慢せずに出しちまえばいい。心配すんなよ。Ωの俺が、中絶する権利なんて持ってねェ。どこもそんなのしてくれねェ。発情したΩの妊娠率はほぼ十割。喜べよ。手前の遺伝子をもったとびきり優秀なαが生まれるぜ。だって、俺たちは運命の番だ。最高のパートナー。最高の遺伝子。最高の子供。

それが、在るべき姿なんだよ。

俺は、手前に突かれてきもちよくなりたい。手前の種が欲しい。
手前だって、俺のフェロモンにあてられて、苦しいだろ? 早く突いて、奥に出したいだろ?

完全に利害は一致していて、堪える理由なんてない。もっと早くこうなっているべきだった。本来なら。


……けれど、けれど、なんで。


「中也、こっち向いて」
「やっ……」

頬に手が添えられ、振り向かせようとする。静かな声で、もう一度俺の名が呼ばれた。

もう抗う力なんて残ってねェ。そもそも、抗うのが間違っている。このまま流されれば、在るべき姿になる。


……けれど、けれど。俺は。


「中也」


「やだっ……!」


ぐいっと顔を振り向かされた瞬間、俺は叫んでいた。同時に、ずっと閉じていた目が瞬き、涙が溢れた。


どうしてだろうな。涙が止まらねェんだ。


暫く、涙で視界が霞んで見えなかった。

抱かれたい。それが正解だし、一度出したくらいじゃ収まらない自身は痛いほど張り詰めて、解放を待ちわびている。

番いたい。それが正解だし、運命の番とのセックスは堪らなく気持ちいいだろう。

しかし、俺は。


「中也。ねえ、私を見てよ」


ずっと恋なんて感情を寄せていた元相棒に、項を噛んで欲しかった。


抱かれたいのと、番いたいのは、俺がΩだからだ。けれど、もう1つは違った。

「ねえ、中也」

ぐちゃぐちゃになった頭と股が苦しくて、涙を止められないでいた。けれど手前の顔は見たくない。αの手前に、俺は……

「中也。お願いだから。

……私は、αじゃなくて、太宰治だよ」

驚いて、思わず顔を上げた。

そして更に、驚いた。


……なんでそんな、優しい笑顔してんだよ。


頬に触れた手は温かく、俺に覆い被さるようにして……まるで、俺を守るようにして、太宰が、微笑んでいた。

「……太宰」
「うん」
「…………なァ、太宰」
「うん。聞かせて、中也」

涙がこぼれ落ちた。鳶色の瞳には優しく光が宿り、包帯は、ほつれていて。何より、木の枝にひっかかれたような擦り傷が頬にあって、手前らしくねェな。

どんだけ、全力で走ってきたんだよ。

「太宰……俺は」

俺はΩで、手前はαで。運命の番で。

偶々俺はΩで、偶々手前はαで、偶々運命の番だっただけだった。


「俺は、終わらせたくねェよ……」


終わらせたくない。

この気持ちも、この人生も、この舞台を。

始まったばかりだ。手前との二人芝居。観客なんて要らねェよ。


手前と俺で、やり直してェんだ。

中原中也として、手前を、太宰治を、愛してる。


「太宰」
「……うん、中也」

見詰め合う。太宰が、俺の様子を伺いながら、少しずつ少しずつ身を寄せてくる。俺は瞬きさえしないで、その瞳を見詰めていた。

硬い肉が、触れ合う感触。背中に手が回って……ぎゅうっと、抱き締められた。

「役者が揃い、君の悲劇は……喜劇へと、か」

耳元で呟かれた言葉に、小さく頷いた。太宰は何も返さずに、ただ力を込めて、俺を抱き締めた。


血に染まった地面の上、土煙の舞う夜空の下。

抱き締めあったその夜、舞台の幕が上がった。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.207 )
日時: 2020/06/14 15:43
名前: 枕木

もつれあうように、車の中に乗り込んだ。

私の下で苦しげに熱い息を吐く中也は、とろとろに熟れて、正に食べ頃だった。上気した頬、涙でうるみとろんと蕩けた青い瞳。暑い、とうめきながら自ら上着とクロスタイを脱いだ肌は汗ばみ、シャツが張り付いていた。

ごくり、と喉が鳴る。
そして何より……この、甘ったるい匂い。

それは中也と、中也が未だ握り締めている私の外套にかかった精液や、彼の項や、彼の肌全体から、むせるほど強く発せられていた。嗚呼、中也の肌、本当に甘そうで、美味しそう。堪らず首筋に顔を埋め舐めながら、囁いた。

「凄いね、中也……こんな強烈なの、堪んないな」
「あ……? それは、うんめいの……」

違う。
それにしたって、中也の躯は特別だ。

あまりにも、フェロモンが、濃すぎる。

Ωは常に甘い匂いを伴い雄を誘うフェロモンを発している。鋭いαなら感じるし、あてられることもある。しかし、ほとんど気付くことはない。ただ、無意識に錯覚を引き起こす。微量のフェロモンの効果で、可愛らしい、愛らしい、と感じるようになる。体格も相まって、中也は随分可愛がられていたね。……否、嫉妬なんかしないよ? ……しないように、しているよ。

けれど、発情(ヒート)している状態になると、フェロモンは決壊したようにただ漏れる。発情(ヒート)は不定期なΩもいれば定期的にくるΩもいて、効果も固体差がある。Ωの発情(ヒート)は……なんてひとくくりにするのは浅はかだ。それを理解しないから、発情(ヒート)状態のΩが路上で強姦される事件が多発するのだよ。

αはΩのフェロモンに逆らえない。それが動物的本能だから。

だが発情した中也のフェロモンは、そんな理由じゃ収まらない。αやβなんて関係無い。下手をしたらΩだってあてられる可能性がある。匂いだけではなくて、瞳や、唇や、汗や、涙や、細胞の一つ一つが誘う。一目見るだけでいい。発情した中也を一目見るだけで、もう、抗うことはできない。私でさえ、ぎりぎりなのだから。今の今まで中也が汚れのない躯を守ることができたのは、奇跡に近い。

……否、奇跡とは違うのかな。
中也はそこら辺の猿よりかは頭がいいから、定期的にくる発情期は操作していただろう。そして、何時でも何処でも発情する条件となる……そう、“運命の番”の存在が、近くに無かったから。

“運命の番”というのは、決して誤魔化すことも断ち切ることもできない、固く強い繋がりなのだ。

「あッ……んっ」

シャツの下に手を入れ肌を撫でると、中也はぴくっと跳ねながら、甘い声をあげた。

嗚呼、くらくらする。

蕩けた顔も、期待して私をみつめる青い瞳も、飛び散った白濁も、車に充満して理性を溶かしていく甘い匂いも。

「だざい」

そう、もっと呼んでよ、中也。そうやって、愛おしそうに私を呼んで。

頬を撫でると、熱かった。それはとても、熱かった。中也は瞬きをして、それから、躊躇いがちにそっと両手でその手に触れた。私の様子を窺う猫の様な仕草が可愛くて微笑めば、中也は、ゆっくりと蕾が開くように、嬉しそうに微笑んだ。

ぶちぶちと、張り詰めた糸が千切れていく音がする。

「……ねえ、いいの? 此処、外で、君の車の中だけど?」

煽るように訊いた。余裕だよ。君のフェロモンなんて、私を揺るがせられるほどじゃない。

嘘だよ。強がってるよ。

じくじくと太股が痛む。
ぎりぎりだけど、守りたい。君だけは尊重する。誓う。私は君が大切なのだよ。

本当は今すぐに、この膨張した熱で君を貫きたい。奥深くまで突いて、ぐちゃぐちゃに犯して、ぐずぐずに喘がせて、孕ませたい。

限りなくぎりぎりで。それでも君を、守りたい。

シートに押し倒した中也の両脇についた腕が、少し震えた。限界はあとほんの少し。

中也は、きょとん、とぱちぱち瞬きをした。
そして、きょとんとしたまま、

「いまさらだろ……?」

と云った。
確かに今更だ。もう私の手は君の肌に触れているし、布越しに擦り合わせているお互いの自身は張り詰めている。

「でも、今なら未だ……」

その先は云えなかった。

言葉は、中也の唇に奪われていた。

触れるだけのキスは長い訳では無く、家族や友人とでもするような、子供っぽいキスだった。こんなに扇情的な瞳が目の前にあるのに、溢れてきたのは中也への愛しさだけだった。

はっ……と吐息を漏らしながら離した中也の唇は艶めいていて、恥らうように頬を染め、目を逸らした。

あーあ、もう。

「……折角私が親切で我慢してあげようかって訊いてあげているというのに、君って本当……」

深々と溜め息を吐けば、中也はむっと唇を尖らせた。

「んだよ。頭悪ィとか云いてェんだろうが、手前だって……」
「否、違う」

目を合わせる。中也がはっとしたように目を見開き、そして、矢っ張り恥じらいながらぬれた睫毛を瞬かせた。
ふふっ、と微笑んで見せ、耳元に顔を寄せて囁いた。

「君って本当……

最高だね」

甘い匂いが強くなり、腕の中で、可愛らしい恋人が期待に躯を震わせた。
いじらしく私の袖を掴む感触に、

ぶちっ

と、最後の一糸が切れる音がした。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.208 )
日時: 2020/06/19 07:09
名前: 枕木

ふと、気配を感じて振り返った。

勿論、殺意や敵意といった類いではない。

それは、もっと優しく、あたたかく、そして……でかい。

「珍しく早起きじゃねェか」
「其れ、君が云うのかい? 徹夜だったでしょう」

くすくすと笑いながら云う彼からぷいっと顔をそむける。矢っ張りばれてたか。まあ、同じ寝床で寝てんだから、お互いの家を行き来してたころみてェには行かないよな。

静かな、朝。
外では、地面の水溜まりに絶え間なく空から滴が落ちる透明な音が、続いていた。

ふいに、背後からひた、ひた、と裸足の足音がして、それが近付いてきた。

……ったく。

ふう、と息を吐き出しながら、持っていたものを置き、ぱっと両手を広げた。
背後から忍び寄っていたのが、驚いているのが判る。「えっ」と小さな声が可笑しくて、俺も笑った。

振り向くと、目を軽く見張り、口を僅かに開いた間抜け面が、俺に両手を伸ばした状態で固まっていた。透き通った鳶色の瞳をみつめる。

あーあ、餓鬼みてェな顔しやがって。手前今日で幾つになると思ってんだよ。
朝は起きるの遅くてついでに寝汚ェし、料理はまともに出来ねェから相変わらず俺に遣らせるし……マフィアの幹部だぞ、俺は? 絶対につりあってねェ。こんな、裏切り者との同棲なんて、どう考えても。

……だが、な。

両手を広げたまま、早くしろよ、と急かす。目の前の木偶は相変わらず固まっていた。

「来るんじゃねェのか?」

にやりと笑って云えば、鳶色がきらりと光った……気がした。

ぎゅうっ

強く、抱き締められる。押し付けられた胸板は随分薄い。頼りねェなァ。こんな細い躯であいつら護ってやれんのかよ。
すん、と匂いを感じとる。……ああ、この匂い。よく知っている。知ってる。これは、

俺と、子供たちと同じ、石鹸と、洗濯洗剤の匂い。

「……中也のえっち」
「あ”!?」

あはは、と笑い声をあげる彼を、胸の中から見上げる。
白い肌、それより白い包帯……絶対ェ無駄だろ。
そして、左手の薬指にある輝きに気付いてもなお、惹かれる者が後を絶たない端正な顔立ち。……郵便受けに呪いの恋文が溢れかえるほど入っていたときは俺までこいつを呪いそうになった。
細い……細い、躯。無駄にでけェんだよ、ともう一度胸に顔を伏せれば、今度は頬が手で包まれ、顔を上げさせられた。

「……中也」
「……ん」

腕を伸ばし、彼の首に巻き付ける。
そして精一杯伸びをして、顔を近付ける。彼も低い体勢になったから、少しむかついた。

目をつむれば、
唇が、重なる。

その瞬間、こいつに対するむかつくのとか、全部消えちまって。

代わりに残ったのは、あたたかな。

鼻先が触れる距離で、みつめあう。
ふっ、と同時に笑った。

「また今年も暢気に誕生日とか迎えやがって。自殺すんのは何時になるんだろうなァ?」
「仕方ないじゃない。一緒に死にたい唯一の人が双子の子育てで忙しくて、全然死んでくれないんだもの」

莫迦、と矢っ張りむかつく唇をもう一度塞げば、ふいに泣きそうになっちまって、首に回した腕に力を込めた。それを感じて、腰に回された腕にも力がこもる。舌を忍ばせながら、俺の世界にはこいつしかいなくて、激しい雨音も消えて、聞こえるのはこいつの心臓の音だけだった。

銀糸をのこして唇を離す。

そして、期待に輝く鳶色にため息をついて、それでも、ふっと笑った。

しっかりとみつめあう。
そして、口を開いた。

「誕生日おめでとう、治」
「ありがとう。これからもよろしくね、中也」

もう一度キスをしようとした……が、その空気を突き破るように、泣き声が響いた。途端に世界に太宰以外の音と色が戻り、日常が再開する。

慌てて寝室へかけ戻る太宰を笑って、それから、また手を動かした。

激しい雨音をかき消す我が子二人の……太宰と、俺の二人の子供の元気な泣き声と、それをあやす太宰の……夫の声を聞きながら、俺は赤い甲羅から赤い身をするりと引き抜いた。

今日は一日どしゃぶり。
たまには家族四人でゆっくりするのもいいかと、鼻唄を歌いながら。


六月十九日
太宰治
誕生日おめでとう

えんど

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.209 )
日時: 2020/07/26 02:40
名前: 枕木

思えば遠くへ来たもんだ。

「ん……もうすぐ来るな」

出汁の味見をしていた小皿を置き、手を洗う。ちらりと居間の壁にかかる時計を見上げれば、まだ日付が変わるまで随分時間がある。最近、所謂ハイハイが出来るようになった我が子二人でさえ先刻寝たばかりだ。何時からまあ、こんなに健全な男になったんだか。

青色のタオルで手を拭きながら、溜め息をついた。ったく、昨日は探偵社で打ち上げだ飲みまくりだって浮かれてたくせに。こんなに早く帰ってくるなんざ聞いてねェんだよ。夕飯の連絡は早めに寄越せって何時も云ってんだろうが。

「……まァ、もうとっくに諦めてんだよなァ、こっちは」

苦々しく呟いたら、嗚呼、腹が立った! 何時も何時も、俺は、彼奴からのメール一つ電話一つ声一つに振り回される。『予定変更。あと半刻で帰宅するよ。夕飯よろしくね♪』だの、『明日から休暇になったから旅行に行こう。荷造りよろしくね』だの。そら遠慮なく、ぶんぶん振り回される。何度か文句を云ってやったが、彼奴聞きゃしねェ。何時も何時も、キレかけたところで……その、……キス、とか、まあ、そういうやつで、「次から気を付けるよ。これで許してくれ給え」なんて甘い声でほざきやがる。
思い出したら湯気が出そうになって、俺は実際湯気をあげる鍋の中に少し醤油を入れた。これで味は整っただろう。

そこで、ふと気付いた。
つか何で俺はいま台所に立ってんだよ。彼奴なんかの為に。

残念ながら気付いたときには遅く、調理し終えていた鍋に、ガシャン、と音をたてて乱暴に蓋をする。

決めた。今夜こそ彼奴に最後まで文句云ってやる。我が子二人が起きない程度なら、そろそろキレても良いよなァ?

「覚悟しとけよ、太宰」

がちゃり、と音をたてた玄関の方へ目を向けて、俺はその蒼い瞳をぎらっと光らせた。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.210 )
日時: 2020/07/26 09:52
名前: 枕木

生きてゆくのであらうけど


扉が、キィ、と音をたてて外気を誘い込む。ぐっ、と拳を握り固める。

俺を振り回す迷惑な男、俺を苛立たせる不真面目な男。昔からずっと変わらねェ、俺が嫌いなところ。

嗚呼、そう云えば、こいつと出会ってからもう随分時が過ぎたんだなァ。

蒼い腕輪を着けていたあの頃の俺は、双黒なんて呼ばれていた頃の俺は、否、幹部に成って久しい俺でさえ、もう、遥か遠くに居て。

永遠のように続く、ひたすら進んで行く足跡が、ゆったりと歩む二列の足跡となったのは、何時からだったか。

もう、懐かしむほど、全てが遠い。

扉が開く。コツン、と敷居を跨いだ足は、くたびれた革靴だ。この靴を買ったときも俺はこいつの傍らに居た。

『好きなのは中也の靴選びの感性(センス)くらいだ』

あながち嘘じゃ無かったね、としみじみ呟くこいつを、俺は軽く小突いて。でも大袈裟に痛がるから、声を上げて笑ってやったんだ。

嗚呼、腹が立つ。

俺の重ねた日々は、全て、こいつと共にあるらしい。こんな奴なのに、俺は。

「ただいまー」

また俺を苛立たせる、間伸びした挨拶も変わらねェなァ。

なあ、

太宰。

「だァざァいィ!!」

びゅんっと鋭い音が空を切り、俺より幾らか高いところにある顔をめがけて拳が繰り出される。怒りを込めて放った声と拳は、真っ直ぐ太宰へ向かった……筈だったが。

「っ!?」

思わず、声にならない叫び声が出た。拳と声は、飲み込まれた。
……こいつの、太宰の、胸の中に。

薄い胸板に俺を押し付け、細い腕で俺をぎゅうっと思いきり抱き締めている。貧弱野郎。へし折ってやろうか。

「おい太宰! もうその手には……」

掲げたままの拳を振り回し、喚いて抵抗する。またご機嫌取りで逃れる積りなんだろ、どうせ……

「中也。ただいま」

耳元で囁かれた声に、ぴたっと動きが止まった。

……何時もなら、もっと甘ったるい、媚びるような声で云いやがるのに。

その声は、まるで、はしゃぐ子供のように、弾んだ、喜びが滲み出るような声だった。驚くのも無理ねェだろ。

「だ、ざい……?」
「うん。ねっ、ただいま」
「え、ああ……」

少し腕の力が弱まり、胸の中から顔を上げた。黒髪。白い肌。それより白い包帯。同僚たちよりはいくらか濁った鳶色。それが、輝いていて。そして、幾多の女を泣かせる元凶となった顔に、慈しむような笑みを湛えて。

片目を闇で覆った子供が、遥か遠くから俺を振り返った。

「おか……えり。……おかえり、太宰」

濁った、一つだけの鳶色が、一瞬輝いた気がした。

自然に溢れた笑顔で太宰をみつめて云えば、太宰はそれは幸せそうに頷いて。

瞳をじっと合わせて、心を通わせる。
そっと瞳を閉じれば、温もりが近付いてくる。

ふに、と慎重に、軽く触れた、その感触に思わず笑声を漏らせば、むっとしたような息を吐いて、噛みついてきた。唇を僅かに開けば、温い感触が侵入してくる。歯列をなぞり、上顎を舐められれば、ぞくっと背筋を走るものがあった。腕をもう一度伸ばして彼の首に回し、躯を擦り寄せる。

キスは好きだ。絶対ェ云わないけど。

「ん……はっ」

唇を離せば、光を反射する糸が伸びて二人を繋いだ。それが切れるのも待ちきれず、背伸びして、包帯から覗く剥き出しの首筋に噛み付く。小さくうめいた声に征服感を覚えながら、ぐっと歯をたてた。
しばらくして離して見れば、くっきりと、俺の歯列の形に濃く鬱血していた。

まあ、今日だけは。これで許してやるか。

「あっはは……いいね、中也」

細い指でそこをなぞりながら、太宰が楽しそうに云った。その、強い光を放つ瞳に挑戦的に微笑んで、俺は自分のシャツの釦を一番上からゆっくりと外していった。太宰から、目は逸らさずに。ごくり、と上下した喉仏に満足して、俺は手際よくシャツを脱ぎ捨てた。下には黒のタンクトップ。下半身はまだ脱がない。だって手前、脱がせるの好きだろ?

「久々か?」
「ふふっ、そうだね。少なくとも、君の倍は飢えてるかな」

太宰が笑みを湛えたまま俺をみつめ、腰を引き寄せる。背骨をなぞる手つきが妖艶で、思わず反らせた。ちっ、遣られた。仕方ねェな、主導権は手前にやるよ。

「ほう、楽しみだなァ、そりゃ。せいぜい楽しませろよ?」
「君こそ、啼きすぎて子供たち起こさないようにね?」

微笑みあって、みつめあって。
それから、夜の始まりの合図に深く深くキスをした。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.211 )
日時: 2020/07/26 18:33
名前: 枕木

ぼすん、と音をたてて蒲団に倒れ込む。傍らに横たわり、服の下から俺の肌をまさぐる手の感触に、小さく息を吐いた。

腹の中に彼奴らの命が宿ってからここまで、太宰とはずっとご無沙汰だった。少しだけ、と云って始めてしまったらお互い止まれないことは、充分判っていたからだ。俺は妊娠の症状と出産の影響でそういう欲はほとんど無かったからいいが、太宰は一年以上よく耐えたもんだ。だから、今夜は心ゆくまで、支配されてやろう。こうなることを予想していた訳じゃねェが、丁度良く鍋の中身は肉じゃがだ。愛し合った時間だけ、旨くなってくれるだろう。

「中也……」

少し掠れた声が、熱い吐息と共に耳に吹き込まれる。思わずびくんっと躯が跳ねた。目を上げれば、俺の上に乗った夫が、楽しそうに微笑んでいた。

「かわいーね、中也。変わらないよねえ、本当に」
「……何時から」
「初めて涙を見せてくれたときから」

予想外の即答に、目を見開いた。

否、勿論自覚とかはねェよ。無いが、初夜のときから……という答えを予想していた。だが、初めて太宰に涙を見せた夜、といえば……

「雲の間に月はいて」
「そう。月はその時空にいた」

嗚呼、そうか。

あの公園の、あの夜からか。

傍らに手前が居るようになったのは。

嗚呼、本当に、遠くに来たもんだ。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.212 )
日時: 2020/08/02 00:54
名前: 枕木

遠く経てきた日や夜の


「腰、あげて」
「ん……」

耳元で熱い吐息とともに吹き込まれた声の通りに、仰向けの腰を上げた。すると、俺の下着の中にいた太宰の手が、下着ごとするりと俺の下半身を剥いた。垂れ流しの愛液がねっとりと下着に染みをつくっている。久しぶりの快感に過敏になって、ぴくり、ぴくり、と脈動している太股。その間では、太宰の手でいじられて、完全に勃ち上がった自身がスタンドライトの微かな光でてらてらと主張している。その向こうでは、服を脱いでいる太宰が、ループタイをほどきながら、満足そうに微笑んだ。思わず、顔を反らした。

嗚呼、見るんじゃなかった。

「ふふ、顔真っ赤。反応いいね、ママ?」
「っ……るっせぇ……」

ママ、という単語1つで、意識が隣室の子供部屋で寝ている我が子二人へ向く。夜泣きもあまりしねェが、隙をつくらせない、つくってはいけない俺と太宰の遺伝子なのか、僅かな異変で起きる子たちだ。昼寝もしない。だから、ゆっくり寝てほしい、が……

「中也、しーっ、ね?」

はっと気がつけば、見慣れてもなお美形だと感じる夫の顔がすぐ目の前にあった。俺にのしかかり、微笑むその笑顔は、完全に雄のものだった。

ごくり、と喉が上下する。

やばい……俺、きちんと覚悟できてんのか? ただでさえ、この俺の躯が三日は辛くなるほど、加減を知らない奴だ。そいつを一年以上放置して、しかも俺から誘って……

一体何日、子供たちをおんぶだっこできなくなるんだ?

「だ、ざい」
「と云っても……」

迫る胸板を押そうとしたとき。太宰は、意味ありげに微笑んだかと思うと……

「ひっ!?」

俺の膝を割り開いた。

ふるり、と自身が震えている。思わずそこに集中すれば、冷気にさらされて反応した自身は涎を垂らし続けていた。それが股を伝い、入り口を濡らしている。かあ、と顔が熱くなった。

「一寸触って脱がせただけでこれじゃ……声とか、もう抑えられないね?」
「やっ……」

耳元での艶やかな声と、震える自身の先端に触れた指先に、ぴくん、と躯が震える。

やばい、だめだ、おれ、

「こんな躯で……」

先端に触れていた指先が、愛液の道筋を辿る。根本へとおりていく指の感触に、ぴくぴくぴく、と躯が小刻みに震えて、思わず太宰の腕をぎゅっと掴んだ。

「は、ぁ」

喘ぎ混じりの息を吐き、股を伝う太宰の指の刺激を堪える。快感にいちいち反応する俺の自身が、さらに太宰の指を濡らす。その指が入り口に辿り着いたときには、もう息が上がっていた。

「此処、入れたら……」

囁くように云いながら、その入り口の縁をなぞる指先。一年以上も全く触っていない、元々は性器の役目を果たしていない、其処が。太宰によって開かれて、太宰のための性器にされて、太宰を待ちわびているその入り口が。
きゅうっと、その指先に吸い付いた。
意思とは関係のない、その行為。羞恥で顔が燃えそうだった。

「っ!?」
「ふふ。まだ私のこと、覚えていてくれたのだね」

けれど太宰は、嬉しそうで。そろりそろりとその顔を窺えば、太宰は笑って、俺の其処の形をなぞっていた。

そしてふいに、俺の耳に唇を寄せてきて。囁いたのは。

「どうにかなっちゃうかもね、中也」

ぞくぞくっと背筋を駆け抜けたのは、興奮と期待、そして、この気障な男へのほんの僅かな苛立ち?

嗚呼、こんなに余裕な笑顔でいやがって。こっちは泣きそうなくらいだってのに。今に見てろよ? のぞむところだ、という意味を込めて、キスをした。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.213 )
日時: 2020/08/12 10:53
名前: 枕木

腕で顔を隠し、暗闇にいる俺の感覚。
中をかき回す細長い指の感触は、本当に久しぶりで。しかし、少しの痛みが去れば、早速弱いところを擦られて。びくっと跳ねた俺の躯に快楽を思い出させるように、ぐちゅ、ぐちゅ、と態と音をたてながら、太宰は俺の中をかき回した。
粘着質な水音と、歯を食い縛って必死に抑えているのに抑えきれない、すすり泣くような嬌声。太宰は一言も喋らないのに、俺の耳元でくつくつと笑うように息をしている。

どうすんだよ、マジで、俺今日死ぬんじゃねェか。死因は快楽か、羞恥か。

ぬちゃ、ぐち、ぐち、じゅぷっ

「やぁっ」

突然の二本目の指の侵入に、思わず小さく叫んだ。入り口での圧迫感。けれど、じゅぷぷ……と音をたてて、耳を塞ぎたくなるような、卑猥な音をたてて、入ってきた。頬を汗が流れる。
思い出しかけてる、俺も。こうして、中を満たされる感覚を。

指とは比べ物にならない、熱くて、大きな、奥まで抉るように激しく愛される感覚を。

その瞬間。

「あッ」

きゅんっと中が締まり、びくんっと足が跳ね上がった。
ふいにはっきり感じた、指の輪郭。意思とは関係なくきゅうきゅうと締まる内壁の、こりこりした、弱いところ。

そこを、ぐりゅっと強く擦られた。

「ひっ……! あっ、あうぅ……っ!」

あっという間に頭の中が真っ白になって、突き抜けるような快楽に躯が跳ね上がった。白濁が躯に飛び散る。きゅん、きゅん、と二度三度中が収縮して、そこでやっと快楽の波が去った。同時に、そこで呼吸をするまで、息も出来ていなかったことに気が付いた。

「……中也」

力が抜けた俺の腕をそっと掴まれ、下ろされた。ぼんやりとしたまま、ぼやけた視界で夫を見つめる。太宰はふふっと優しく笑って、俺の目の端に溜まった涙を親指で拭き取った。

「御免ね。いきなり、無理させてしまって」

額にキスを落としながら、太宰が云う。

……最初の頃は、俺を気遣う素振りも見せないで、ただがっついていただけだったのにな。
その暴力的な快感の中にも愛はあって、俺たちの愛はこういうものなのだろう、と思った。

でも、こうして、俺の頬を撫でながら、優しく笑うこいつがいる。

遥か彼方の過去に生まれた愛は、いつの間にか、大きく、温かく、確実に育っていて。

「……中也? え、なに、どうしたの?」
「何でもねェよ」
「何でも……って、え?」
「……」
「ちょっ……ねえ?」

戸惑い、焦ったような太宰の声が無性に可笑しくて。

「もう……なんで笑ってるの、中也」

手前の所為だよ、ばーか。

「なァ、太宰」
「ん?」

油断した笑顔が、次の瞬間には目を見開いた間抜け面になっていた。
勢いをつけて起き上がり、太宰を押し倒してその上に馬乗りになった。俺以外の奴にはこんな簡単に押し倒されんじゃねェぞ、貧弱野郎。

脱ぎかけのシャツの間から肌を触って、包帯がほどけかけている首筋の、先刻つけた……俺がつけた、歯形をなぞる。明日から暫くは、包帯を多めに巻いていかなきゃなんねェな。他の奴に不審がられたら、こいつは何と言い訳するのか。何かの弾みで見られちまうのもいい。濃くて、強い、俺の独占欲。それを見て、嫉妬の炎で心臓を燃やして、息絶えて。

そう、こいつに近付く何もかも、焼かれて死んじまえばいい。

顔を寄せて太宰の唇を舐め、ひっそりと微笑めば、太宰が手を伸ばしてきて、俺の頬に触れ、笑った。

「あっははは……ねえ、中也、目、やばいけど」
「手前も人のこと云えねェけどな」

俺を見上げて口角をあげている彼の目は、全く笑っていない。目の奥でちろちろと見え隠れする雄の炎に、ぞくっと背筋がひりついた。

判ってる。こんなに大きく育っちまったんだ。

仕方ねェなあ。

俺は、倒れ込んで太宰と躯を密着させると、手を忍ばせて、太宰のボトムのポケットから“それ”を抜き取った。

「えっ、ちょっ!」
「五つか。本当にこれだけでいいのかよ?」

焦った顔が面白くて、その眼前に連なった桃色の袋をぶら下げて煽った。太宰の喉が上下する。鳶色の目の奥で、炎が燃える。

腹の奥が、きゅんと切ない。

「……ちゅう、」

その声を遮って、今度は蒲団の下から物を取り出す。
これ、なーんだ? と掲げて見せれば、太宰は三度瞬きしたあと、

「あー……もう!」

と小さく叫んで、勢いよく上半身を起こした。そして、噛みつくようにキスされる。深く深く口づけながら、太宰は俺の手首をぎりっと強く握り締めた。余裕無くなってやんの。太宰のくせに。

甘やかな熱に、溶かされそうだった。

ぷはっ、と口を離したときには、もう太宰の炎は剥き出しだった。

「ほんっと頭悪いよね、君」
「ハッ、そんな獣みてェな面してよく云うぜ」

太宰の手のひらに、ころん、と転がったのは、白い錠剤。

仕方ねェから、

「手前、俺の中に出すの好きだろ?」
「何云ってるの? 君が私に中出しされたいだけでしょ?」

にやりと笑い合い、再び、口付ける。太宰の舌が喉の奥へ押し込んでくる錠剤を、抗わずに飲み込んだ。

目を合わせて、笑い合う。

もうこれ以上は、お互いに我慢はできないと、判っていた。

「ねえ、中也」
「あ?」

ちゅっ、と、額にキスが落とされた。

「沢山、愛してあげるね」
「……仕方ねェな」

仕方ねェから、愛されてやるよ。

飲み込んだ錠剤が腹の中で溶ける頃には、入り口に熱い感触が押し当てられていて。

久しぶりのセックスの目的は、互いを愛することだけだった。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.214 )
日時: 2020/09/23 21:10
名前: 枕木

お久しぶりです!皆さんお元気ですか?挨拶もそこそこに申し訳ないのですが、お知らせします。
私には今、大事な時期が訪れています。人生の分かれ道です。つきましては、勉学に集中するため、期間限定で更新を中断します。
実をいえば、勉学に励むため…が理由になるほど真面目じゃないんですけどね私(笑)
でも、自分への戒めのような…違うな、皆さんに復帰と朗報を祝ってもらう楽しみをつくるため!!です!!!
勝手なことばかりすみません。私にとってはいいタイミングだったので。書きかけやりかけ(意味深)ばかりですし、必ず続きを書きに戻ります!どうか、忘れないでください、私のこと。
ここまでありがとうございました。来年、春風にのって戻ります。

またね。
2020,9.23
枕木

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他【更新停止中】 ( No.215 )
日時: 2020/09/23 22:31
名前: りり

初めまして。いつも読ませて頂いています。枕木さんの作品が大好きで
もう10回は読んだと思います。
毎日の癒しです。
お勉強頑張ってください。
いつまでも応援してます。
いつまでも待ってます。

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他【更新停止中】 ( No.216 )
日時: 2021/03/15 14:17
名前: 枕木

お久しぶりです!枕木、復活しました!!
無事夢を叶える為の一歩を踏み出すことができました。これで一安心出来ましたので、少しずつ投稿を再開していこうと思います。リクエストや感想、アドバイス等常時受け付けておりますので、是非是非下さいませ!!
これからもよろしくお願いします(^^)
あと、お話ししたいことも沢山ありますので、雑談の方も更新します。お話ししましょうね(&#3665;>&#9697;<&#3665;)

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.217 )
日時: 2021/03/19 22:35
名前: 天照

おかえりなさいです!枕木様!

自己紹介が遅れました。
はじめまして。天照(あまて)
と申すものです。

夢に近づけたこと本当におめでとうございます!
枕木様の作品が大好きで大好きで
復活を心待ちにしながら静かに
応援していました。
復活して本当に嬉しいです!
また枕木様の作品が読めるのが
めちゃくちゃ嬉しいです!
これからも応援しています!

長文失礼しました。
(語彙力なくてすいません)

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.218 )
日時: 2021/04/28 23:25
名前: 枕木

≫217 天照様
温かいコメント、ありがとうございます♪
本当、こんなこと言っていただけるとは思わず、復活を宣言しておきながら1ヶ月以上放置した私ってなんなのでしょうね…
時々は見にきて書きますので、そのときは見てやってください!お願いします!ぜひ
またコメントもください!

Re: 【文スト】太中R18*中也受け 他 ( No.219 )
日時: 2022/06/19 15:31
名前: 枕木

太宰さん、お誕生日おめでとうございます!