大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: (新)【文豪ストレイドッグス】織太【r18/BL】 ( No.21 )
日時: 2019/06/19 00:11
名前: だらく ◆nI0A1IA1oU

太宰誕生日〜織太【傍に居たい。ただそれだけ】

 この本で出来たパラレルワールド。その世界は唯一織田作が小説を書くと云う夢が実現できた場所。まあ、私が頑張ったのだけれど。ミミックには手が焼いたなあ。......嗚呼、織田作が書く小説読んでみたかったなあ。

 降下する自分の身体。明滅する意識の中でそれがそれだけが心残り。欲を云えば、この世界の織田作が私の友人であったら......と、知らないのは織田作がポートマフィアじゃないと分かった時から覚悟していた。していたが、望んでしまった。つい、久しぶりだなんて、織田作だなんて。

......莫迦だな。私は莫迦だ、そんな美味しい話があるわけがないのに。でも、織田作が生きてるだけで良いとしようか。本当に、この世界は壊れてしまわないように願うよ。

 私は最後に横浜の景色を目に焼き付けて穏やかな気持ちでそっと目を閉じた。

________これで、この世界とはさよならだ。

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「太宰っ」

 え? 聞き慣れた声が、耳に届いた。そんなまさか、そんな筈はないと太宰は、耳を疑(うたが)った。下を見れば、織田作之助、織田作が降下する太宰を受け止めようとしているのか、両手を広げ迎えているのが見えた時には織田作の腕の中で

「お、織田作......?」
「嗚呼、俺だ」
「なん、で? だって、私の事」
「さっきは悪かった」

 そう云う織田作の表情に僅かに翳(かげ)りがあった。声音は先程とは、違うもので大好きだった織田作の友人に掛けるような親しみがある声音で、ぐずりと視界が滲んでいくのが自分でも分かり、見られたくないのとどう向き合えば良いかも分からず俯いてしまう。

「この世界の俺が......迷惑掛けた」

 太宰という特異点が無くなる直前に太宰の思いが強まって成し得たもので、今の織田作は、太宰が知っている織田作本人。否、元々魂の根元は同じなのだから、この世界の織田が太宰と友人だった事を思い出したと云っても過言ではなく、この本の僅かな時が過ぎれば、友人の太宰を忘れ、敵の太宰だと云う認識だけが。

 否、それはない。と織田作は思う。あの傷付いた顔、今にも泣きそうな顔、悲しげな顔、あの時間でどれだけ沢山の表情を見たか、ずっと引き摺ってしまうか。或いは、何かをするときに思い出してしまう印象的で忘れられないだろうと織田作は感じた。

 自分が、そうさせた。知らないときの俺は、あんなにも冷たくなるのか。と思ったほどだ。

「良い、良いんだよ。 私が、つい舞い上がっていただけなのだから」

 織田作が謝ることじゃない。と小さな声で、しかし何度も首を左右に振って俯いたまま云う太宰。そんな太宰を宥めるように背中を優しく擦り、

「......この世界のお前は、ポートマフィアの頭領だったな。 今は違うんだろ?」

 お前の話が聞きたい。と織田作は、自分が悪いと再び云ったとしても頑として譲らないだろう。と互いに譲れないと感じたものは何故か同じが多かったからか、先に折れる形で黙って受けとれば、謝罪の代わりに太宰の話を時間の許す限り聞いてやろうと思い、思った事を口にした。

 暫く俯いていた太宰だったが、その言葉を聞いてかばっと顔を上げて、徐々に蕾が開花するように表情が明るくなり、笑みを浮かべて

「勿論だよ。織田作に聞かせたいこといっぱい数えきれない程あるのだからね」

 今は、この世界の織田作と同じ探偵社でね。とぎゅっと織田作の手を握ってあのバーに向かいながらも浮き足で、語り始める太宰は、以前より否、あの迷子だった時に比べて楽しげで明るかった。

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 酔い潰れた太宰を、この世界の織田作が暮らしている探偵社の寮。部屋に連れて帰ってきた。正直、言って此処しかなかった。ホテルとかも考えたが、どうやら話を聞いていると太宰の部屋でもあるらしく、不思議な感覚になりながら、それならと思い此処で寝かせることにした。

 本人が寝てしまったので、直接云えないが、起こすのも悪いので寝かせたまま。そっと太宰の頭を撫でて徐に口を開け、その言葉を口にしようとしたが、

「織田作、それは云っては駄目だ。 私は、私はね。織田作」 

 ただ、傍に居たい。出来るだけ出来るだけで良いから。と織田作の口を塞ぐようにして指で唇を触り、云いたかった言葉を云おうと聞いて欲しくて口早に声に出すが、織田作は、太宰が全て言い切る前に、感情を押し殺したような目で太宰を見て、軽く自分の口を塞ぐようにしてある指をやんわりと退(ど)かし首を左右に振って

「俺も、太宰と一緒だ。 ......居られないことも、分かるだろ?」

 もう、俺を気にするな。太宰。とまた泣かせてしまう自分が酷く苦しい。やっと思いが通じたのも、全て。だけど、そう。太宰に云いたかった。太宰が此れからも生きていられるように生きることに自分を見出だして欲しい。

「誕生日おめでとう、太宰。 ......ありがとうな」

 心から、そう口にした織田作は、最後に太宰と口づけを短くも深く交わして消えっていた。切なさと一瞬にして消える甘さ。だけど、確かにそこには織田作の温もりがあった。


End