大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Q.E.D ( No.13 )
日時: 2019/07/16 17:53
名前: 憑 ◆R1q13vozjY

【モブ×乱歩(文スト)】


 それはある日の好い天気の事。しゃんしゃんと照り揚げる威張りっ子な太陽を睨み乍に、歩道を歩く青年が一人。ハンチング帽子にケープの様なマントの様な羽織物。その見た目はまるで探偵。そのコスプレっぷりからしてアマチュアかと思わせるが、彼はプロをも凌ぐ推理力を持ち合わせていた、正にプロ探偵なのである。彼の名は江戸川 乱歩。この地、ヨコハマにて有名であろう探偵である。警察の方では仕事かっさらいの探偵として特に知られており、捜査や事件の解明をプロとする警察でさえもこの青年には頭が上がらない程である位だ。

――
 そして、今日。「只今」という乱歩さんの声は途絶えた。此れには自殺未遂を繰り返す私でも吃驚し過ぎて心中どうのこうのでは無い。私にとっては、「あの乱歩さんが」レベルなのだ。無論、私だけでなく探偵社内が大騒ぎになった。現状として飛び交う声には、「乱歩さんが誘拐とか可笑しいし有り得ない」「乱歩さん帰ってきて」等と乱歩さんに対する声しか上がらない程だ。そりゃあ、乱歩さんが居ないとこの探偵社は成り立たないといっても過言では無いのだし、私としても早く戻って来てもらいたい所。

「……だからって、太宰と捜さなければいけないのは可笑しい」
「知らないよ、そんなこと。私は戦闘が苦手なのだから、それを考慮しているのだろう」
「それはそうだが……。はぁ、こんな奴と居たら寿命が縮む。早く見付けて帰るぞ」
「はいはい」

 今、私と共に行動しているのは国木田 独歩という男。眼鏡と手帳と険しい歪み気味の顔が特徴だろうと思う。特に眉間。いつも皺が入ってるよね、本当、怒りっぽいと直ぐ老けるのに。国木田君はどうやら私との行動は好まない様で、頭を抱えるように額を押さえ乍手帳を厳しいしかめ面で眺めていた。

Q.E.D. ( No.14 )
日時: 2019/07/27 10:11
名前: 憑 ◆R1q13vozjY

 特徴的な茶色いハンチング帽に、茶色いマント。身に包んだ服はフォーマルなもので、皆が創造する探偵の様な風貌をしているこの青年、江戸川 乱歩は見覚えのない“男”に誘拐された上に監禁されていた。乱歩は目が覚めた時にはコンクリート固めの暗い部屋に、大柄な男と閉じ込められていた。それだけであれば乱歩も鋭い推理力を持ってしてこの部屋から出ることが出来るに違い無いだろうが、畳み掛けるようにして乱歩は背凭れ椅子に座らされたまま固く拘束されていたのだ。先ず、両手首は背中側で束ねられ離れない様に固定され、両足首は気をつけをする様に足並み揃えられたまま束ねられていた。それだけの拘束では簡単に逃れられると、首もとには鉄製の首輪が填められ壁に繋がっている鎖が付いていた。そして、同室している男はニタニタと奇妙な笑みを保った儘乱歩の近くで佇んでいた。暗くて良く見え無いのだが、男は警察の制服に身を包んで居る様だった。
 乱歩は少なくとも男性で同性愛者(ゲイ)では無く、況してや異常性癖を持っている訳でも無い。それに、警察に何か恨みを買う様な事をした覚えも無いのだ。差詰、僕を甚振ったり拷問したり、若しくは誘拐することで探偵社の崩壊を図った......って所か。全く、タチが悪い。ハンチング帽の陰で目を伏せながら乱歩はジッと考える。乱歩にとってはこの状況が不思議で堪らないのだが、一見すると状況を呑み込んだ様な素振りで或る。

「......乱歩君だったかな」

 男が不意に話し始め、跫音を立てたかと思えばパッと部屋が明るくなった。男は矢張り警察官の容貌で有り、身長も馬鹿に大きくガタイも大変善かった。男は風貌に似合わずニタニタと笑いながら、脅しなのか刃物を片手に乱歩の傍に立っていた。被害者を震え上がらせるには十分な程であるが、乱歩にはそうでは無いらしく乱歩はニタリと負けず劣らずな意地悪い笑みを浮かべる。

「目的は何? 漸く、自分達が役立たずな事に気付いて焦ってるのか? 僕を誘拐したって何にも為らない。それは其の、空っぽな頭でも判るでしょう?」

 乱歩は獲物を前にしたハンター如くペロリと舌嘗めずりをし、開眼されていなかった眼をカッと見開き饒舌になり始めた。乱歩にとっては御得意の皮肉と批判、泡良くば解放してもらおうというチャンスだったのだろう。
 翡翠色の瞳を覗かせ、キュッと目を細め乍前屈みになって男を見上げた。ジャラ、と音をたてる鎖には気にもも留めず、其の儘首を少し傾げてみせた。その表情は宛(さなが)ら獲物をひっ捕まえる猫の眼の様であった。其れでも、この乱歩に置かれている状況というものは乱歩の言葉、態度共に台無しにするものだった。身動き等簡単に取れない拘束の為に相手を制圧する事さえ出来ない。正に相手の掌で踊るダンスなので或る。

「目的ィ? そんなもの、乱歩君を犯す為だよ。でもなぁ乱歩君よぅ。一丁前な事言ってくれるが、今の君じゃ何とも無いんだよねぇ。おじさんは」

 男は相変わらずニタニタとした、気味の悪い笑みを浮かべたままそう云う。刃物の先を椅子の欄干(らんかん)に勢い良く突き刺し、男の手首を支えるように男は欄干に手を置き乱歩に顔をグッと近付ける。男はハンチング帽を乱暴に払い落とせば、乱歩の前髪を掴み半ば無理矢理に顔を上げさせてジロリと乱歩を見詰めた。男のヌラヌラと濡れ、光った唇が妙に生々しく気持ち悪い。

「犯す、だと?」

 対して乱歩は髪を引っ張られる痛みに堪え乍、眉を顰(ひそ)めれば怪訝そうに一つの単語を繰り返した。男は乱歩のその反応を見て楽しげにクツクツと喉を鳴らせば、より一層眼を細めて嫌味たらしく云った。

「そう。犯す。頭の良い乱歩君――否、君は成人してるんだから......判るよね?」